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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
一章:採油遠征と酒保商人
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腐肉漁りの腐肉



「では、私はケイ殿の援護に行ってくる。夕刻までには合流出来ると思うが、皆、私がいない寂しさでむせび泣かないように」


『いや、それは無い』


「物理的に泣かせてやろうか……」


『えぇ~ん、フェルグスパパぁ~、さびしいよぉ~』


「うむ、素直でよろしい。では皆、無理はせんようにな」


 早朝。フェルグスさんが奥さん二人を抱きしめ指揮を任せ、冒険者達とは互いの得物で軽く打ち鳴らし、一人でクアルンゲの補給部隊から離れていきました。


 どうも円卓会の別働隊の援軍として向かったようです。フェルグスさんは好色で奥さん沢山ですが、その奥さんや子供達を養うために働いている中で冒険者として名が知られていった人です。


 バッカス冒険者の中で十指に入る実力もあり、そのネームバリューもあってクアルンゲ商会は発展してきました。


 それほど実力も確かなので、こんな風に応援で呼ばれる事もあるのです。


 フェルグスさんという戦力が欠けた補給部隊でしたが、索敵魔術の扱いに優れたマーリンちゃんの働きもあり、被害も出さず粛々と兵站管理をしています。


「ただ、ちょっと気になる事があるんだよね~」


「気になる事?」


「うん。腐肉漁りの皆さんが消えました」


 マーリンちゃんの索敵圏内から姿を消したそうです。


 セタンタ君は「まさか、フェルグスのオッサンを追い始めたのか」と眉をひそめましたが、マーリンちゃんは「多分違う」と言いました。


「ここ数日、観察してたけどあの人達はそんな腕良くない。魔術だけじゃなくて骨や筋肉の動かし方も見てたけど、弱いと装ってる様子も無かったよん。オジ様いたときにはまだいたから、追ったとしても追いつけないよ」


「だけど、戻ってきたところ待ち伏せして……殺すって可能性はあるだろ」


「フェルグスのオジ様なら返り討ちにするでしょ」


「まあ、なぁ」


「女の子なら戦いながら口説くでしょ」


「まあ、なぁ」


 それでも「数の優位があるから」と腐肉漁りの皆さんが無茶をするのではないか、という不安がセタンタ君の頭に過りました。


 フェルグスさんは強いですが、完全無敵というわけではありません。例えば強い魔物の横槍がいくつも重なればさすがに死ぬでしょう。


 しかし、セタンタ君の懸念は杞憂に終わりました。


 腐肉漁りの冒険者達は、フェルグスさんを追っていたわけでは無かったのです。



 夕刻。セタンタ君達は円卓会の本隊へと追いつきました。


 豪雨の中なので夕暮れ時らしさはありません。それでも少しずつ薄暗くなっており、完全に夜になってしまうと稲妻の煌めき程度しか見えなくなります。


 円卓会は既に水質調査の仕事を終えていました。


 他所ではまだやっているところもありますが、少なくとも円卓会は担当地域での調査は終えているのでもう帰ってもいいぐらいです。


 ただ、彼らは帰還を一日伸ばし、ククルカン群峰の中心部へと足を踏み入れていました。調査依頼のついでに受けた依頼を果たすためです。


 それは薬品調合に使う材料の調達依頼でした。


 ククルカン群峰は年中豪雨に見舞われているため、植物はろくに育ちません。土は流され、岩ばかりの山肌が覗き、魔物が闊歩している不毛地帯です。


 しかし、一部地域ではちゃんと植物が生えています。


 それがククルカン群峰の中心部、群峰の山々の中で最も高い山の頂上です。森林限界も雲も超えた地にはそこにしか生えない貴重の薬草があり、高値で売れます。


 今回はそれを一括で買い取る依頼があり、円卓会はそれを請け負った形です。


 ちなみに依頼者はバッカス王国一の薬師さん。家の近所に湧く鳩を美味しく食べて処分する方法を模索しており、取ってきてもらった貴重な薬草をつめて丸焼きにしようとしているようです。無駄遣い……。



