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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
二章:足跡の読み取り方と砂塵舞う採掘遠征
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都市を脅かすドジっ子の航跡雲



 パリス少年がギルドで一日潰す勢いだったので、セタンタ君達はそれを引きずりながら昼食を食べ、目的地に向かう事にしました。


 やってきたのはバッカスの首都とはまた別の都市です。


 バッカス王国には数百キロ離れた都市だろうとも一瞬で移動出来る都市間転移ゲートが整備されており、人も物も一瞬で移動する事が出来るようになってます。


 大変便利な反面、ゲートが無ければ立ち行かなくなる都市が沢山あります。


 単にインフラとしてほぼ必須というだけではなく、魔物に対する防衛戦といった戦闘面でも都市間転移ゲートは非常に役立つのです。


 例えば籠城戦になってもゲート経由して無尽蔵に物資運び込み、増援もガンガン呼んでこれます。ただでさえ数の多い魔物に対するにはゲート無しでは立ち行かない時もあるのです。



「おい! ここの郊外はどんな儲かる魔物がいるんだ?」


「まず、人の話を聞く事を覚えてもらうべきかも……」


「ホントそれな……」


「おいなんだこの野郎、オレ様の事をバカにしてんのか? 舐めんな! 今日は魔物の痕跡とかの勉強に来たんだろ? オレ様を育成しろ!」


「覚えてるならいいんだよ。あと、郊外に出たら静かにしてくれよ。下手に騒ぐと魔物が寄ってきて危ないからな。従わないと尻にマーリンだからな」


「尻にボクだぞ」


「う、うん……。で、どんな儲かる魔物がいるんだ?」


「今日は魔物討伐目的じゃない。邪魔してくる魔物がいたら殺すけど、戦い方よりも痕跡の見分け方を覚えてもらう」


「オレ様は戦い方を覚えたいぞ。大英雄に、オレはなる!」


 話を聞いてるか聞いてないのかわかりにくい子ですね。


 セタンタ君は遠い目をして、マーリンちゃんはちょっと思案顔です。


 やがてマーリンちゃんは「あのね」とパリス少年に話しかけ始めました。



「ちょっと聞いて、パリス」


「なんだよ」


「フェルグスさんを含むバッカスでも上位の強さを持つ100人の冒険者はその98%が魔物の痕跡に関する知識にも詳しいんだ。戦闘にも転用出来るものだからね。冒険者が持つ技能・知識に順位付けしていくと、痕跡に関する知識は上から数えて十番以内に収まるぐらい重要なんだ」


「マジかよ」


「バッカス冒険者の先駆けとなった原初の冒険者、ヤリツィン・タロー氏が『痕跡を軽んじるものは1年以内に死ぬ』って言葉を残しているぐらい、覚えておかないといけない知識なんだよ……わかった……?」


「わかった」


 パリス少年は痕跡知識習得に前向きになりました。


 一方、マーリンちゃんは「それっぽい数字・統計と先達の言葉っぽいものを並べると強いなぁ」と覚えてしまいました。ほくそ笑んでもいます。


 やや誇張した表現でしたが、おおむね正しい事なのでパリス少年がやる気になって覚えてくれさえすれば、きっと多分おそらく彼の役に立つ知識でしょう。



「おい、お前ら早く郊外に行くぞ!」


「パリスの扱いがちょっとわかった気がするよ」


「俺も」


 やる気になったパリス少年が先に先に駆けていきましたが、セタンタ君は空を見上げて「あ、ちょっと待ってくれ」とそれを呼び止めました。


「パリス、ちょっと空を見てみろ」


「空?」


 パリス少年が空を見ると、そこに青空と雲がありました。


「西から東にずっと続いてる長い棒みたいな雲があるの、わかるか」


「おう」


 パリス少年達が見ている雲は一筋の飛行機雲のようなものでした。ただ、それを残したのは飛行機などではなく、魔物です。


 パリス少年もそれを理解し、長い雲を指差しながら言いました。


「アレ、確かでっかい竜種が通った跡だろ?」


「そうそう。あれも魔物がいた痕跡だ」


「ああいう痕跡を覚えていくと、お金稼ぎにも便利だよ。お金になる魔物が近くにいる、いないがわかるからね」


「なるほどなー」


 今でこそ三人がいる都市は平和ですが、雲の軌跡を残した魔物が通り過ぎていった際、都市は厳戒態勢に入っていたほどです。


 つい先程の事なので、まだ武装した冒険者達の姿も見受けられます。


 通り過ぎていったのはジャンボジェット機ほどの巨体のうえに飛行能力を持ち合わせた魔物で、巡航速度がマッハ0.9ほど。


 そんなものがたま~に都市に気づいてを襲ってくるので、ただ通り掛かるだけだったとしても厳戒態勢にならざるを得ません。事前に討伐しておこうにも高高度を飛んでいるため、容易には手出しも出来ません。


 巡航時でマッハ0.9の巨体が数千メートルの高さから一気に降りてくる事で更に加速するため、それが地表近くを通過するだけで人や建物が吹っ飛ぶほどの迷惑さを持ち合わせている魔物なのです。


 たま~に勢い余って地表に突き刺さって自殺するドジっ子属性を持ち合わせている種類の魔物ですが、それはそれで隕石が落ちてきたような状態になるので大変な事になるのは変わりありません。


 都市壊滅級のドジっ子アタックです。


 ただ、そのドジっ子属性を活かした討伐方法もあります。


 狼煙、匂い、音、花火などを使って高高度を飛んでる魔物に地表にいる人間に気づいてもらい、ガオー! と降下してきてもらって自殺してもらうのです。


 しくじると単に呼び寄せるだけになり、退避が間に合わないと魔物に無理心中させられてしまうため結構危険な討伐方法ではありますが上手くやれば冒険者一人でも討伐は可能です。


 自殺させた後は飛散してたり地面に潜り込んでいる魔物の死体から売れる部位を探すだけで結構儲かります。五体満足の方が高く売れますが、それは歴戦の冒険者でも難しい討伐になります。


 当然ですが、都市から離れたところでやりましょう。危ないので。



「なるほど、儲かるんだな……」


「いや、危ないからお前は手を出すなよ」


「儲かるんだなぁ……」



 パリス少年が、ちょっと面倒な知識を蓄えてしまいました。


 一歩間違うと大惨事ですから気安く手を出さないでくださいね。




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