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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
五章:迷宮都市サングリア
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帰還



 アリストメネスとの一戦を終えた後、セタンタ君は地上へと戻りました。


 大ネズミの群れとの連戦もあったため、疲労困憊の彼はレムスさんに担がれて地上へと帰還し、先に地上へと戻っていたパリス少年達と再会する事になりました。


 そして、レムスさんが脇に抱えて持ち帰った異形の剣士・アリストメネス――らしき残骸に関してはバッカス政府関係者の方に検分してもらったのですが……。


「んー、これ人形ですね」


「人形っぽい身体なのはわかるけど……中で誰か死んでたりしねーの?」


「これは完全に抜け殻です。遠隔操作してたんじゃないのかなー?」


 検分した人妻っぽさのあるエルフさんが小首を傾げつつ、残骸をナデナデしていましたがレムスさんが口を挟んできました。


「いやー、遠隔操作にしては動きがキレッキレだったんすわ。セタンタが戦ってる間、俺も『操ってる術師でもいるのかな~』と索敵はしてたんすけど、特に近所にいる様子は無かったなぁ」


「ふむふむ? となると身体が破壊された時点で、魂だけフラッと逃げたのかな? それなら動きの良さと、身体だけ残して退散出来てるのも納得できるから」


「そういう事、出来るんスか?」


「ほら、私達バッカスで使われている保険――遠隔蘇生がまさしくそれですよ。身体が消し炭になろうとも魂だけ逃げて、首都で生き返れますんでー」


「え、それじゃあコイツもヤられた時点で首都の保険屋に戻ってきてると?」


「その辺はこれから調査かな~? といっても……話を聞いた感じでは、そうでは無さそうだから……何か別の方法があるのかもですねー」


 実際、保険屋にアリストメネスらしき存在の魂はやってきていませんでした。


 この日、死亡して保険屋にやってきた人々を容疑者候補として話を聞き、その後の行動も監視したものの、アリストメネスだとは断定出来ませんでした。


 政府も「保険とは別の方法で離脱した」として、今後も――首都地下における大量殺人犯として――追跡を続けていく、という話になっていきました。


 真相は闇の中。


 少なくとも、今のところは闇の中へと飲まれていきました。



「よくわからん外道紳士だったなぁ」


「またどっかで、人殺しを繰り返すのかな……」


「どうだろうな。だが、セタンタが話してみた感じだと……あの人形の身体を試験しているって話だったんだろう? 同じもんがいくつもあったら、またどこかしらかに出没して辻斬なりなんなりやるんだろうな」


「倒しても倒しても、別の場所で復活する不死身の殺人鬼か……厄介だなぁ」


「だな。復活する手品のタネが対処出来るようなもんならいいんだが」


「セタンタにぃ~!」


 少年と人狼が話しているところに満面の笑みを浮かべた綺麗な金髪の女の子が勢い良くやってきて、少年に体当たりしました。


 その衝撃で満身創痍の少年の首が嫌な音を立てましたが、かろうじて受け止め、引きつった笑顔で「おう、どうした」と女の子を――フィンちゃんを迎えました。


「パパとママの指輪取り戻してくれて、ありがとー!」


「おう。パリス達から受け取ったか? もう無くすんじゃねえぞ」


「まだだよー」


「はあ?」


 首をかしげるセタンタ君のところに近づいてきたパリス少年が笑みを浮かべながら、「お前から受け取りたいんだってよ~」と二つの指輪を渡しました。


 ガラハッド君も微笑しています。二人とも空気を読んだようです。


「うんっ、セタンタ兄の手で私の指にハメて欲しいなぁ……」


「はあああ? な、何でわざわざ指に」


「おねが~い」


「しゃーねぇなぁ……」


「好きな位置にハメていいよ」


「む……」


 セタンタ君は照れそうになるのを堪えつつ、フィンちゃんの手を取り、少しだけ迷った末に右手の指に二つの指輪をそっとハメてあげました。


 フィンちゃんはそれを夕日に当てながら微笑んで見つめました。


「人差し指と中指かー」


「親御さんの指輪だ。隣り合ったとこにいさせてあげた方がいいだろ」


「うん……そうだね、ありがと、セタンタ兄」


 フィンちゃんは甘酸っぱそうに微笑みを浮かべ、パリス少年とガラハッド君とライラちゃんにも改めて「みんなありがとう!」とお礼を言いました。




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