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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
八章:剣戟の果てに
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御前試合



「えー、今日は皆さんに一つお知らせがあります」


 よく晴れ、視界良好な日の事。


 視界が良好過ぎて近寄ってきた魔物と氷船アワクムの船員さん達が戦う光景を見学した教導隊参加者はその後、教導隊長に呼び出され、伝達事項を伝えられました。


「アワクムによる航海は予定通り進行しており、じきに西方諸国領の西側の島にあるバッカス領・ヴィンヤーズにも寄港します。寄港前に海戦訓練を詰め込んでいるので到着は一週間後です。ヴィンヤーズには四日間滞在します」


 そこまでは予定通り。


 しかし、そこから予定にない行事が入れられる事になったのです。


「ヴィンヤーズ滞在3日目には御前試合をする事になりました。急な追加行事で申し訳ないのですが、皆さん今のうちに準備と心構えをお願い致します」


「御前試合って、遠征の最後にやるものでは……?」


 教導隊遠征は単に遠征をしながら訓練をするだけではなく、その成果があったか否かについても求められる事になります。


 その証明の手段として用意されているのが御前試合。


 教導隊参加者の一人が言った通り、本来は遠征の最後に行うものです。


 政府主導の行事であるため、バッカス政府の要人や国王、さらには士族の重鎮が集うため士族出身の参加者は「醜態を晒さないためにもしっかり成果を出す」と意気込み、士族に属さない市井の子達はアピールのチャンスにもなっています。


 いわば教導遠征の総決算。


 だからこそ最後に行う事になっているのですが……。


「遠征最終日にも御前試合があります。今年は特別に遠征中途の御前試合がねじ込ま……コホン、色んな事情で中途の御前試合をやる事になったのですよ」


「「「いまねじ込まれたって言った」」」


「言ってません」


「ねじ込んでも別にいいんですけど、どういう内容ルールでやるんですか? 例年の御前試合なら疑似魔物討伐か、本物の魔物を捕まえてきて討伐……というのが定番だったはずですが」


「最終日のものに関してはまだ秘密なのですが、ヴィンヤーズで行う中途御前試合に関しては対人戦となります。相手は教官です」


 エルスさんの言葉に対する反応は多種多様。


 マーリンちゃんのような「戦闘とかめんどくさい」派は嫌そうな顔をし、血気盛んなティベリウス君やメドさんは「面白え」と獰猛な笑みを浮かべていました。


 セタンタ君は「教官相手か……」と呟きつつ、そうなるとガラハッド君が「あの人」とやり合う可能性もあるんだな……と思いました。


「誰と戦うかは皆さんに指名権があります」


「となると、皆で談合して同じ教官を指名して、疲弊させて勝利を狙っても構わないって事ですよね……?」


「ええ、もちろん。それが可能であればやってみてもいいですね」


「ちょっとアンタら、エレイン教官に挑んで疲弊させてきて。私が美味しいところ貰うから、とにかくねばって……10時間ぐらい」


「無茶言うな。ウチの士族長来るだろうから、無様な試合は出来ねえよ……」


「エレイン教官とやり合うのはキツそうだな……」


「全身傷だらけにされそう。やるなら他だな」


 半数が浮足立ち、半数が御前試合を楽しみにする中、エルスさんは御前試合に関する資料を一人ひとりに配り始めました。


「詳細はこちらに書いているので熟読し、質問事項があれば私に聞いてください。指名出来る教官と、対戦の内容に関しても記してますので」


「対戦の内容?」


「ええ、教官ごとに変えています。正直に言ってしまうと力の差が大きい方もいるので、教官側に制限をかけて挑む皆さんにも勝ち目があるようにしています」


 オススメは私以外ですね、とエルスさんは笑顔で告げました。


 指名されず観戦だけで楽が出来たらいいなぁ、という一心で……。




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