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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
二章:足跡の読み取り方と砂塵舞う採掘遠征
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毒餌が廃れたワケ



 魔物うろつく都市郊外の森の中。


 そこを警戒しながらゆっくり進んでいく冒険者達の姿がありました。


 その中には元孤児の冒険者であるセタンタ君とマーリンちゃんの姿もありました。どうやら他の冒険者さん達と連携し、索敵しているようです。


 彼らが森を一足に駆け抜けず、ゆっくり進んでいるのにはワケがありました。


 護衛対象がゆっくり進みながら作業をしているためです。


「おおきくなあれ! おおきくなあれ!」


「…………」


「おおきくなあれ! おおきくなあれ!」


「……なあ、ギルドの人」


「おおきく――なんだい?」


 セタンタ君が耐えかね、護衛対象である中年男性に声をかけました。


 他の冒険者さん達も「いいぞ」「言ったれ」という雰囲気を醸し出しています。


「その、おおきくなあれって掛け声無しで頼めねえかな」


「何で?」


「何でってそりゃ、余計な掛け声を聞いた魔物が寄ってきやすくなるからだよ」


 そう言いつつ、セタンタ君は愛用しているミスリルの槍を突き出しました。すると、槍の穂先にえぐられた森狼が「ギャヒン」と悲鳴をあげながら絶命しました。


「ほら」


「ああ、なるほど、そりゃそうだよねぇ」


「だからさ、もうちょっと静かに仕事してくれりゃ俺達も楽できるんだよ。アンタもいたずらに危険招いて死にたくないだろ?」


「うん」


「わかってくれたか」


「しかし残念ながら、ボクが『おおきくなあれ』って言ってるのはボクなりの魔術の詠唱だから、これ省くと仕事出来ないんだ」


「マジかよ……」


「ボクも出来るだけ早く終わらせれるように種まきがんばるから、キミ達も護衛をがんばってくれ。では……おおきくなあれ! おおきくなあれ!」


 また魔物がやってき始めました。


 セタンタ君達はゲッソリとした顔でそれを捌きつつ、「今度、この手の依頼を受ける時はこのオッサンがいるかどうかよく確認しよう」と堅く誓いました。



 彼らがいまこなしている依頼は、「冒険者ギルド職員の護衛」です。


 そして護衛対象である「おおきくなあれ!」とか言ってる頭わいてる系のギルド職員さんの仕事が「種まき」です。


 まかれている種は魔術で品種改良された特殊な種で、「おおきくなあれ!」と魔術を併用しながらまくことですくすくと成長していきます。


 周りの植物から栄養奪って枯らしつつ、自分だけ生き残っていくのです。


 地味に自然破壊していっているのですが、これも魔物対策の一環なのです。


 都市郊外は手付かずの自然が珍しくありません。


 鬱蒼うっそうと生い茂る草は冒険者達の視界を奪い、草むらに潜む魔物達の察知を遅らせてきます。索敵を怠ると草むらから飛びついてきた魔物に噛みつかれて死ぬという事も珍しい事例ではありません。


 だからこそ品種改良した植物の種をまき、草むらを駆逐していっているのです。


 ギルドの職員さんがまいている種は非常に生命力の強いハーブの一種で、種が植えられた周辺の植物からじわじわと栄養を奪って枯らしていき、最終的にはハーブだらけの道が出来る事になります。


 背の低い植物が生えてる分には視界も開けます。


 そして魔物に対する奇襲も会いづらくなるのです。


 焼け野原にするのが一番手っ取り早いのですが、そこまでやると人間達に魔物を差し向けている神様が「人間都合で自然破壊しまくるな!」とキレるので、控えめに道程度の大きさだけ確保していっているのです。


