6 この国の事2
8/3 文章を一部修正しました。話の流れは変わっていません。
・・・・・ちゃぶ台があったら、ひっくり返したい気分って、こういうことを言うのだろうか・・・・・
この本、見たことある。
いや、厳密には『この本』ではないが。
この本の元になったであろう本を見たことがある。
半年ほど前、職場でグループ購入した宝くじが・・・当たった。
高額当選だった。
まあ、グループの人数も多かったし、私はそれほど金額も出してなかったので、手元に来たのは数万円だったのだが。。。
そのときに、本を見せてもらったのだ。高額当選者にしかもらえない本
『その日から読む本 突然の幸福に戸惑わないために』
ねえ、どう考えても、異世界バージョンに直しただけだよね
あの本は政府が発行したものでは無かったような気がしたけど、この本の発行は、日本国政府と書いてある・・・
ふっ、ふふっ
突然引きつったように笑い始めた私に、旦那様とクリスさんがギョッとしてる。
「どうしました莉奈さん?」
「・・・だいじょうぶか?」
ええ、大丈夫ですとも、ふふっ
「お二人は、宝くじって、ご存知ですか?」
話始めたら、食事が運ばれてきたので、この話は食後にすることになった。
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旦那様は、頭を抱えていた
クリスさんは、引きつった笑顔で、こめかみを押さえている
食事を終えると、旦那様の執務室に通された。
ひととおり、宝くじの話(クリスさんは知っていたけど、旦那様は知らなかった)をして、この小冊子の説明をした。
私がいきなり壊れた理由は、理解できたようだ。
「・・・その冊子は」
頭を抱えたまま、旦那様が話し出す
「その冊子は、大変よく出来ているため、各国見本にして、同様のものを作成している」
「ふふっ、でしょうねぇ。それに、宝くじに高額当選した人が、こちらに召喚される確立なんて、ほぼ無いに等しいのかも知れませんしねぇ。ただ、なんというか、異世界でこんな見たことある装丁の本を渡されると思わなかったものですから。、それとなんとなく、なんで私が召喚されたのか、日本国政府に是非、問い詰めたい気分ですけれど。」
ふふふっ、勝手に拉致っておいて、渡される本がパクリって・・・人の人生なんだと思ってんでしょうかねっ
「まあ、王宮に行ったら、日本の外交官に・・・よく言っておく」
「・・・いえ、それはヤメテクダサイ」
来た早々、印象悪くなると、ややこしそう。
ブラックリスト入りとか、絶対嫌だしね。
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いつまでも凹んででもしょうがないので、話を切り替えることにした。
「ええっと、それで?」
「あ、ああ。クリス」
「はい、莉奈さん、明日は身分証明書用の写真を撮ります」
ああ、なるほどね。さっきの身分証明書は『仮』だったし。
「クリスから聞いていると思うが、とりあえず1ヶ月は語学勉強をしてもらう。」
「明日から、早速はじめますからね」
「・・・はい」
「それと平行して、この国の制度や召喚の事を私が説明する」
「・・・旦那様が?」
「・・・召喚主には説明義務があるんだ」
なるほど。
「とにかく、今日は疲れただろう。休んでいいぞ」
「じゃあ莉奈さん、部屋まで送ります」
「あっはい。失礼します」
とりあえず、さっきメイド長におそわった『旦那様への礼』をして、退出した。
「あ、呼び名決めるのわすれた」
莉奈たちが退出した後、シオンがそんなことをボソッとつぶやいていた。
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部屋まで送ってくれたクリスさんが、何かを思い出したように手をたたいた。
「そうそう、目覚まし時計を持ってきます」
そう言って出て行ってから、数分後・・・
・・・ええっと、これって、日本のメーカーの目覚まし時計ですよね
「私が"留学"時代に使っていたものです。」
「・・・ひよっとして、日本に居たことがあるんですか?」
「ええ、もう10年以上前ですが。この時計なら、莉奈さんでも使えるでしょう?」
「はい。ありがとうございます」
「明日、7時半に迎えに来ます。では、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
バタンと扉が閉じ、とりあえずシャワーを浴びようと洗面所に行き・・・
「あああっ!!!ク、クリスさんっっっ」
急いで廊下に出ると、廊下の一番奥まで歩いていたクリスさんが、びっくりして戻ってきてくれる
「どうしましたっ?」
「あっ、あのっっ、わたしっっっ」
「莉奈さん、落ち着いて・・・」
「わたし、コンタクトなんですっ」
「・・・」
「使い捨てコンタクトを、常用しているんですっ」
つけっぱなしには出来ないし、はずしたら、見えないんですっっ
召喚条件に"視力の良い人"と入れないと、当然そうなるよねー