7 この国の事3
2話続けてどうぞ
脱字修正しました。
異世界2日目になりました
私はいま、眼科に来ています------もちろん、異世界の。
当たり前だけど、異世界にも眼科がありました。
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昨夜、私が使い捨てコンタクトを常用している事を、ややパニック気味にクリスさんに言ったあと、
クリスさんはクリスさんで動揺していた。
明らかに、目が泳いでいた。
・・・完全に"想定外"だったようだ。
「と・・・とりあえず、このまま部屋でお待ちください。いまシオン様に確認してきますので」
そう言って、あっという間に走って行ってしまった。
その間、私は何もすることが無いので、部屋の中(主にクローゼットの中)を物色する。
ここにある物は、何でも使っていいのかしら・・・?
とりあえず、寝る時に何を着るかを、今のうちに決めておこうと服を見繕っていたら、クリスさんが戻ってきた。
「シオン様に、管理局へ確認をしてもらいました。コンタクトレンズは、異世界から輸入することは可能らしいです。眼鏡を作ることもできますが・・・」
クリスさんは眼鏡してるし、私も眼鏡になるのかなあ・・・などと思っていたら
「大半の人は、視力矯正手術をしてしまうという話です。」
手術!?この世界の医療水準を知らないので、結構怖いのですが・・・
「・・・ええっと、つまり、私はどうすればいいでしょうか?」
「召喚した私達には、梨奈さんに対して、異世界での生活レベルを維持する義務があります。ですので、コンタクトや眼鏡をご希望でしたら、こちらで用意いたしますし、視力矯正をご希望でしたら手術の手配をいたしますよ。」
"とりあえず、明日の朝一番で眼科に行きましょう"と笑顔で言われ、ちょっと安心しました。
異世界って健康保険とかあるのかな・・・そういう事も今度聞いておきたいね。
「わかりました。おやすみなさい」
そう言って、お辞儀をしてドアを閉めようとしたら、クリスさんはなぜか、私が閉めかけているドアを手で押し開き、結構強引に部屋に入ってくる。
ちょっと唖然とその様子を見ていたら、クリスさんはそのまま、開けっ放しのクローゼットに近寄り、中の引き出しを開け始めた
・・・ちょっと、引いてしまいます
私の持ち物は着ていた制服ぐらいで、あとは元々用意してあった服なんだけど、それでもほぼ見知らぬ男性にクローゼットを開けられて、中身を勝手に触られるのはどうよ・・・・
引き出しの2段目から服を取り出したクリスさんは、まったく悪びれたところの無い笑顔で「これを着てください」と手渡してくる。
「じゃあ、おやすみなさい」
と、入ってきた時と同じくらいの素早さで、部屋を出て行く。
手渡された服を広げてみると・・・ナイトウェアだった。
・・・結構、セクシーな。
これが、異世界標準だったりするのだろうか・・・・・・・・・無理。
とりあえず私は、クローゼットの中から発見した大きめのTシャツで寝ることにした。
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そして、借りた目覚ましで無事に起きられた朝・・・
寝坊せず無事に起きれて良かったですが、ほんの少しは・・・夢オチを期待していましたけどね。
どうやら、異世界は『夢』ではなかったようです。
そして・・・
か、体が痛い・・・これは、筋肉痛?
昨日の『淑女の礼』だ!!!
太腿・腰・お腹・背中の順に痛い・・・『淑女の礼』とは、なんと恐ろしいっ
でも、出来るようにならないと、メイド長に怒られるだろうし
せっかくなら、きれいに出来るようになって、褒められたいし
よしっ、今日から筋トレも兼ねて、淑女の礼の練習だ!
と、決意も新たに、異世界2日目が始まった。
そして、クリスさんが部屋に迎えに来て、なぜか、朝食も食べずに眼科へ行くことになった
・・・馬車で。
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玄関を出ると、目の前に・・・馬--------
馬だ。
昨日はずっと、お屋敷の中だったから、初めての外出です。そして
馬車だ。
なんか、本当に、日本じゃないんだなぁと実感が。というか、地球じゃない?
中世ヨーロッパみたいな街・・・似たような街はあるかもしれないけど、
少なくとも、日本ではありえない光景だ
自動車が無い。もちろん信号もない。
道路も、2斜線では無いし。一方通行なのかなぁ
そして、アスファルトじゃなく、石畳。
「梨奈さん?どうしました?」
「あ、えっと・・・馬車、だなって」
「ああ、馬車は初めてですか」
"揺れるので気をつけてくださいね。"
クリスさんはそう言って先に馬車に乗り込み、手を差し出してくれる
私はその手につかまり、半分引き上げられるようにして、馬車に乗り込んだ・・・とりあえず、お礼を言う。
ところで、やっぱり馬車って揺れるんですか?