 セタンタ君達は薬草取りをしてるはずの本隊に追いつきました。


 追いつきましたが、どうも進軍を止めている様子です。


「魔物に足止めされてんのかな」


「あー……ボク、わかっちゃった」


 マーリンちゃん曰く、本隊の先頭がいる辺りで戦闘が起こっているそうです。


 それも戦っているのは、行方不明だった腐肉漁りの冒険者達。無理なルートを行軍し、いつの間にやらセタンタ君達を追い抜いていたようです。


 フェルグスさんの奥さんの一人が眉をひそめ、「円卓会とやりあっているの?」と聞くとマーリンちゃんは否定しました。


「戦ってるのは魔物相手。ただ、半分ぐらいは円卓会ともやりあってるかな?」


 ひとまずその奥さんがマーリンちゃんとセタンタ君を伴い、円卓会本隊の先頭へと急ぎ足を運ぶ事にしました。


 知らぬ間に商会に非が及んでてもいけませんからね。念のため、円卓会の総長さんに面会して必要なら弁明です。面倒ですが!


 マーリンちゃんが魔術で探してくれた事もあり、総長のアルトリウスさんは直ぐに見つかりました。最前線で岩に腰掛け、ニンマリ笑いながら高みの見物をしているようなご様子。


 視線の先には腐肉漁りの冒険者達。


 そして、彼らを襲っている魔物の姿がありました。


「た、助けてくれ! 助けてくれ!」


「いやだー! 死にたくなーーーい! やだぁー!」


「頼む! 頼むぅ~~~! こ、ここから出してくれぇ!」


 いくつかの人間の死体と共に、命乞いと断末魔が聞こえてきます。


 彼らは退路を断たれていました。円卓会の戦士達が整列して大盾を構え、防護の魔術で結界を作り、魔物と腐肉漁りの冒険者達を囲んでいたのです。


 中の光景はさながら、闘技場のようでした。


 剣奴たる腐肉漁り達は後退も許されず、円卓会の面々に対して助けを乞うていましたが、円卓会の長はそれを受け入れませんでした。


「アルトリウス様。これは、いったい……?」


「クアルンゲ商会か、ご苦労。フェルグス殿はどうした?」


「フェルグスはケイ様の援護に向かわれました」


「ああ。そうか、そうであったな。重ねて大義である」


 フェルグスさんの奥さんはそれとなく事情の説明を求めました。


 それに対してアルトリウスさんは雨に濡れながらも上機嫌で「誅伐をしているのだ」と言いました。後ろめたい様子はまったくありません。


 聞くところによると、円卓会が魔物を排除しつつ薬草を取りに山頂に向かっていたところ、それを出し抜く目的の腐肉漁りの冒険者達が円卓会を追い抜いていったそうです。


 皆、薬草の価値を知っていて、今回はそれを横から掻っ攫う目的で寄生していたのです。円卓会が既に取ったものを盗むのはギルドに罰せられますが、まだ生えているものを取るのは一応、問題ありません。


 円卓会に道を切り開かせて自分達は楽して取るので、悪質ですけどね。


 おそらく仮に成功していたとしても円卓会が魔物を排除して進んできた功績が認められ、大半が取り上げられる事になるでしょう。それでもいくらかは手元に残す事ができ、それだけでもしばらくは遊んで暮らせます。


 しかし、彼らは失敗しました。


 先走り過ぎてまだ山頂付近にいた魔物に襲われたのです。


 後退しようにしても出し抜かれかけて激怒している円卓会の面々が「強力な魔物がいるため、自分達の身を守る必要がある」という名目で防護結界を使って退路を断っているので後退もままなりません。


 腐肉漁りも腐肉漁りですが、円卓会もかなりグレーな事をやっています。


 おいしいとこだけかっさらおうとしている相手だけに、真っ当に冒険者をやっている面々は円卓会を擁護するかもしれませんが、手放しに褒められる行動ではありません。


 凶刃を振るったのは魔物とはいえ、死人も出ていっています。


「あの猫背のエルフは……」


「それは、そこにいるね……」


 マーリンちゃんが指し示した方向には、防護結界の外側で殺気立った円卓会の戦士達に剣を向けられ、ヘラヘラ笑いながら「いやいや、わたくしめは旦那方の敵じゃありませんよ?」と弁明する猫背のエルフの姿がありました。


