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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
間章:星狩と家畜エルフ
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集合野営地の娼館事情



「とりあえず、ザイデンの観測所があるからそっちに――」


 行きましょう、と言いかけたアタランテさんは気づきました。


 一緒に歩いていたレムスさんの姿が無く、振り返ると離れたところで立ち止まっている事に気づきました。どうも野営地内にあるお店を見ているようです。


 お店の名前は「勇士の館」というもので、何のお店か直ぐに察したアタランテさんは呆れ顔を浮かべながら総長レムスの回収に向かいました。


「ほー……! こんな可愛い子が来てんのか……ほう、お持ち帰り可……!」


「おい、コラ、そこの8歳までオネショしてた黒狼系獣人!」


「してねえよ!? 人聞きの悪い事を言うな!」


「なーに、そんなとこで油売ろうとしてーんの?」


「情報収集だ」


「娼館で?」


「応ッ!!」


 レムスさんは腕組みしたまま少年のような瞳で答え、アタランテさんに思い切りお腹を殴られました。殴られましたが腹筋で受けて腕組みを崩しませんでした。


 集合野営地にも娼館はあります。


 冒険者の遠征には酒保商人が手配した娼婦さんが同行する事もあり、シュセイのように年中同じ場所に存在している規模の大きい集合野営地には娼館そのものがオープンする事が多々あります。


 シュセイにある娼館の一つ、勇士の館は星狩りに来た冒険者の方々を「隕石を恐れず勇猛果敢に挑む勇士様方」と煽て、毎日沢山の鴨……もとい、お客様が訪れています。星狩りで稼いだ稼ぎをうっかり全てつぎ込む人すらいるほどです。


 多くの冒険者が出入りし、ピロートークとして冒険譚や昨今の星狩り事情が語られるため、情報収集の場として使えない事も無いのですが……。


「この手の娼館みせに来てる冒険者やつらなんて自分を大きく見せたいあまりに、話を盛ってんだから星狩り関連の情報集めるなら役に立たないわよ」


「えー、でも、可愛い子いるもん……」


「いるもん、じゃない、アホ、カス、死ね」


「え~ん」


 泣き真似をするレムスさんを前に、アタランテさんは溜息をつきました。


 そして、野営地の娼館事情について言おうかと思いましたが――さすがにお店の前という事もあって言葉を飲みました。


 集合野営地にも娼館はありますが質は都市内の娼館より格段に劣ると言われています。理由は簡単、娼婦の人達が「都市間転移ゲートがない不便で危ないとこに行きたくなーい!」と言うためです。


 それゆえに質も悪くなりがちなのですが、冒険者さん達も選り好み出来ない状況なので都市よりも高い値段だろうが利用してしまう人が結構います。


 ボッタクリしやすいため、娼館経営者は娼婦の方々を誘致するためにも給金を高めに設定しています。利便性と安全に対して収入を天秤にかけ、お金に困っている娼婦さんがやってくるのです。世知辛いですね。


「アタランテ、俺はいま病気にかかってんだよ」


「何の病気よ」


「あのね? ちんちんが腫れててね……? それ治すために娼館行く必要あるの」


「頭の病気ね」


「でも、このお店なら治してもらえるよぉ?」


「ま、そうだろうけどさ。遊んでる場合じゃないっつーの」


「この子とかめっちゃ可愛いぞ。マエダノゾミちゃん!」


「話逸らすな、ゴミカス甲斐性なし。…………ホントだ、めっちゃ可愛い~」


「お前好みの気弱そうなネコちゃんだろ?」


「うん。わかってんじゃないレムス!!」


「だろ~? お前も一緒に入る?」


「あ~、やばい、それでもいいかもって思うぐらい、性欲がむくむくと……」


 アタランテさんは弓使いで両刀使いです。


 ちなみに、野営地の娼館は都市に比べると確かに質は悪いのですが娼婦さんの外見――顔や体つきで失敗する事はまずありません。


 バッカス王国は魔術による整形手術が気軽に行えるため、多少生まれ持っての顔が残念だろうとちょちょいと変える事が出来るためです。



「あ、でもダメだ、全員軒並み一週間先まで予約入ってるわ」


「はあ!? 期待させといてその仕打ちは無いでしょ!!?」


「俺にキレないでください」


 ボッタクリ価格で質が悪かろうが、娼館は野営地における数少ない娯楽です。


 他、賭博等が行われる事もありますが、性欲解消には娼館なり恋人とらぶらぶするしかありません。冒険者も人の子。それは白狼会の二人も同じでした。


「くっそ! 私の性欲はどこで発散すればいいのよ!?」


「二人でナンパしにいくか? 冒険者にも可愛い子はいるし」


「いいわね……可愛い素人がいいわ。よし、4人ぐらい口説いてテント連れ込んで乱交でどう? アンタ2人、私2人でとっかえひっかえで楽しむのよ」


「俺はアタランテお姉さんも抱きたいです」


「しょうがないわねー」


「やったー。じゃあ、さっそく冒険ナンパの旅に出ようぜ!」


「ええ……! 後ろは任せておきなさい!」


 かくして、二人は観測所の件をほっぽりだして遊びに走りました。


 ルンルンとスキップして、野営地を周り始めてしまったのです。




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