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少年冒険者の生活  作者: ▲■▲
一章:採油遠征と酒保商人
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冒険者の性差


 セタンタ君と獣人の女の子は冒険者ギルドへと辿り着きました。


 バッカス王国の冒険者ギルドは首都の中心部にあり、建物の外観はククルカンのピラミッドのように、遠目には石の板を積み重ねていったようなものです。


 ただ外側に階段などがあったりするわけではなく、外観が似ているだけの巨大な建造物です。一階部分は巨人でも屈まず入れるよう、高さ8メートルほどの大門も整備されています。


 冒険者が主にやってくるのは依頼を受けに来る朝方と、報告に帰ってくる夕方であり、セタンタ君と女の子がやってきたのは日が暮れ始めるより早い時間という事もあり、ごった返してはいませんでした。


「んにゃー! ここ、ぎるどだ!」


「とりあえず中に入るぞー」


「あいっ」


 セタンタ君はよく来てるので物珍しくもありませんが、女の子にとっては新鮮な光景であるらしく、ふんすふんすと興奮しつつ、セタンタ君に肩車されながらキョロキョロ見回しています。


 女の子のお兄さんは……まだ帰ってきていないようです。


 別に死んでいません。まだ郊外でギャハハと笑いながら魔物の返り血を浴びつつ、大暴れしているところです。お兄さん達は獰猛な獣人です。


 妹たる女の子はコロッとしてふわふわした綿で出来たワンコみたいなものですが、家系そのものはかなりの武闘派で怖いの生まれなのです。一応。


 女の子にギルド内をちょっと見物させてあげつつ、セタンタ君は馴染みの冒険者ギルドの職員を探して受付に向かっていきました。


 幼女の事を相談するなり、預けるなりするためです。


 相手は国家公務員みたいなものなので、まあ大丈夫だろうという目算です。ダメそうなら女の子の子守りしつつ、そのお兄さんとやらが帰ってくるのを一緒に待ってあげるつもりでした。


 セタンタ君は魔物には情け容赦ありませんが、年下の女の子には少し優しめです。ロリコンではありません。少しだけ面倒見が良いのです。


 セタンタ君は馴染みのギルドの職員さんを受付で見つけました。


 ただ、対応中のようですね。


「あれっ、なにしてんのん?」


「登録だ。新しい冒険者の」


「ふへー。あんにゃもトーロクして?」


「大人になったらな」


「むむっ!」


 新しく冒険者稼業を始める子達が、とりあえす登録だけ来たようです。


 バッカスの冒険者は誰でもなれます。これといって審査や保証金預けるなどという事もなく、成人さえしていれば直ぐになれます。それこそ異世界からやってきた身元不明の怪しい人物でも直ぐになれる武装組織です。


 それだけ冒険者という世界開拓と神殺しのための人材を広く募集しているのです。考え無しに冒険者になると惨たらしく魔物に殺されがちなんですけどね。


「おんなのこだけの、ぱーてぃだね?」


「そうだな」


 二人の言葉通り、登録に来た子達は全員、女の子でした。


 友達同士で登録し、一緒にパーティー組んで冒険者となるつもりのようです。


 魔術さえ使えば男女間の身体能力差は簡単に覆せるので、女の子だからといって舐めてはいけません。バケモノ地味た実力で可憐な見た目の女性冒険者もいます。


 セタンタ君の見立てでは、新しく登録しにきた子達は「まったくの素人ではなく、装備もしっかりしている」といった感じです。


 聞き耳を立てていると、魔術の腕も必要最低限以上あるようですね。



 リーダー格の女の子はエルフの弓使い。


 後方から射掛けつつ視野を広く持って仲間に指示がし易い立ち位置です。良質な合成弓を持っており、親が治療師でその手伝いもしていたことから治癒の魔術の心得もあるようです。


 二人目の女の子はヒューマンの大鎚使い。


 種族的にこれといって特殊な能力は持ち合わせていませんが、話しぶりでは両親共が冒険者であるため子供の頃から多くの武器に触れてきて、大鎚以外にも様々な武器の心得があるようです。魔物の種別によって使い分けれると心強いですね。


 三人目の女の子はダークエルフの槍使い。


 ダークエルフとは、かなりざっくり言うと褐色のエルフさんです。槍だけではなく離れたところから攻撃を加える魔術も嗜み、その他にも索敵魔術と森林地帯での魔物が残した痕跡の追跡技術にも自信があるらしい一種のスカウトさんですね。


 四人目の女の子はドワーフの剣使い。


 剣だけではなく盾と全身鎧で防備を固めています。森の中を甲冑姿で行くとかキツそうに見えますが、バッカスでは魔術を使えばそれぐらいは容易いです。甲冑を利用した装甲術という攻守に優れた魔術もあり、パーティーの頼れる前衛となってくれるでしょう。


 五人目の女の子は牛系獣人の女教師。


 肉置きの良いスケベな身体つきをしており、尻に弱点がありそうですが舐めてかかってはいけません。ハイヒールから繰り出される踏みつけ攻撃はクルミを割るに十分な威力があり、チョークの投擲は時に目に入って痛いです。


 六人目の女の子はヒューマンの女騎士。


 クロカタゾウムシの甲皮で作られた鎧で身を守り、これといって特技は無いそうですが敵に捕まった時の交渉役ぐらいは務まるでしょう。でも関節技に弱そう。



 以上、六名。


 中々にバランスが取れたパーティーです。


 実際に郊外に出て活躍出来るかどうかはまだわかりませんが、中々前途有望そうな女冒険者が集まったようですね。単なる仲良し組ではありません。


 セタンタ君も感嘆しているようです。


「腕の良さそうな女冒険者が揃ってる」


「そう? ●ンポに弱そうだよ?」


 セタンタ君は自分の頭の上で呟いた幼女の言葉にフッと笑いましたが、直ぐにハッとして「こいつ、意外と本質をついている」と考えを改めました。


 バッカスにおいて身体能力の差は魔術で何とかなりますが、それでも男女という違いはあり、そこを付け狙ってくる魔物がいるのです。


 魔物は「繁殖」「増殖」「神による創造」によってポンポコ数を増やしますが、繁殖方法は同種の魔物同士で行われるはとは限らず、捕まえた冒険者などの人間を苗床に繁殖する恐ろしい魔物達もいるのです。


「ふぇぇ……●ンポにおしょわれたら、どーするんだろぉ……」


「そうだな……。いや、きっと、大丈夫さ」


「ほんと?」


「ああ」


 女の子とセタンタ君は切なげな顔で見知らぬ女性冒険者パーティーの前途に「幸あれ」と祈らずにはいられませんでした。


 この後、彼女らは触手を嬉々としてぶった切る触手ローパー系の魔物狩り専門の職業冒険者となり、それを見た男性冒険者達が思わず自分の股間を危ぶむことになるのですが、それはセタンタ君達にはそこまで関係無い話です。


 馴染みの受付さんが登録を終えた後、セタンタ君は事情を話して女の子を預かってもらい、女の子は「ありがと! ありがと!」とセタンタ君に手を振って見送り、日が暮れて帰ってきたお兄ちゃん達に抱っこしてもらいました。


「あんにゃ、きょーはだいぼーけんだったよ?」


「そうなのか? 良かったな! 兄ちゃんにも聞かせてくれよ~」


「家に帰ったらおしりぺんぺんの刑が待っているかもしれないがな」


「やだーーー!」


 女の子は脱走しようとしましたが、お兄さん達に抱っこされているため逃げれず、「ふぇーん」と言いながらお家に帰っていきましたとさ。




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