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第六章:帰省

翌日、俺は肩掛け出来るバッグを背負いとある駅に降り立った。


「……久しぶりだな。」


そう言い、駅から見える風景を懐どこかかしんでいると横からうっとしい声が聞こえた。


『うはっ、久しぶりっておじいさん臭いですね。

それとも放浪の旅から帰った冒険者のマネですか?』


「はぁ~

メリー、今他人に見えてる?」


『いいえ、見えてないと思います。』


よし、暫く話しかけんな無視する。


『つれないですね~』


「さて、久々に着たし寄り道してから行くかな。」


『無視は酷いです~』


ここはとある小さな街の駅。

俺は元々ここの生まれで、中学生までこの街に住んでいた。

高校進学と同時に、とある理由から地元を離れ一人暮らしをするようになった。


別にこの街が嫌いとかそういうのではないし、むしろ昔の思い出が詰まったこの街は好きだ。

ただ、ある2つの事を除いては……


俺は途中で立ち寄った花屋で買った花を片手にとある場所に来た。

今日は平日の昼間の為、途中で出会う人も少なかったし、この場所に至っては俺以外誰もいなかった。


『あの、亮さん?

ここって……』


「ああ、最近会いに行けてなかったからな……」


メリーの戸惑った声で聞いて来たのも無理はない。

俺はただ階段を上り、一つの大きな石の前に来た。


そしてその石には大きく『斎藤汐里しおり』と『ひな』と掘られていた。


ここはこの街で唯一の墓地で、俺の母親と妹が眠っている場所だった。

俺は静かに墓石の周りを掃除したり、枯れた花を変えたりした。

そして最後に一度手を合わせ、数分間墓石を見つめた。

その様子をメリーは茶化す事もせず、ただ見つめていた。


墓石を後にすると、ちょっと心配そうにメリーが聞いてきた。


『あの……

今のお墓って……』


「ああ、母親と妹だ。

一応、毎月来てはああやって掃除とかしてるんだよな。」


『そうなんですか?』


「そうしないと、すぐに雑草とか汚れが付くからな。

それに俺以外掃除なんてしないしな。」


『御親戚の方やお父さんはしないんですか?』


そうメリーが言った瞬間、俺は無意識に足を止めてしまった。

それを不思議に思い、メリーは俺の顔を覗き込んできたが一瞬怯えた顔をした。


『あっ……』


その顔と怯えた声を聞いて、俺はハッとなり再び足を進めた。


「あ、いや。

なんでも結婚の際猛反対されて、親戚との縁は切ったって聞いたし。

……父親は、いないようなもんだしな。」


『えっ、それって――』


「あっ、ここのゲーセンまだ残ってたんだ。」


流石に意味深だった言葉にメリーは疑問に思い、より深く聞こうとしてきたのを咄嗟に遮った。


「ここのゲーセン結構古いんだけど、いっつも新しいゲーム機とか置くんだよな……

久々に寄ってっていいか?」


『別に私は構いませんが……』


「OK、んじゃま久々に遊ばせてもらうぜ。」


俺は駆け足で目の前にあるゲームセンターに向かって行ったが、メリーはどこか心配そうな眼で俺を見ていた。


「いや~、久々に遊んだ遊んだ。

やっぱ家庭版もいいけど、アーケード版もたまにはいいな。」


『結構強いんですね、亮さんって。』


気がつけば1時間近くは遊んでしまった。

基本的にはシューティングゲームや格ゲーとかをメインにやっていたが、メリーに強く勧められ、クレーンゲームまでやった。


おかげで、デフォルメの日本人形のようなぬいぐるみとう訳の分からいものをゲットしてしまった。


「まあな。

……けど、メリー?」


『はい?』


「この人形どうすんだよ?