気をつけるって、どうやって.......
「大丈夫ですか?」
「・・・・・・」
大丈夫ではありません
酔った。
馬車酔いというのだろうか、これ。
どうやら、予想通り道路は一方通行らしく・・・ということは、さほど遠くない場所でもぐるっと回らないとならなかったりするらしい。
ぜひ、歩いて行きたかったです。
そう言ったら、『目が見えないと、危ないでしょう』と嗜められてしまいました。ごめんなさい。
とりあえず、景色を見て気を紛らわせる
ぼんやりしてても、景色なら充分堪能できる。人の顔までは、いまいちわからないけど
きれいな街。テーマパークに来てるみたい
区画整理がきちんとされていて、整然としている
街の人たちは、肌の色などは、特に統一性はないみたい。色々な人種が混ざっている感じ
旦那様もクリスさんも、西洋人顔ではあるけど、日本人と言い張れば見えなくもない・・・髪と目の色が黒ではないから『ハーフ』と言えばだけど。
そして、やっぱり女性はみんな、スカートが長い。
まあ、長いといっても、若いコは"ひざ下からふくらはぎまで"くらい、お年を召した方は"くるぶしまで"と、人によって違うけど。
昨日の私の"膝上タイトスカート"は、よっぽどNGだったのかもね。
教えてくれたメイド長に、感謝です。
それにしても、きれいな街。
昨日、初めてお屋敷の屋上から見たときも思った。
街全体が、なんか、きらきらしてる
「きれいな街ですね」
窓の外をみながら、そうつぶやく
「ええ、この国自慢の王都ですから」
クリスさんは笑顔でそう言う。
王都。ということは、昨日見たお城に王様がいるのか。
「気に入っていただけましたか?」
「はい」
にっこり笑って聞いてくるクリスさんに、私もにっこり笑って返事をする。
ただし、馬車に酔って気持ち悪いので、にっこり笑えていたかは定かではないけど
馬車が止まった
「さあ、着きましたよ」
クリスさんはそう言って、先に馬車を降りて、手を差し伸べてくれる
乗るときと降りるときと、エスコートではなく、転ばないか心配されて手を貸してくれてるんだろうな-
いえ、ありがたいですけどね。とりあえず私はお礼を言った
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そして、眼科です。
外観の中世ヨーロッパ風から一転、中に入ったら、それはもう、近代的装備の施設でした。
SF映画かと思うような光景・・・
ええええええええええええっっっ
まじでっ
いやいやいや、馬車・・・つまり、動力に『馬』を使っている国が、ここまで近代的な病院ってありなの?
ああ、でも、あまり意識しなかったけど、お屋敷は普通に電気ついてたし
ここにある機械たちも、きっと電気とか石油とかガスとかで動いている気がするし・・・
そして、クリスさんに通訳してもらいながらの検査・・・
私の知っている、眼科で視力を測るときには、片目ずつ『あいてるところを教えてください』とか『書いてあるひらがなを教えてください』とか言われたり・・・
なんか、ヘルメットみたいな装置を被せられて、全部自動で、私は一言も発せずに終了しました。
そんなこと、あり?
この国の技術力とか、医療水準とか、実はすごく高度なのかな?
待合室で待っている時に、それとなく、クリスさんに聞いてみると・・・苦笑しながら『そうですよ』と言われた
馬車を使っているのは・・・環境のため。車だとCO2出るしね。
道路が石畳なのは・・・水捌けのため。
電気は太陽光発電なんだって。
石油・石炭・ガスなどの資源は極力使用せず、
もちろん原子力も使わない
なんか、すごく地球にやさしい国らしい・・・違った、ここ地球じゃないし。
環境にやさしいからと言って、技術が進んでいないわけではないらしい。
むしろ、技術が進んでいるから、環境にやさしく出来るのかな?
そんなこの国では、視力矯正は、失敗するような手術ではないのだそうだ。
診察室に呼ばれ検査結果を聞いたところで、
「視力矯正手術・・・してみようかな」
と、ポソっとつぶやいたら、クリスさんが眼科医となにやら話し込み始めた・・・
「梨奈さん、このまま手術もしてしまいましょう」
「は?」
「ほら、急いで」
え?ええ?
つづきます