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小話 王太子は憂う

本編が進まなくてすみません。この話は60話の夜の事です。(61話最初の部分、夕食の後です。)

「大丈夫、怖がらないで」

ちょっとしたイタズラのつもりで押し倒したときに、彼女の・・・シオンの召喚者、リィナの未来が見えた。


あれ?この貴女(ひと)が・・・?

これは遠い未来。いつもは見えるはずの無い遠い未来が何故かこの時見えたんだ。たぶん、接触してた所為かな?と思うんだけど。


それから、見えた未来に動転して、もう少し詳しくと思いちょっと上の空になりつつ彼女に接触し続けていると、シオンにめちゃくちゃ蹴られて、クリスに睨まれた。


・・・まあ、あれは僕が悪かったけどね。



***************************



王太子として生まれた僕が持っていた『(キー)』の名前は、『未来視』という。王家(ウチ)の家系には結構な割合で生まれてくるらしいよ、未来視も過去視も。


でもまあ、未来視とは言っても、普段はせいぜい半年先か、最長で1年先くらいまでしか見えない、あまり使えない『(キー)』だ。

しかも、自分の意思で見れる訳じゃないのだから、ますます使えない。


“未来が見えるなんてうらやましい”と貴族の子弟に言われたことがあるけど、明日の晩御飯を知っていたって何も良い事はないよ。まあ、明日の事ならまだ良いほうだ。半年後の晩御飯とか・・・ああ、ホントになんでこんな使えない『(キー)』なんだろう。

・・・勘違いしないでね、別に晩御飯の事だけが見えるわけじゃないから!

見えても、どうしようもない事があるっていう話で・・・そう、帰還したら死んでしまうと分かっていた召喚者を、引き止めることすらできなかったんだから。


僕は未来を見るときに、変えられる未来か、変えられない未来かの区別がつく。

未来って、ほんの少しの事で、変化するんだよ。

変化する未来はフルカラーで見える。変化しない未来は、単色で見える。


あの侍女の未来はフルカラーで見えた。だから陛下(ちちうえ)に言ったんだ。ダリアが彼女の帰還を嫌がっていたのを知っていたしね。でもね、陛下(ちちうえ)は彼女の帰還を止めなかった。召喚者の意思が優先されるんだって言って。


母上の時もそうだった。僕はちゃんと言ったんだ、だけど――――――結局未来が見えても、何も出来ないんだよ、僕にはね。


だけど困ったことにたまに、すごく遠い未来が見えることがある。今回のようにね。

そして困ったことに、そういう時は僕自身に関わる事が多いんだ。

そうすると、どうなると思う?


子供の頃、母上にピアノを習ったことがあった。

でも、ピアノが上手く弾ける未来を見たから、もう毎日練習するのはやめた。

馬に上手に乗っている未来も見た。そうか、僕って馬に乗れるようになるんだ、と思って練習をサボったし。

いつかクリスに剣で勝てる日が来るのなら、剣の練習なんてしなくてもいいよね?


そんなこんなで、真面目に取り組まない僕についたあだ名が『あの馬鹿』だった。


ひどいよね。


練習、全然しなくなったけど、ピアノは上手に弾ける。

馬も乗れる。馬術の教師が教えてないのにってびっくりしてた。

クリスには、まだ勝てないけどね。


まあ馬鹿と天才は紙一重だって言うからね。

僕は努力しなくても出来るようになることには、努力しない主義なだけだよ。


ああ、それで何の話だったっけ?そうか、リィナの話だったよね。

うん、彼女の未来が見えた。びっくりしたよ。

何が見えたって?言わないよ。未来なんて、知らないほうがいいんだから。僕が言うんだから間違いないよ。

それにカラーで見えたから、変わるかもしれないだろう?


あの未来は変わらないといいな、と思うけどね。

僕は気に入ったよ、リィナの事。



先日見た未来―――――クリスの未来は灰色で、シオンの未来はセピア色だった。

単色の未来ということは、つまりあれは近い将来に必ず起こる“変えようが無い未来”。

二人の弟として、王太子として、僕に何が出来るだろうか?

この未来は、今までと同様に無力感に囚われている場合じゃない。起こってしまうことはどうしようもないが、

「結果は、見ていない。僕が見たあれは、結果ではない」

だから、大丈夫。それにリィナもいるし。


「・・・意外と、なんとかなるのかもしれないな」


呑気な事を言っている場合じゃないのだけど、あの未来は誰かに話せる内容じゃない。そのくらいは僕にもわかる。

なんだかこれじゃあ召喚者(リィナ)任せになってしまいそうで、ちょっと格好悪いけど。

全て終わらせて、帰還させてあげなくちゃ。そうじゃなきゃリィナに、

「僕のおねえさんに、なって貰えないじゃないか」


カラーで見えた、変更可能なリィナの未来。でも、それが現実になったら面白いと思う僕は、ダリアがよく言うように性格が悪いのかもしれない。


まあ、いつやってくるのかわからない未来より、今のところ見えている未来で、重要(おもしろ)そうなのは・・・明後日の舞踏会のハプニング。


「ああ、楽しみだなぁ。そうだ!ドレスを選んであげなくちゃ」


ニヤニヤ笑いが止まらないまま、僕は眠りについた。







今後、なんか色々起こりそうな・・・(予告)



なお、この小話は月バージョンがあります。「異世界~」にUPします。

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