03
オレとまりの出会いは14年前。高校時代だ。
まりはクラスにたくさんいる地味な女のひとりで、オレはカースト的には上のほうのグループだった。
まりとは3年間同じクラスだったのだが、もちろんまりの名前なんて覚えることもなく、3年間が過ぎた。
大学に入学し、初めてのコンパに参加すると、まりがいた。
たまたま隣の席になったとき、オレはなんかおかしいなと思ったんだ。
こいつ、どこかで見たことあるぞってな。そりゃそうだ、3年間同じクラスだったんだから。
「ね、君。どこかで会ったことない?」
そう聞くオレに、まりはにっこり微笑んでこう言った。
「ありません」
それから数カ月経ったころ、高校の時に付き合ってた元カノから連絡がきた。なんでもアルバムを渡したいだかなんだかって。口実だとは分かってたが、ちょうどヤリ友もいなかったし会うことにした。
「これアルバムね」
まあ色々しゃべって色々することしたあとに、元カノがアルバムを渡してきた。
おお、本当にあったのか。ぱらぱらとめくると、たくさんのプリクラと写真にコメントが書いてあった。どうやら自作らしい。
「あ、この子」
修学旅行の写真にあの子が写っていた。顔の半分にコメントが書かれていてわかりにくいが、確かにあの子だ。
「まり?そういえばけんじと同じガッコだったね」
―嘘をつかれた、と気付く。だが、その理由がわからなかった。
理由がわからない感情を向けられたのは生まれて初めての経験だった。
それからのオレの行動はウサインボルトが驚くくらいはやい。
次の日にまりに会いに行き、惚れる。あの手この手をつかい、なんとか周りにカップルだと認知させた。
まりも、はじめのうちは嫌そうだったが、だんだんオレに絆されたようだった。とにかくあいつはオレの財布に弱かった。
それから10年。
はやかったのか、おそかったのか。