ノリで取ったはいいものの、これ何のキャラだよ?」


よくよく見ると、眼と口は横線で和服のようなものを着た黒髪の人形。

どこかの市のゆるキャラにいなくはないだろうが、正直何のキャラか分からないし、見たこともない。


『え~、知らないんですか?』


「じゃあ、お前は知ってるのかよ?」


『知るわけ無いじゃないですか。』


「じゃあ知ってるような感じで言うな。」


『まあ、可愛いからいいじゃないですか。』


まあ、実際見ていると何処となく愛着がわかなくもないが……

だからと言って、俺が手に入れてもどうしようもないのは事実である。


『部屋に飾ればいいと思いますよ。』


「心の声読むな。

飾ってもな……

まあ、最悪哲にでもあげるか。

っと、着いたか。」


メリーとの話と言うか、人形について議論していたら今回の目的地の一つにたどり着いた。


立派な門に、その奥に続く階段。

俺は静かに門をくぐり、階段を上り始めた。


『亮さん、ここって一体?』


「今回、ここに来た目的の一つだよ。

まあ、お前に関する事だがな。」


そう言うとメリーは驚いた顔をしたが、俺はもくもくと階段を上った。

そして上りきると、中央に敷かれた道。

近くに設置された水汲み場に、中央にある立派な古い建物。

そして印象的なのは赤い大きな鳥居。


『亮さん、ここって……』


「知り合いの神社だよ。」


そう言うと、近くを竹ぼうきで掃除していた神主らしき男性が亮に気が付き駆け寄ってきた。


「亮君じゃないか。

久しぶりだね。」


「お久しぶりです。

と言っても毎月来てるじゃないですか。」


「ああ、そうだね。

……今でもお母さんや妹ちゃんのお墓掃除を毎月?」


「俺以外誰もしませんからね。」


「お父さんとはやはり……いや、これは野暮かな。」


久々に会う事で話は盛り上がりそうになったが、神主は少し罰が悪そうな顔をした。


「まあ、この話はこれくらいでいいっすか?」


少し強引に亮が話を終わらせると、神主も同意したかのように頷いた。


「ああ、そうだね。

まあ積もる話もあるから、お茶でも用意しよう。

おいしいわらび餅もだすよ。」


そう笑顔で申し出た神主に断るのは悪いと思ったのか、亮は申し出を受け神社の横に立てられた少し古びた家に入った。


そこで、居間に通され用意された麦茶を一気に飲み干した。


「ふぅ~、やっぱこの時期は麦茶だな。」


『亮さん、おじさんみたいですね。』


メリーが少し笑いながら言ってきたが、俺はとりあえず無視しといた。


『無視なんてひどいですよ。』


「……………」


俺は神主が近くにいない事を確認した後、ようやくメリーと眼を合わせた。


「無視されたくないんだったら、誰にでも見えるようになれよ。」


『え~、面倒だから嫌ですよ~』


「なら俺はスルーする。

じゃねーと、俺が大きな独り言をぶつぶつ言ってる不審者になんじゃねーか。」


『別にいいじゃないですか。』


「お前はよくても、俺がよくねえよ。」


『大丈夫ですって。』


「何が?」


『だってあの神主さん、私の事見えてるみたいですし。』


「……へ?」


メリーの発言に俺が拍子抜けした時、戸が開き神主がわらび餅を持って入ってきた。


「ああ、お待たせ。

ん、どうしたんだい?」


俺があっけにとられているのを不思議に思った神主は、わらび餅をテーブルに置くと聞いてきた。


「え、あの……

おかしな事聞くかもしれないけど、これ……見えるんすか?」


そう言い、俺はメリーを指さした。

メリーはこれとはなんですか!!とか騒いでいるが、俺としちゃ今は神主がメリーの事が見えているかどうかが重要だったんで無視した。


「ああ。

悪霊の類のものだろうけど、害はないみたいだね。

にしても、こんな可愛らしい悪霊初めて見たよ。」


そう笑いながら言ったと同時に俺は予想外の解答におもいっきりこけた。


「ちょ、大丈夫かい?」


「ええ……

なんか自分で色々と配慮していたのが馬鹿らしくなって……」


心配してくれる神主に対して、俺はゆっくりと立ち上がったが……

なんか妙に疲れた……


『もう疲れたなんて、体力無いですね。』


「……神主さん、ちょっと除霊お願いしてもいですか?」


『ちょ、亮さん!!