「いやね? わたくしめは止めたんですよ! 横から掻っ攫うなんていけないことだ! ってね。でもアイツら金に汚い奴らばかりでして、ご覧の有様です! まー、因果応報といった感じですかねぇ?」


 仲間をけしかけるだけけしかけて、自分は念のため最後尾を慎重に進み、おかげで修羅場となっている結界の中に閉じ込められる事は無かったようです。


 円卓会の面々は彼の弁明など信じていません。


 まったく、これっぽっちも、信じていません。


 しかし、ホントに斬りつけたらグレーを通り越してしまいますし、今になって防護結界の内側に放り込むというのは過失致死傷罪です。


 野放しにするしかありません。もはや頼れる味方がいなくなりつつある彼が、一人で群峰から脱出出来るかどうかという問題はあるんですけどね。



「このまま見殺しにするのかよ」


 セタンタ君は複雑な面持ちで、アルトリウスさんに問いました。


 アルトリウスさんは鼻を鳴らし、その言葉を無視しかけましたが「こちらの作戦行動中に割り込んできた向こうが悪い」と言い切りました。


「相手はよく肥えたエルンブ・ヴァルフィッシュだ。下手に手を出せば無用な血が流れる事になる。不確定要素を削り、万全の状態で挑まねば」


 円卓会はそこそこ力のある冒険者クランです。


 バッカスでも名の知れた実力者も多く所属しています。


 例えば「万夫不倒のランスロット」「日輪のガウェイン」「竜殺のトリスタン」「貫谷のパーシヴァル」「隻腕のベディヴィエール」「なんか手からあったかい風が出るケイ」「寝取られのアルトリウス」などなど、そうそうたるメンバーが揃っています。


 それだけの面子が揃っていても、今回の相手は確かに厄介な相手でした。


 円卓会なら勝てますが、対するは弱い魔物ではないのです。


 相手の魔物は鞭のように唸る骨の蛇腹剣を振るって腐肉漁り達を切り刻みつつ、時折、円卓会の防護結界にも攻撃をしかけ、揺らし、防護にヒビを入れています。


 すぐさま修復されるため結界が抜かれる事はありませんが、円卓会の多重防護は並みの魔物ではヒビすら入れる事も叶いません。凄まじい膂力りょりょくです。


 魔物の名をエルンブ・ヴァルフィッシュ。


 全身が骨で出来た歩く死体、アンデッドの魔物です。


 人間も魔物も見境なくブッ殺しながら放浪する魔物で、殺した相手の死体から骨をえぐり出し、自分の身体に取り込んでいくという一種のキメラでもあります。


 いまセタンタ君達の近くで暴れているのは二足歩行のものですが、歩行方法や戦闘手段は大元の死体のものが反映されやすいようです。色んな生き物の骨が集まってますが、今回のものであれば大元は人間の死体みたいですね。


 アルトリウスさんが「よく肥えた」と言ったのは脂肪分豊富というわけではなく、大量の骨を取り込んだ歴戦のエルンブ・ヴァルフィッシュという意味です。


 体躯は3メートルを超え、隙間なく重なり合った骨は骨の鎧武者といった様相を見せています。片手で10メートルほどの間合いを切り刻む骨の蛇腹剣を振るい、時に自分の身体も傷つけている様子はまさしく狂戦士です。


