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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
五章:迷宮都市サングリア
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親指の先



 少年冒険者は腐肉漁りを追い始めました。


 少女もそれに続きましたが、小型犬の姿は無く、二人きりでした。


 ライラちゃんが着いてこなかったわけではありません。


「足跡くっきり! ワンちゃんが先行して魔術で知らせてくれてるよっ!」


「即座に追いすがるだけじゃなくて、こっちに足跡まで知らせてくれるとは……」


 フィンちゃんは笑顔で、セタンタ君は舌を巻きながら走りました。


 冒険者ギルドに向かってくる人の流れは少なくなく、逃げる腐肉漁りもそれに苦心してトップスピードまでは発揮出来ていないようです。


 ライラちゃんは索敵魔術も起動しながら自身の低い視点をカバーしつつ、最小限の動きで猛然とダッシュ。人の脚という、動く木立を縫い、進みます。


 セタンタ君とフィンちゃんも、ライラちゃんと同じようにしました。


 索敵魔術で周囲の人の流れを見つつ――ぶつかりそうになったら立ち止まり気味に進路を変えるのではなく――速度を一切緩めず走れるよう、事前事前のコース取りから読み切って走っています。


 都市郊外の木立を最小限の動きで縫い、走るのと似たようなものです。


 二人とも赤蜜園で同じ訓練をこなしてきました。


 今回はその木立にんげんが動き、動き、ひしめき合っていますが……それこそ二人にとっては慣れ親しんだものでした。


 孤児院の仲間達と訓練を兼ね、都市内で鬼ごっこをした時とまったく同じ事をする――ただそれだけの事だと思い、昔を思い出し、少し笑いました。


 相手は冒険者崩れの腐肉漁り。


 孤児達の追跡をのらりくらりと避け、ふらふらと逃げ続けてきた孤児院時代最強のともだちである猫系獣人の女の子に比べれば、与し易い相手です。


 ですが、比較的容易い相手というだけ。


 相手も相手で追われる事はわかっていて、手は打ってきていました。


 その証拠に、先行していたライラちゃんが一匹で立ち往生していました。


 その直ぐ傍には、消えては現れる人々の影。



「やっぱ、都市内転移ゲート使って逃げやがったか……!」


「大丈夫」


 フィンちゃんが金髪を風にたなびかせながら、口を開きました。


「ライラちゃんがギリギリまで追ってくれた。この距離なら余裕で追える」


 少女は開いた口に自身の親指を入れました。


 それを軽く舐め、軽く噛んで取り出しました。


 水気を含んだ親指の先を晒し、風の流れを読むように空気をなぞりました。


 その指を媒介に、解析魔術を起動しました。


「――向こうさん、首都82丁目の三つ角、虹彩堂の店先で中腰になって待機中。万が一、私達が飛んできたら直ぐに都市内転移ゲートで再転移出来る位置取り。都市間転移ゲートパスはこちらの未所持都市無し、かな。動悸加速、動転からか索敵・観測魔術未起動。全力機動で5割方取り押さえれると、思う」


「取り逃しても――」


「私が追う。何度でも追いすがる。マーリンねぇほどの強い相手じゃない」


 深く、静かに呟いた少女。


 そして少年と小型犬が都市内転移ゲートで飛びました。


 飛んだ先で、宙吊りになっている腐肉漁りの姿を見る事になりました。




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