冗談ですって、冗談!!』


ちょっと本気で神主に除霊でもお願いしようかと思ったけど、その神主は俺達のやり取りを見て笑っていた。


「はははっ、亮君も彼女に随分と懐かれたもんだね。」


「懐かれたってつーか、憑かれてんですけど……」


「そうだったね。

まあ、除霊に関しては止めておいた方がいいよ。」


先程まで笑顔だった神主の顔が急に真剣になったと思ったら、予想外の言葉が返ってきた。


「……除霊しない方がいいって、どういう事ですか?」


「これに関しては、私よりも娘の方が適任だろうね。」


「……楓、ですか。」


「ああ、今日は娘も学校は休みでね。

今は道場にいるはずだよ。

ちょっとした厄介者と一緒にね……」


「『???』」


その後、俺達はわらび餅を御馳走になった後、この神社のとなりにある道場に向かった。


ここの神社は、剣道の道場も経営していて、俺が小さい頃は通っていた。

だから、ここの神主さんとも仲は良いし、その娘である永倉楓ながくら かえでとは幼馴染でもある。


でも、幼馴染ってやっぱり何かと縁があるのかね?

小学中学とずっと同じクラスだったから、常に一緒にいた仲だ。

けど、高校に行くと同時に俺がこの地を離れると、それから会う機会は全くなかった。

一応、連絡は普通にとってはいるが会うのは数カ月ぶりってところだな。


『新キャラの解説と神主さんとの関係を改めて説明御苦労様です。』


「メタいからやめろ。

っと、ここにだな。」


俺は見慣れた道場の入口にたどり着くと、戸を開けた。


中には巫女の衣服に身を包んだ少女が中央に座っていた。

綺麗な黒髪は後ろで束ねられ、整った顔立ちは幼い雰囲気を残しながらも何処となく大人びていた。


一瞬見とれてしまったが、そこには俺が見慣れた幼馴染がそこにいた。


「……楓?」


俺はその少女に近づき声をかけると、ようやく俺の存在に気がついたようだった。


「亮ちゃん?

あ~、会いたかったよ!!」


だが次の途端、先程までの清楚な雰囲気は消え俺目掛け勢いよく飛びかかった。


「…………」スッ


だが俺は慣れた動きで、避け楓は思いっきり床にダイブした。


「いったーい!!

どうして避けるのよ!!」


「そりゃ避けるわ。

小さい頃、そうやって飛びかかって腰の骨にひびが入ったのは俺の数少ないトラウマだからな。」


そう、こいつは何かと俺に飛び付きたがる。

本人いわく落ち着くからと言っているが、昔思いっきり飛び付かれた時腰をやられたのは俺にとっては嫌な思い出の1つだ。


まあ、後遺症もなく完治したがそれ以降、こうして勢いよく飛びついてきた時は避けるようにしていた。


『腰にひびって……

どのくらい勢い付けて飛びかかったんですか?』


「さ~な……

何せ幼少期だったから、記憶が曖昧で……」


「う~ん、確か50メートルくらい助走を付けてたかな?」


「おま、あの時そんなに助走つけ――」


……皆さん、おわかりいただけているだろうか?


「どうしたの亮ちゃん?」


「お前、メリー見えるん?」


「あ~、この子メリーって言うんだ。

私は楓。

よろしくね、メリーちゃん。」


『はい、よろしくお願いします~』


……普段、人には見えない状態とは何だったのか?