「このハーブの道が完成したら、どこに通じるんだっけ」


「確か海だよ。貝がいっぱい取れるとこだったと思う」


 セタンタ君の疑問に広域の索敵を担当していたマーリンちゃんが答えつつ、空を見上げつつ、「職員さん、そろそろお昼だけどー」と呼びかけました。


「じゃあ一度戻って休憩にしよう」


 森の中にピンクのリボンで目印だけつけ、全員で来た道を戻りました。


 比較的安全なところで昼食を取るためです。


 見張りを立て、雑談もしつつ昼食を取る冒険者達の中でセタンタ君とマーリンちゃんは頭わいてる系の職員さんの話を聞き始めました。




「ギルドのオッサン、この手の仕事長いの?」


「ギルドの仕事はかれこれ500年近く前から関わってるかなぁ」


「500年ってバッカス王国が出来た頃からじゃん。生き字引じびき!」


 よく見れば、職員さんの耳はとんがっています。


 長寿族のエルフのようです。


 バッカス王国のエルフは大体1000年ほど生きます。


「はは、といっても途中で100年ほどギルドから離れて好き勝手に遊んでいたからね。いまも嘱託でノンビリ働いてる程度さ」


「へー」


「昔はよく毒餌を作って配置してたよ。いまの若い子は毒餌って知ってるかな?」


「言葉の感じで何となくはわかるけど」


「ギルドの職員の人がわざわざ毒を撒いてたの?」


「そうだよ。魔物対策にかなり有効だったからねぇ」



 実際、毒餌は有効な魔物対策でした。


 毒混じりの餌を置き、それを食わせて駆除するという方法は一般家庭でも行われています。ゴキブリ用のホウ酸団子も毒餌ですね。


 害獣駆除にも使われ、例えば日本の北海道では家畜を襲う狼に対し、ストリキニーネを用いた毒餌が使われ、これがエゾオオカミ絶滅の一因となりました。


 バッカス王国でも神様から差し向けられる尖兵たる魔物に対し、毒餌が討伐手段として使われていたという歴史が存在しています。


 毒餌を撒いておけば正面から斬り合う必要が無く、毒への耐性が無ければコロリと死んでくれていました。安全な手段であるため、とても重宝されました。


 されて、いました。


 現在は廃れています。


 数年は非常に高い効果をあげ、ギルドの職員や冒険者達がポイポイと毒餌をまき、魔物どころか普通の獣達までブッ殺していき、冒険者イコール毒餌撒きというイメージがはびこる時代があったほどです。


 あまりにも高すぎる効果を上げ、あまりにも浪漫の無い討伐方法なので怒った神様が「お前らちょっと空気読めーーー!」とキレ、自分が創り出している魔物達に毒餌対策を施していきました。


 それにより、現在の魔物は食事をしない種が多くなりました。


 一見するとイノシシや熊の魔物に見えても、食事など一切取らずに活動する種ばかりになってしまいました。光合成・太陽光発電・気合・魔力・人間だけ食うなどなどの方法で活動出来るよう、強化されていったのです。


 かくして、毒餌による魔物討伐は廃れていきました。


 人々はブーブーと神様に文句を言いましたが、神様は「浪漫以前にもうちょっと自然環境に配慮しろよバカ!」とキレるので、文句は受け付けられませんでした。


 最終的に毒餌に怯えず生活し、魔物に襲われにくくなった自然動物が勝ち組になった話……なのかもしれません。


 あ、毒そのものは魔物によってはまだまだ有効です。


 楽に倒したい時は毒矢とか使いましょう。


 デメリットを挙げるとすれば、魔物相手でもバッチリ効くような毒を使うと肉や内蔵がダメになりやすいという点でしょうか。


 あと、全ての魔物に毒が効くとは限りません。無機物系とか。




 昼食を取り、英気を養ったセタンタ君達はギルドの職員さんの詠唱に心削られつつ、何とかこの日の仕事を終え、都市へ帰還しました。


 セタンタ君は「おなかペコペコだよー」と言いながら周囲を漂っているマーリンちゃんに「なんかガッツリ食おうぜ」と色気の無い誘いをしつつ、加えて「良いことを教えてやろう」と思い立ち、マーリンちゃんに話しかけました。


「そういや、首都8丁目の大衆浴場が新装開店したんだよ。かなりいいとこでさー、メシ食った後にでも行こうぜ」


「ほほぉー。いいよ、どっちにしろ汗流したいしね」


「決まりだな」


 二人は御飯を食べた後、お風呂に行く事にしました。




少年冒険者の生活と世界観を同じくする異世界職業図鑑の方は性描写関係でミッドナイトノベルズに移転となりました。

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