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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
八章:剣戟の果てに
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バッカスの食料庫



 ヴィンヤーズ。


 バッカス領に当たる都市の名で、西方諸国の直ぐ西側にある島が丸ごと一つ都市となっています。その広さはバッカス最大の都に次ぐほどの大きさです。


 都市領域そのものは広いものの、人口は首都より格段に少ない都市です。島の殆どを農地として使っているため、住民の大半がその農業関係者となっています。


 島の多くの場所が農地として耕作され、見渡す限りの畑や農園、農場が広がり、魔術も交えて管理している事からヴィンヤーズは「バッカスの食料庫」と言われるほどの一大食料生産拠点となっています。


 そんな大農業都市ヴィンヤーズの中心部。


 中心部そこにある都市間転移ゲートの傍で、揉めている人の姿がありました。


「えーーーー! ちょっ……何でだよ! 俺らも通してくれていいじゃん」


「差別よ、差別~」


「カンピドリオ士族の方を通す許可は下りていません。お引取りください」


 白狼会の総長であるレムスさんとアタランテさんでした。


 二人は都市警備の方々がむっつりとした表情で槍を交差させ、行く手を阻んでくる事に対して不満げにブーイングを飛ばしていました。


 ヴィンヤーズはバッカスの重要な食料生産拠点という事もあり、「作物に手を出された困る」という事で中心部以外は一般の出入りが禁じられています。


 そのため基本的には都市内を自由に闊歩する事は出来ず、二人のように警備の方々に止められるという事も当然にあるのですが――。


「何でレムスさん達は足止めされてるんだろ……?」


「……まあ、ここを管理しているナス士族とカンピドリオ士族は犬猿の仲だからなぁ……。カンピドリオ士族出身の二人は止められているんだろう」


 レムスさん達と来ていたパリス君とフェルグスさんは警備の方々に止められずにいました。事前に許可を申請していたという事情もありますが、それはレムスさん達も同じである筈でしたが……。


 レムスさんとアタランテさんがフェルグスさんの言う事情で足止めされ、ブーイングを飛ばしているのですが警備の方々はツンとして聞き入れませんでした。


 上層部の意向です、の一点張りでレムスさん達を帰そうとしていました。


 ただ、カンピドリオ士族出身でも通されている子の姿もありました



「あにゃああああ……!?」


 アンニアちゃんは通されていました。


 お兄ちゃんであるレムスさんが猛獣のように止められているため、オロオロとしつつ――パリス君の足元にいるライラちゃんを気にしてウロウロし、最終的にはライラちゃんを抱っこしてレムスさんを見つめていました。


「れむにーたん、なんかワルイことしたん……?」


「してねーよ! 助けてくれアンニア~」


「ほんと……? あんにゃ、にーたんがワルイコでも受け入れる準備がある」


「マジか。じゃあ、アレだわ。ガキの頃にここで……ヴィンヤーズでナス士族への嫌がらせとして虫を放そうとした事ぐらいあるぜ。捕まったけど」


「ムシ? ムシさんならべちゅに……何のムシさん?」


「モンシロチョウを100匹ほど」


大罪ぎるてぃ


 食と農家さんに優しいアンニアちゃんは農家にとっての「白い悪魔」とも言われるモンシロチョウを野放しにしたお兄さんに向け、憤怒の表情を見せました。


 そして「プンプンププンっ!」と鳴きながらドスドスとお兄さんの足を踏みつけ、「ぎゃっ!」と呻かせてやっつけました。


「にーたんワルイコ! めめめっ!」


「蝶々逃して何が悪いんだよぉ」


「にーたんは農家の人に殺されてもおかしないことした。あんにゃオコタ!」


「マジか……! アンニアに怒られたら、俺はどうすればいいんだ……!」


「おしりぺんぺんの刑だよ? さぁ、おしりだすのだよ?」


「はい!」


「アタランねえちゃんもだよ?」


「私もなの……?」


 カンピドリオ士族の三人が勝手に揉め始める中、パリス君はむず痒そうな顔をしました。チラチラと東側を見つめ、先に行きたがりました。


 フェルグスさんはそんなパリス君を見つつ、レムスさん達はひとまずどうしようもならなさそうなので置いていく事にしました。


 アンニアちゃんが「ムフー!」と鳴き、後は任されたとばかりに仁王立ちする中、フェルグスさんとパリス君、ライラちゃんが東に向けて走り出しました。



「さーて、休みつつ港まで走るか」


「うん! い、急がねえと……!」


「まだ大丈夫さ。十分に時間はある」


 フェルグスさんがそう言ったものの、パリス君は焦っているらしく、早く前へ前へと進みたがりました。ライラちゃんはそれに付き従いました。


 パリス君にはどうしても、東へと急ぐ理由がありました。


 教導隊が立ち寄るヴィンヤーズの港へ行かなければならない理由がありました。



「が、ガラハッドに……早く、知らせないと!」




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