『気にしたら負けですよ、亮さん。』


「そうそう、それに私もこの神社の巫女なんだから。

霊感はある方だよ。」


「うん、メリーはともかく楓まで心読めるようになっちゃったよ。」


「『細かい事は気にしない!!』」

「うん、お前等同種の人間だな。」


それからすっかり打ち解けたメリーと楓は何や色々と話していた。


俺は久々に体を動かそうと、胴衣と竹刀を借りて少し素振りをした。


ちょっと汗が出始めた時に、少し休憩として壁を背に座った。


「…………」


そこで初めて気がついた。

この道場に来た時に妙な視線をずっと感じ続けてはいたが、俺が座ったすぐ横にプラスティック製の置物が置かれていた。


「……んだこれ?」


楓に聞こうとしたが、メリーとの話が盛り上がっており、妙に話しかけずらい……


「…………」


とりあえず、なんか気になるからその置物を観察してみた。


観察結果その1.プラスティック製

観察結果その2.人型

観察結果その3.姿はデフォルメで女の子がモデル

観察結果その4.口から少し舌をだしている。

と言うかこれって……


「ペ●ちゃん人形?」


時折見るその姿は、かの有名なキャラクターと同じだった。

だが、ここで新たな疑問が生まれた。


「なんでこんな所にペ●ちゃん人形が?」


『ふふふっ……』


その疑問を考え始めた時、突如その人形から不気味な笑い声が聞こえてきた。


「!!??」


俺は反射的にその人形から距離を取り身構えた。


「どうしたの亮ちゃん?」


「ああ、楓。

あれなんだ?」


俺の唐突な動きに疑問を持った楓とメリーが側にやってきた時、ようやく俺はこの人形の疑問を問いかける事が出来た。


その間にもペ●ちゃん人形はカタカタと微振動し、中から不気味な笑い声がずっと聞こえていた。

流石に霊的なモノに耐性がある俺でもこれは不気味だ。

現にメリーも俺の後ろに隠れながら人形を覗き込んでいる。


……つーか、お前と同種のもんだろーが!?

何でてめーが怖がってんだ!?


『霊になっても可弱い女の子なんです。

怖いモノは怖いんです!!』


知るか!!


「ああ、これね……」


人形への警戒を解かないままでいると、楓が先程の質問に答え始めた。


「ついこないだその人形に憑依しちゃった……」


……憑依って、この神社呪われたか?

そんな事を一瞬思ったが、楓話を続けた。


「髪が伸びる人形の霊だよ。」


「『…………』」


一瞬楓が何を言ったか俺には分からなかった。

それはメリーも同じようで、頭の上に『?』のマークが浮かんでいた。


「え、楓?

これ髪が伸びる人形なの?」


「うん、そうだよ。」


「けどこれプラスティック製だよな?」


「うん。」


「髪伸びんの?」


「伸びないよ。」


「……矛盾してるな。」


「してるね~」


「え~と、つまりどういうことだってばよ?」


『ふふふっ……』


俺達が人形について新たな疑問が浮かび上がっている時、今まで以上に不気味な笑い声が人形から聞こえてきた。


『我はこの人形に取り付きし怨霊なり……

貴様らに命ずる……

我を解放せよ……』


「『……は?』」


予想だにしていない言葉が人形から聞こえてきたと思ったが、楓は全く動じず返事した。


「あ~、もう。

またそうやって脅かそうとして~」


「……え~と、楓?

説明頼めるか?」


いまいち状況が飲み込めない俺は楓に説明を頼んだ。


「う~んとね。

ツクちゃんは、元々とある日本人形に魂が宿った付喪神だったんだ。」


「ツクちゃん?」


「付喪神だからツクちゃん。」


「ああ……」


「でも、その日本人形は髪が伸びる人形として供養されるようになって……

そこで別の人形に宿ろうと、様々な人形に乗り移って行ったんだって。」


「……付喪神ってそんなんだっけ?」


「まあ、自称だからね。」


「あっ、そう。」


「で、此間お父さんがこの付近でさ迷っていたツクちゃんを見つけて、あの人形に憑依させたの。」


「……で現在にいたるってわけか。」


「うん!!

でもね、なんかいっつもああやって来る人来る人に解放しろだとか脅かそうとしてるのよ。」


困ったよね~と楓が呑気な事を言っていたらペ●ちゃん人形改め、付喪神のツクちゃんは声を上げた。


『そりゃこんな人形に憑依させられれば文句も言うわ!!』


「え~、可愛いのに~」


『可愛さなんてどうでもいいわい!!

我は本来人形の髪を伸ばし人々を恐怖絵と陥れる悪霊ぞ!!

