メドラウト班、結成
「何でこんなヤツと組まないといけませんのーーーー!?」
氷船の甲板上。そこに少女の叫び声が響きました。
大半の教導隊参加者は一瞬、視線を送ったものの、直ぐに逸していきました。
セタンタ君は「無茶苦茶だな」と眉を潜め、マーリンちゃんはやや苦い顔をしつつ「師匠は意地が悪いから」と言い、ガラハッド君は至近で叫ばれた事で鬱陶しそうに片耳を塞いでいました。
そんな中、羊系獣人ちゃんは教導隊長に食ってかかっていきました。
「何で、わたくしがッ! この男と組まないといけませんの!? 栄えあるタルタロス士族の! サラミース武会の明日を担うっ! わたくしがッ!?」
「そういう班分けになりましたので、よろしくお願いしますね」
「……な、何かの間違いでは?」
「いえ。メドラウトさん、ガラハッド君、アイアースさんの三人で班を組んでいきます。班長はメドラウトさんでお願いしますね」
教導隊長であるエルスさんは美女の如き美貌でニコリと微笑み、顔に似合わないしわがれた老爺の声で告げ、その場を立ち去っていきました。
アイアースちゃんは「ちょっと……!」と焦り顔でその背に手を伸ばし、ガラハッド君も物申したそうにしていましたがエルスさんは振り返りませんでした。
二人の傍にいたメドさんは兜の中で溜息を反響させつつ、仕方なさそうに頭を振り、二人に向き合って話しかけていきました。
「貧乏くじ引かされた気がしてならないが……班長のメドラウトだ。メドでいい」
「知ってますわ、メドの名前ぐらい」
「半分はお前に言ったんじゃねえよ……」
「ねえねえメド! わたくし、メド班長に提案があるんですけど?」
「どうせコイツを班から追い出せって提案だろ」
メドさんがそう言うと、アイアースちゃんはニッコリ笑って微笑みました。
ガラハッド君も内心、そうしてくれた方が助かるな――と思いつつ、どうせ教導隊長はそれを認めてくれないだろうなぁ、とボンヤリ考えていました。
「さすがですメド! わたくしの考えがよくわかってますわ! 私の親友にして、私の仲間だけあります。何なら班長を変わってあげましょう」
「いや、いつからお前の親友になったんだよ」
「だって私の仲間でしょう!? 誉れ高きアイアースパーティーの一員ですもの」
「お前の冒険手伝ってたのは、キウィへの義理立て――ああ、もう、いい、めんどくせ、さっさと話進めるぞ。クソッ! 何で俺が班長にされる!!」
単純な消去法でした。
アイアースちゃんに任せるとろくでもない事になり、ガラハッド君に任せるとアイアースちゃんがへそを曲げるからこその配置でした。
そもそもガラハッド君とアイアースちゃんが「混ぜるな危険」の組み合わせなので、そもそも二人を同一班にしなければいい問題ではありますがエルスさんを筆頭に教官さん達が決めた班分けでメドさんが気苦労を負う事になったのです。
他にもメドさんならアイアースちゃんの手綱を上手く握ってくれて、この機会に仲直りしてくれるんじゃないかな~~~~という淡い期待がありました。
そういう理由があったとしても、本人はより一層、猛るだけでしょうが。
「とにかく、この班分けになった以上は仕方ねえ……やるぞ」
「班ごとの課題をか?」
「ちょっと貧乏冒険者2号! メドに気安く話しかけないでくださいましっ!」
「殴りたい」
「殴るなら角にしとけ、地味に効く」
「そ、そうなのか……」
ガラハッド君は班長の発言に引きつつ、今後の事を心配しました。
自分はこの班で、ちゃんとやっていけるのだろうか――と。