 大元になった人の死体は、そういう戦い方をする人だったのでしょう。


 数多くの骨を取り込み、返り血でコーティングされていった現在の姿は理性など欠片も残っていないだけではなく、人間時代より格段に強くなっています。


 腐肉漁りの冒険者達では、束になっても勝てる相手ではありません。


 結界の中を押し合いへし合い逃げまとい、少しでも長く生きようとしています。



 しかし、中にはまだ牙折れていない腐肉漁りの姿もありました。


 セタンタ君と同じ年頃のパリス少年です。


 仲間が切り刻まれる中、短刀を手にアンデッドの後ろに回っています。


 じりじりと、蛇腹剣の間合いを見定めつつ、短刀を魔術で強化しました。


 セタンタ君は「勝てっこない」と思いました。


 パリス少年は「やってやる!」と意気込んでいました。


「馬鹿……やめろ!」


 セタンタ君の声は届かず、必死で短刀を構えて突っ込んでいったパリス少年は、アンデッドの背中から弾け飛んできた骨の矢じりに胸を貫かれ、転びました。


「えっ……?」


 パリス少年は何が起きたのかわかっていませんでした。


 自分の胸に出来たポッカリ空いた穴を撫で、戸惑った様子で立ち上がろうとしました。痛いという認識すら、ポッカリと抜け落ちたまま。


 立ち上がりかけたパリス少年は横合いから飛んできた蛇腹剣に身体を打たれ、ゴムまりのように転がり、飛んで、岩にぶつかって動きを止めました。


 もう立ち上がる気配はありません。


 死んだふりですらなく、直に本物の死体になるでしょう。


 そしてアンデッドになるのです。



 バッカス王国の冒険者達が戦うアンデッドは、このように死んだ冒険者の死体を素体に誕生していきます。


 ちゃんと措置を施せばアンデッド化しませんが、措置を施す人すらなく全滅していった冒険者達がアンデッドの群れになる事もあります。


 ちなみにバッカスの冒険者達が戦っているアンデッドは呪われた不死者などではなく、死体に定着した細菌型の魔物が動かしているだけのものです。


 アンデッドを生む細菌型の魔物はそこらじゅうにうじゃうじゃといます。豪雨の中だろうがピンピン生きて、死体が転がろうものなら一斉に群がり、侵し、自分達の苗床とするのです。


 まだ肉があるうちは筋肉を無理やり動かして稼働させ、肉が腐り落ちた後は骨に定着して操り、スケルトンにしてしまいます。


 細菌そのものは生者に対しては無害ですが、死体を放置すれば人間は100%アンデッドにされます。時に魔物をアンデッドにする事すらあります。


 そのため、冒険者ギルドは余計な魔物を増やさないためにも死体の処分を広く推奨しています。強制ではありませんが冒険者もアンデッドうじゃうじゃいると面倒なので、そこら辺は最低限のエチケットとして出来るだけ処置します。


 聖水をふりかける処置もありますが、大抵は物理的に処置します。


 原型留めずミンチにするのも処置手法の一つです。さすがの細菌型の魔物さん達もミンチはどうしようもないです。ただ、ミンチにするのは大変なので大抵はバラバラ死体ですね。


