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60 危機?

(いた)って平和にメイドな日常を過ごしていたある日。


旦那様とクリスさんに、また王宮へのお供を命じられました。

久しぶりに王女様にも会えるかもしれません。お元気でしょうか。・・・などと思っていた先ほどまでとはうって変わり、なんですか、この状況。


私は現在、男の人に押し倒されています。

「大丈夫、怖がらないで」

と言われましても・・・いやいやいやいや!怖いでしょう!


王女様のお部屋に伺おうと、廊下を歩いていた私は、なぜか腕をつかまれて最寄の部屋に引きずり込まれ、現在はベッドの上。

ちなみに先ほどのセリフは、私に覆いかぶさっている男性のものです。


なんだかものすごい手際よく連れ込まれて押し倒されたので、抵抗する暇もなかったんですが!

ちなみに今は両腕を頭の上で押さえつけられてます。足はまだ床に着いてますが、太腿から上半身はベッドの上です。

「あの」

「ん?」

「離して下さい」

「ん?」

人懐っこい垂れ目の金髪のお兄さんは、こちらの話を聞いてくれない人のようです。

「私、王女様のところに用事が・・・」

「いいにおいがするね、シャンプーかな?」

そう言って髪の匂いを・・・ひぃぃっ!耳っ!

「や!やめてくださいっ」

「やだなぁ。まだなにもしてないって」

「部屋に連れ込んで押し倒してますよね!」

「ん?」

うわー、話聞いてないよこの人、どうしよう。

今のところ、足は拘束されていないのですが、蹴る?蹴ってもいいかな?


蹴るかどうするかを考えていたところ、ドアがガチャガチャする音が聞こえました。

・・・鍵も閉まっていたんですか。呆れるほど手際が良いですね。

ガチャガチャしても開かないと判断したんでしょう、ガツンと扉を蹴る音がして・・・


バタン!


鍵が壊れたのか、勢い良くドアが開いたそこに居たのは・・・旦那様とクリスさんでした。

助けが来た、よかった。


ちょっとほっとして二人を見た私。

私の上に居る人も、二人を見ています。

まあ、すごく手際よくドアを蹴破られて、唖然としている感じでしょうか。


そして、私の状況を見た旦那様は、足早にベッドまで近付いてきて、私の上の人を蹴り飛ばしました。

「リィナ、大丈夫ですか?何もされていませんね?」

クリスさんも来て、私の様子を確認しがてら起き上がらせてくれます。お世話になります。

「はい、大丈夫です」

押さえつけられた手首がすこし痛いくらい。


旦那様に蹴り飛ばされた勢いで床に転がった垂れ目さんはというと、旦那様が剣を突きつけています。今日は騎士団でお仕事でしたから帯剣中なんですよね。


「覚悟はいいな」

「えっ?ちょっ」

「返答しだいでは切り捨てる」

「ま、まままままっ」

「シオン、切るのはやめなさい。絨毯が汚れます」

クリスさんがしれっとそんなことを言ってます。

それもそうか、と剣をしまう旦那様。ちょっと安心した様子の垂れ目さんの腹部に間髪居れずに蹴りを入れました。

「ぐふっ!」

「彼女が俺の召喚者だと知ってるはずだよなぁ、ユーリ」

ユーリと呼ばれた垂れ目さんは、ずりずりと後ろに下がりながら言い訳を試みますが

「シ、シオン、まっ…ぐぇ!」

旦那様は容赦なく蹴りを入れ続けます・・・痛そう。

「や、やめっ」

ドカッ!

「ご、ごめんなさいっ、ゆるし」

ドカッ!ドカッ!

