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59 いつもとは少しちがう

メイドの朝は早い。といっても早番の場合ですけどね。

メイド1年目だった私は早番が多かったのです。

なので、夜明け前には目が覚めるのが習慣化しておりまして。


今日もゆっくりと眠りが浅くなってきて、ああー朝だなーと。

これから徐々に遅番と夜勤が増えていくみたいなんだよなーなんてことを、うっすら考えつつ、もそもそとベッドの中で寝返りを打ち、ゆっくりと目を開けると・・・


「・・・起きたか?」

「・・・」

「よく眠ってたな。まだ朝食の時間には早い。ゆっくりしてていいぞ」

そう言うと旦那様は部屋を出て行きました。


「・・・ふぇ?」


・・・悲鳴を上げなかったことを誰か褒めて!






そして現在、朝食の時間in王宮の客室。

傍らではクリスさんに怒られる旦那様。

私は美味しい朝食をいただいています。


久しぶりに見たなぁ笑顔で怒るクリスさん。

旦那様、自業自得ですよ。

もぐもぐ。

あっ!旦那様に反省が見られないとの理由で、いま正座させられてます。

うん反省は正座でしょう。さすがクリスさん、日本に留学してただけありますね。

もぐもぐ。

旦那様がさっきからチラチラこっちを見てます。

私に助けて欲しいんでしょうか・・・


助けるわけないじゃん!!!無視無視。

眠ってる女性の部屋に居座っちゃダメですよ!

・・・もぐもぐ。




そして朝食後、気の済むまで怒ったクリスさんといっしょにお屋敷に戻りました。


ん?旦那様?

足が痺れて動けないので、置いていくことにしましたよ。ぷぷぷっ。






**************************************





そしてお屋敷!

やっと戻ってきた日常!

また今日から掃除の日々・・・元銀行員としては、メイドスキルがどんどん上がっていくのもどうだろう、という気持ちは置いといて。


メイド仕事と旦那様のお手伝いをする日々を過ごしていた、そんなある日の事でした。


王宮から戻った私には、そろそろ1年になるからと、遅番と夜勤のシフトが渡されました。

ちなみに、早番は朝の5時から昼3時まで、遅番は午後2時から夜11時まで、夜勤は夜10時から朝

6時までです。

早番が一番時間が長いような気もしますが、朝食と昼食で計2時間分の休憩が入ります。遅番は夕食で1時間の休憩、夜勤は休憩なしです。

じゃあ夜勤って大変だーと思ったら、昼間のようにぎっちり仕事があるわけではないので、あえて休み時間が要らないとのことでした。つまり、起きてればいいのね。


そして、遅番シフトで働いていたある日。


「リィナ、ここはもういいから、今日はもう上がって頂戴!」

玄関ホールの汚れ(今日は雨だったので、床の泥が気になって。)をモップがけしていた私に、メイド長のキーラさんが言いました。


「え、でもあと30分・・・」

「道具は私が片付けておきますから!もう使用人棟へ戻りなさい。」

「は、はい!」

なんでしょう?

メイド長のこの慌てっぷり。

誰かお客さんでも来るんですかね?


お客さんが来たとき玄関ホールの掃除真っ最中だったら、確かにマズイですよね。

それに、私はお客様の相手をするメイドではないので、残っててもお役に立てないでしょうしね。


このとき私はそれほど疑問を抱かず、そう結論付けたのですが・・・

こんな遅くに旦那様を訪ねてくる普通のお客様など・・・来るはずがなかったんですよねぇ。





****************************





「リィナ、お疲れー」

「アリッサまだ起きてたの?」

「うん。少しずつ荷物片付けないとさぁ」


アリッサは今年、お嫁に行くことが決まっています。

お相手は次期伯爵様だそうです。

もともとアリッサの家は、おじい様が騎士として手柄を立てたそうで、男爵位を賜っていたのだそうですが、アリッサのお父様は騎士にはならず学者さんになったため、爵位を返上したんだとか。

「領地や当時の屋敷も一緒に返上したのよ。そのまま元領地に住むように新しい領主さんが言ってくれたんだけど、遠慮して隣の領地に引っ越したの。」だそうです。

そんなサッパリした性格(家族みんながそんな感じらしいですよ)のアリッサが、幼馴染からプロポーズされたのが今から10年前。アリッサが19歳の時。

男爵家時代の領地の、お隣の領地を治めている伯爵の息子さんが、アリッサの婚約者です。

一度お会いしましたが、感じの良い好青年でした。

青年。そう、青年でした・・・現在22歳の。

7歳年下!?と、まあ最初は驚きもしましたが、世話好きのアリッサに彼が甘えていたり、少しおっちょこちょいなアリッサを彼がフォローしたりと、なかなか良いバランスで・・・とてもお似合いです。


「長く勤めた分だけ、荷物って増えるんだなーとひしひしと実感してるわ。」

「明日早番でしょ程ほどにね?私、シャワー浴びてくる」


さて、さっさとシャワー浴びて、寝よ寝よ。

だって私も明日は早番なんだもんっ。






そして、朝。


今はアリッサと旦那様たちのお部屋のお掃除。

ちなみに、旦那様とクリスさんの部屋に、本人の居ないとき入室する時は、かならず2人以上でと決まっています。

まあ、機密書類もあれば、私達の評価や勤務態度のチェック用紙もあるそうなので、1人で入って「魔が差す」ことが無いようにっていう判断でしょうね。


クリスさんのお部屋を先に終えて、いつもの通り旦那様のお部屋に入った私達ですが・・・なんか、いつもと違うような?