 たまに身体の一部だけ這っているアンデッドがいますが、グロいばかりでそこまで有害じゃないものばかりです。


 パリス少年も放置しておけばアンデッドになりますが、円卓会の皆さんが丁重にバラバラ死体にして捨て置くでしょうから、その辺は大丈夫でしょう。



「むごいね……」


「……いや、まだ間に合う」



 そう言葉を交わしたのはマーリンちゃんとセタンタ君でした。


 マーリンちゃんはパリス少年がピクリともせず、目がガラス玉のように変わっていくのを観測していましたが、セタンタ君は「それでも間に合う」と思いました。


 この世界には魔術があり、重傷者であっても治癒の魔術で元通りにする事が出来ます。首がポロリと落ちても治す事が出来るほどです。


 生者にしてしまえば、魔物アンデッドの身に堕ちる事はありません。


 まだ間に合う。


 セタンタ君はそう信じ、動く事にしました。


「おい、円卓会の総長」


「アルトリウスだ」


 アルトリウスさんは無礼な態度の少年に眉をひそめつつ、視線を注ぎました。


 言葉遣いこそ丁寧ではありませんが、そこにはミスリルの槍を携えた小さな戦士がいました。まだ若いですが、確かな実力を持った冒険者の姿です。


 アルトリウスさんはその姿に瞠目……したりはせず、不機嫌そうに鼻を鳴らし、「いつまでここにいる、下がれ」とネコを追い払うように手を振りました。


「俺にやらせてくれないか?」


「何をだ。鬱陶しい」


「あの魔物、俺が討伐してやる」


「…………」


 円卓会の総長は胡乱げに、少年冒険者を見つめました。


 まだ骨を狩り始めたばかりのものならともかく、腐肉漁りの冒険者達を狩っているエルンブ・ヴァルフィッシュは歴戦のアンデッドです。


 骨本来の硬度すら超えて魔的な力を持ち始めた白骨の鎧。いくつもの死を重ねた歴戦のアンデッドは練達の戦士ですら返り討ちになりかねない相手です。


 総長は腐肉漁りが全滅した後、防護の魔術で壁を狭めつつ、まず相手の武器を遠くから破壊し、しかる後に配下の冒険者達で圧殺する腹積もりでした。


 それを一人の少年が代行すると言ったのです。


 もはや鼻を鳴らす事もせず、不審げに少年の意図を探り始めました。


「あの中に友人でもいるのか?」


「違う。ろくに話した事すらねえよ」


「なら、なぜ戦おうとする」


 総長は少年の立場に立って考えました。


 そのうえで「戦ったところで得はない」と思いました。


 実際、それはおおむね正しいのです。



 セタンタ君は、少しだけ答えに迷いました。


 腐肉漁りという生き方には侮蔑すら持っています。


 けれど、セタンタ君は相手の立場に立って考えました。


 自分は運良く、生きる術を教えてもらえた孤児院に拾われた。


 孤児だったとはいえ、恵まれていたとセタンタ君は思いました。


 けれど、パリス少年達はどうでしょう。


 ろくに戦う術を学ぶ事も出来ず、それでも生きるためには何かしらの稼ぎを得る必要があるから、仕方なく腐肉漁りに身を投じたのではないか、と思いました。


 最終的に猫背のエルフさんのように汚く、ずる賢く、金に目がくらんで他者を貶めるようになったかもしれませんが、そもそも始まりは「生きるために仕方なく」だったのではないか、と思いました。


 自分も、ああなっていたのではないかと想像したのです。


 そして、パリス少年達に同情しました。


 生き方は嫌いでも、生きたい理由を馬鹿にすべきじゃないんじゃないか、と。


 だから助けたい。


 あまりにもむごいし、まだ助けられる人もいるかもしれません。


 痛い目あったんだから、分相応に生きた方がいいと言えるかもしれません。


 セタンタ君はそんな思いを抱きました。




 が、それを言うのはこっ恥ずかしかったので言いませんでした。


 代わりに、不敵に笑ってこう言いました。




「アンタを見返してやりたい」


「ほう?」


「アンタ、俺の事を腐肉漁りだとかフェルグスのオッサンに寄生してるとか、馬鹿にしてくれただろ? だから、あの魔物を踏み台にして見返してやりたい」


「謝罪を求めると言うのか」


「いや、ただ見てくれてるだけでいい。ちょっくら勝ってくるから、特等席で見ててくれよ。もし万が一、俺が負けても……それはそれで見世物になるだろ?」


「ふむ」


 円卓会の総長の胸中に、興味が湧きました。


 相手がタダの子供なら鼻で笑って一蹴します。


 しかし、相手がバッカスでも名の知れた冒険者であるフェルグスさんも認め、組んでいた相手なのであれば話は別です。


 セタンタ君が死んだところで、総長の腹は痛みません。


 フェルグスさんに文句を言われたところで、「いや、そもそもあの身の程知らずの少年が馬鹿を言って勝手に死んでいったのだ」と言えばいいだけです。


「よかろう、特別に許可する」


「よし! じゃあ行ってくるから、一瞬だけ結界に穴作ってくれ」


「うむ。だが、一人で倒すのが条件だ」


「わかってる」


 フェルグスさんの奥さんやマーリンちゃんが止めましたが、セタンタ君は「やらせてくれ」と言い、余計な荷物だけ預けました。


「セタンタ、危ないって!」


「まあな。けど、フェルグスのオッサンなら勝てるだろ」


「セタンタはオジ様じゃないじゃん!」


 それでもやるのだ、とセタンタ君は意気込みました。


 マーリンちゃんは心配そうにしてましたが、やがて「はぁ~~~! もぉ~~~!」と大きく溜息をつき、止めるのを諦めました。


「いいよいいよ、好きにすればいいよ。……倒した後は腐肉漁りの皆を治癒して回ればいいの?」


「だな。円卓会の様子見つつ、出来れば助けてやってくれ」


「りょーかい。……無駄死にしちゃダメだよ」


「おう、任せとけ」


 かくして、少年冒険者と骨の鎧武者の戦いの火蓋が切って落されました。




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