それが、何が悪くてプラスティック製の人形に憑依せにゃならんのだ!!』


うん、なんかあれだな。


「あ~、つまりお前は自分のアイデンティティが全く活かせないのが不満なのか?」


『そうじゃ。

まあ、我が本気を出せば問題ないが疲れるからの……』


「へ~……

本気を出したらどうなるんだ?」


『どんなものだろうが、憑依した物体から髪が生え伸びていく。』


「え、なにそれこわい。」


『むむ、ならば恐れ慄くがよい!!』


ツクがそう言うと、ペ●ちゃん人形がカタカタと不気味に震えると次第に宙に浮き始めた。


俺達はその不気味な様子をただただ眺めていた。


『はぁぁぁぁぁぁ……』


そして気合を入れるような声が聞こえた後、スーとペ●ちゃん人形は床に降り立った。


「……あれ、何も生えてなくね?」


「うん、なにもないね。」


『生えてないですね~』


俺達は期待していた展開とは違う形になりちょっと落胆した。


『まあ待ちなされ。』


だが当人のツクは先程とは打って変わって落ち着いた声でそう言った。

すると、突如プラスティック製であるはずのペコちゃん人形のてっぺんから何か薄らと細い糸のようなのが見えた。


俺達の頭に一瞬「?」マークが出ると同時に、凄まじい勢いでペ●ちゃん人形の頭から人の髪ようなものが勢いよく生えてきた。


それも1本や2本ではなく、大量に。


「『きゃー!!』」


楓とメリーは突然の事で驚きの声を上げた、が俺は……


「怖いわ!!」


思いっきりツキちゃんが宿っているペ●ちゃん人形を蹴っ飛ばした。


「あっ……」

『え?』


一瞬あまりにも不気味な現象に反射的に蹴ってしまったが、次の瞬間には我に返ったが時すでに遅し。

ペ●ちゃん人形は勢いよく壁にぶつかり粉々に砕け散った。


「あ~……」


『亮さん、それはちょっと……』


「ツクちゃ~ん!!」


メリーが冷ややかな目で見てくる中、楓は粉々になった人形の元へと近づいていった。


「あ~、その……

すまなかった。

あまりにも突然だったんで、つい……」


亮もまた罰が悪そうに粉々になった人形の元へと寄った。


『ふふふ、イイ蹴りじゃ……

じゃが、そんなもの我には意味をなさぬぞ。』


だが、何処からかツクの声が聞こえてくるや否や、粉々になった破片がカタカタと動き、一か所に集まり始めた。

そして徐々に形を整形しながら、元の形に戻ろうとしていた。

そう、戻ろうとしていた。


「だから不気味だっつってんだーが!!」


だが、突如亮のかかと落としが綺麗に決まり、集まっていた破片は再び粉々になり散っていった。


その後暫く経つが、ペ●ちゃん人形の破片は動く気配がなくただ時間だけが過ぎていった。


「はぁはぁ……」


『亮さん、大丈夫ですか?』


「何か知らんが妙に疲れた。

つーか、もっとまともな生え方とか復活の仕方はないのかよ。」


「ねえねえ、あれから暫く経つけどツクちゃんの反応が消えたんだけど……

なんか、もうペ●ちゃん人形に宿っていないような……」


『ツクの霊圧が…消えた!?』


「メリー黙ってろ。

つーことはあれか?

成仏……するわけないか。」


『物理的に倒そうとしましたからね。』


「だからあれは、あいつが突然――」


『突然じゃからて、物理的に死ぬところじゃったわい。』


「そうそう、突然……え?」


そう、今度は突然ツクの声が聞こえてきたのだ。

俺のバッグの方から。


「…………」


俺はまさかと思いつつ、近くに置いてあったバッグを開けると、その中から来る途中ゲームセンターで取った人形が顔を出した。


『ぷはっ~

息苦しかったわい。』


そして、バッグの中から出てゆっくりと歩いてきた。


『ふふふ、今までとはまた違う形じゃが、これもなかなか良い器よ。

そこの主よ、褒めてつかわすぞ!!』


そう言い俺の方を指さした。

……え~と、どういうこと?


『つまりじゃ、我はお主によって器を粉々に砕かれたが、近くに新たな器を感じ取りそちらに憑依したのじゃ。』


うん、やっぱこいつも心読めんのね。


「じゃあ、何で一回その器を元に戻そうとしたんだよ。」


『うぬ、壊されても我が元通りにするのじゃが、流石に疲れるのじゃ。

それに我はあの人形は好かん。

一回は器が無いと不便じゃから元通りにしようとしたが、すぐ近くにこの器を感じ取ってな。』


「つまり、これ以上あの人形を復元するよりもその人形に憑いた方がいいと判断した訳か?」


『うぬ。』

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