「あ、あにうえ、やめ」

そこまで言ったところで襟首をつかみ、つるし上げた旦那様

「二度は無いと思え。いいな?」

目に涙を浮かべてコクコクコクコクと首を振る垂れ目のユーリさんを、旦那様は床にペイッと捨てました。

そして、私とクリスさんをチラッと見てから、部屋を出て行きます。


「自業自得ですよユーリ。ああリィナ、これは王太子のユーリです」


・・・ええ、そんなことだろうと思ってました。


「驚きませんね、気づいていましたか?」

「まあ、なんとなく。クリスさんや王様とおんなじ金髪だったので」

「それで、抵抗しなかったんですか?」

ちょっと咎めるようにクリスさんが言います。

「だって、蹴ったら不敬罪になったりするかなぁ、とか」

「させませんから今度からは蹴るなり噛み付くなりして抵抗して下さい。さて」

クリスさんはそう言うと、まだ床でお腹を抱えているユーリ殿下に向かって


「なんでこんなことをしたのか、じっくりと聞きましょうか」

と、怖ーい笑顔で言いました。





********************************




「バッカじゃないの!!馬鹿だ馬鹿だと思っていたけど、ここまで馬鹿だとは思わなかったわっ!」


ここは王女様のお部屋。そして王太子様を(なじ)る王女様の声が響きます。

さっきの旦那様の蹴りが相当効いたようで、王太子様はまだお腹を押さえています。


「リィナ、大丈夫ですか?痛むようなら薬を用意させますが」

あ、無意識で手首をこすっていたみたいです。クリスさんに心配されてしまいました。

「いえ、大丈夫です」

「あなたの大丈夫は、あまり信用できませんからね。見せてみなさい」

えー信用されてないんですか私。これはちょっと凹みますよ。

「ああ、これは痣になるかもしれませんね。薬をもらってきましょう」

クリスさんがそう呟いたとたん、王女様がヒートアップしました。

「なんてこと!女性の身体に痣を作るとか何考えてんのよお兄様!」

「ごめんなさい、本当にごめんなさい」


そして王太子様には、なんか泣きそう、というか泣きながら謝られてます。

クリスさんは薬を取りに行きました。


あの、もういいですから。薬つければ治るらしいので。

王女様も、お兄様をそんなにバシバシ叩いたら・・・はい、すみません、差し出がましい口を利きました。すみませんでした。・・・クリスさん、早く戻ってきて!




*********************************




「リィナと申します。日本人です」

ようやく落ち着いた(というか、怒りつかれた?)王女様の傍らで、改めて王太子様にご挨拶をしています。

「本当にごめんなさい。僕はユーリ。」

そう言って握手を求められました。これは始めましての握手かな?仲直りの握手かな?

そして改めて謝ってくれたユーリ殿下は、金髪で榛色(ヘーゼル)の垂れ目の、人懐っこそうな青年です。


ちなみに私はいま、クリスさんに片腕をとられて手首に薬を塗られています。自分で塗るって言ったんですけどね、却下されまして。


なので、椅子にすわったまま挨拶をして、クリスさんに片腕を掴まれたままユーリ殿下と握手という、とても不敬な態度です。


はい?何でしょう姫様?手?かして?・・・えええ!?いやそんな姫様に薬をつけてもらうなんて恐れ多いですから!え?お詫び?・・・あー、そういわれると、ええ、はい、ではお言葉に甘えさせていただきます。


現在、左手にクリスさん、右手に王女様です。両手に王族って、わたし何様ですかね。


で、結局ユーリ殿下は私に危害を加えるつもりは全くなかったようですし、何をしたかったんでしょう。

その答えはクリスさんが教えてくれました。

「大方、シオンが最近忙しくてユーリに構ってやれなかったからでしょう」

「何それ!子供じゃない!」

8歳・・・じゃなかった(そういえば王女様この前お誕生日来たんでしたっけ)、9歳に子供と言われてますよ?そういえばユーリ殿下は・・・19歳ですか、そうですか。


「だって、シオンもクリスも、ついでにダリアまで“リィナ”の話ばかりするからさ」


・・・私はそんなに王室の皆様の話題に上がっているんですか?


「そんなにリィナの話をしてた覚えはないぞ」

うぉわっ!旦那様、いつのまに!


「挙句にウィルやタクトまで“リィナ”の話をしてた。リィナはナンシーと仲がいいんだろ?」

「はい。親しくさせていただいております」

「そっか。僕も彼女(あのこ)は好きだよ。貴族の令嬢にしては裏表が無くて」


あら!こんなところにナンシー好き仲間が。仲良くなれそうですね。


「そんなことより、クリスとダリアはリィナに何をしてるんだ?」

「・・・薬をつけてもらってます」

「それは見れば分かる。一体何の・・・」


そこまで言った旦那様は、薬を塗られているのが両手首というのに気づき・・・


「・・・ユーリお前か」

「ごっごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ」

「リィナ、本当に他に何もされませんでしたか?」

クリスさんが小声で聞いてきます。

ひょっとして“何かされていたら、今のうちに言っておかないとヤバイ”ってことですか?


「リィナ、何かされたのか?」

「何かって程では。いいにおいがすると言って髪の匂いを嗅がれた時に耳に息を吹きかけられた位です。」

そう言ったとたん部屋の空気が凍りました。


「いゃゃぁ、変態!!!」

お兄様に変態は言いすぎでは?王女様。

「シオン、やっぱり切ったほうがいいかもしれません」

く、くりすさん?ここで流血沙汰はちょっと遠慮したいです。


「・・・ゆぅーり?」

「ごっごめんなさい!許して下さい!ごめんなさいっ、もうしません!ごめんなさいっ」


薬が効き始めて痛みが無くなるまで、ユーリ殿下の謝罪は続いたのでした。















クリス>シオン>ユーリ

みんなお兄ちゃんには敵わないんです。




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