んんーーー?


あ、ベッドにシーツが無い。


・・・


「ああ!なるほど!」

昨日の夜のお客様は、つまり、王家公認のそういう女性だったということですかね?


「・・・旦那様の彼女でしょうか?」

「今は居ないそうよ。」

「という事は、彼女以外の女性ですかー」

「リィナ、あまり詮索しちゃダメ」

アリッサが苦笑しながらそういいます。


まあ、そうですね。

ある意味、そんなことまで使用人に知られてしまうのは、お気の毒かも。

それとも、知られてしまうのが当然だから、なんとも思ってないのかな。うん、そうかもね。


とにかく仕事仕事っと。


掃除を終えて、旦那様のお部屋を退室しようとした時、ちょうど旦那様が戻ってきました。

「いま終わりました。失礼いたします」

アリッサがそう言ってお辞儀をしました。私もアリッサに倣って、お辞儀。


「あ、ああ」

なんか歯切れの悪い返事をして、旦那様は部屋に入っていきました。


やっぱり、使用人には知られたくなかったのかしら?






「どう思います?クリスさん」

「・・・それを私に聞きますか」

頭痛を抑えるかのように、米神に指を当ててジト目でこっちをみて言うクリスさん。

現在、クリスさんの書類作成のお手伝い中です。


「だって、クリスさんの部屋って女性が来てること多いみたいだし・・・」

「だから少しは言葉を濁すとか、貴女にはつつしみってものが無いんですか?」

「ありますけど。なんか日本では・・・というか私、庶民なのでそういう文化は無いんで、新鮮で」

「文化?」

「技術を磨くためだか、ただの処理だか知りませんけど、望む望まないに関わらず、派遣されてくるんですよね?」

「まあ、そうですね」

「ぶっちゃけ、ヤリたく無いときはどうするんですか?」

「どうもしませんよ、そのまま返品(、、)するだけです。それに風俗文化なら、日本のほうがよっぽど活発ですよね」


まあ、そうでしょうね。


「リィナ、頼みますから今の質問をシオンにするのだけはやめて下さいね」

「は、はいっ。しませんっ!絶対しませんっ!」


恐ろしい笑顔のクリスさんに約束させられました。





そしてその日の午後、仕事を終えてお茶をしに休憩室に行った時のこと。

またしてもメイド長が慌てた様子でかけこんで来ました。


「ああ!リィナ、悪いけどお茶の準備をして貰える?私が持っていくから!」

「はい」


お茶の準備?

またお客様?

キーラさんが直々に持っていくようなお客様へのお茶の準備を私がしていいんですかねぇ?

ああでもクリスさんは私の手伝った書類を持って、王宮に行ってしまったんでしたね。


なんか良くわからないですけど、キーラさんと一緒に厨房に向かいお茶の仕度をします。

「お疲れ様~。あら?キーラさん、どうされたんですか?」

そこにお湯を取りにきたらしいナンシーさんが合流しました。


「ナンシー良いところに!今からお茶を出しに行くから、あなたも来なさい!」

「はい?」


お茶の準備が終わると、二人はあわただしく応接室へ向かいました。そして私は・・・


見てしまったんです。

小一時間後に、馬車に乗り込む金髪美女と旦那様の姿を!後姿ですけどね。




翌日。

今日もメイド仕事の後に、クリスさんのお手伝いです。

「というわけなんですけど、あの方は旦那様の彼女ですか?」

「リィナ、堂々と覗きの報告を家令(わたし)にする使用人は、あなたぐらいですよ」

深~い溜息とともにそう言ったクリスさん。だってねぇ。

「他の人には聞きづらいじゃないですか」

「・・・」

クリスさんのあきれた顔も、だいぶ見慣れてきましたね。というか私そんなに呆れさせてるのか・・・ちょっと反省すべき?


「リィナが見た金髪美女は、王妃ですよ」

「王妃様っ!?」

つまり旦那様のお母様だったんですね!


「昨日外遊から帰られて、その足でそのまま屋敷(ここ)に来て、シオンを王宮に連れて行っただけです。」

「なぁーんだ。彼女じゃないんですね、残念。」


20歳位なんて、一番彼女が欲しいころじゃないのかなぁ。

旦那様、真面目だし王子様だし、ご令嬢方が放っておかないと思うんだけどなぁ。

「リィナ」


おっと、詮索禁止でしたっけ、すみません。










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