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53 ニューイヤーパーティー

最初は、異世界カフェのマスター視点です。

そのあとは、いつも通り、リィナ視点です。

パーティー中に、異世界カフェの扉が開いた。

盛り上がっている店内で、ドアが開いたことに気がついたのは、ドア前で異世界人たちからの差し入れの酒を飲んでいたマスターだけ。

「おや、いらっしゃい。」

入ってきたのは昔から良く知っている人物が2人。

「ご無沙汰してます先生。にぎやかですね」

この国では年末年始は家族とゆっくり過ごすのが定番の為、カウントダウンパーティーもニューイヤーパーティーも彼らは経験が無いんだろう。

「これから……」

カウントダウンが始まるから、と話しかけようとしたタイミングでカウントダウンの大合唱が始まってしまい、3人で顔を見合わせ苦笑した。

「騒がしくてすまんな。奥に・・・」

案内しようとしたところで、カウントダウンが終わり、クラッカーが鳴り響きあちこちでグラスをあわせる音がしたところで、俺たちの近くに居た女性がこちらに気づいたようだ。


きゃあ――!

という悲鳴のあと、何人かが驚きの声を上げる。

何だろう?という興味で、ほぼ全員の意識がこちらに向いたタイミングで・・・“性格の悪い方の元生徒”が、にっこりと笑った。

「お騒がせしてすみません。私たちも参加させて頂きますね」

疑問系で“参加してもいいですか?”と問うのでもなく、謙虚に“参加させてください”と頼む訳でもなく、“参加させて頂きます”と言い切ったわ、コイツ。

「先生、表に飲み物を持ってきてるんだ。運んでもらえるか?」

さっきから黙っていた、“大人しい方の生徒”がそう言う。

「ああ、わかった。おい、差し入れもらったぞ、何人か手伝ってくれ!」


2人とも異世界人にとり囲まれているが、まあ、人のあしらいは慣れてるだろうからな。

そう思い、俺は何人か手伝いの人間を連れ、表の馬車まで差し入れを取りに行った。





********************************




入り口付近に、人だかりが出来ています。

なんだろ・・・


「リィナ、私みてくる!」

けっこう“野次馬さん”なエリーゼが人垣に突進していき・・・


・・・あ、戻ってきた!

何故かエリーゼの後ろに、王子様2人が見えるんですが・・・気のせいですよね?




「何してるんですか?王女様は?」

「ダリアは寝かしつけてきた。お前こそ、何してるんだ」

「は?今日はパーティーですって何度も・・・しかもさっき馬車で送ってくれたじゃないですか!え、記憶喪失?それとも若年性痴呆?」

「バッ、そういう意味じゃっ」

「あー、落ち着けシオン、リィナも。」

なんかいきなり喧嘩腰の旦那様・・・なぜ!?

取り成そうとしてくれたクリスさんを無視して、旦那様は私の持っていたグラスを取り上げました。

「未成年者の飲酒は禁止だ」

「私は30歳ですってば!」

日本酒のグラスを取り返そうと手を伸ばしますが・・・ぬぬぬっ、高身長めっ!

私が必死で取り返そうとしているのが気になったのか、旦那様は私のグラスに口をつけます。

「・・・そこそこ強いな。なんの酒だ?」

「日本酒ですっ、ほぼ1年ぶりなんです!返してー」

そんな私の様子を見た旦那様は、なぜかニヤリと笑い、そのままグラスを傾けて・・・

「ちょっ!ゴクゴク飲むお酒じゃないですから!」

「美味いな。」

「そんな飲み方しないで下さい!せっかくタクトさんが持ってきてくれたのにー!」

「・・・お前、以前酔いつぶれたのを忘れたのか?」

ギクッ

「もう酒は飲むな。ジュースでも飲んでいろ」

「まだ酔うほど飲んでません!」

「タクト、リィナはどれほど飲んでいる?」

「私は遅れてきたので、それまでどのくらい飲んでいたのかは存じませんが、少なくともずいぶん飲んでるみたいです」

「タクトさん!」

裏切られたー!

「上司に嘘はつけないしね」

真剣な表情でそういうタクトさん・・・まあ、そうですけど。

「はい、リィナ。ジュースですよ」

クリスさんがジュースをくれました。

あ、このジュース美味しい。

コクコク飲んでいたら、旦那様に頭を撫でられました・・・また子供扱いか。


あー、もう、はやく元の見た目に戻りたいー!


・・・それにしても、このジュース美味しい。




**************************************




宴もたけなわ・・・とはこういう事をいうのでしょうか。

みなさん、盛り上がっています。

セリーヌさんはポンチョを脱いで、頭に猫耳を装着しました。まるでベビードールか!というようなピラピラでミニの黒ワンピース(透けてはいません!)に、足は豹柄のレギンス。いやー、すごい変身ぶりだわー。

さすがに旦那様も視線をそらしてましたよ。だって彼女、王妃様の侍女ですからねぇ。


その他にも、なぜか上半身裸の男性が多数・・・なんで男って脱ぎたがるのかしら?


私に飲酒を止めさせたタクトさんは、自分は散々飲んで酔い潰れています。ケッ!

旦那様とクリスさんは・・・強い。

この人たち、ずっと飲んでるのに、強い!

女性陣が王子様を酔わせようと散々お酌してるのに、フツーに飲んでます。


私はというと・・・

「リィナ、何を飲んでる?」

「ジュースです!」

たまに抜き打ちチェックがあるので、あれからジュースしか飲んでません。

ああ、でもやっぱりさっき日本酒飲みすぎたのかしら、なんか今頃フワフワしてきたのよね。


んー


眠くなってきたかもー

私も寝ちゃおうかなー

エリーゼも寝てるしー


座っていたソファーに横になろうとしたら・・・


「うひゃ!」

「ここで寝るな」


あれ?なんだこれ?

一瞬の浮遊感のあとに・・・旦那様の膝の上に、横向きで座らされてます・・・はっ!

「な、なにしてんですか!降ろして!」

「暴れるな」

「えええ!いやっ、ちょっと!」

抱っこされてるとか、おかしいから!

なんとか膝の上から降りようとバタバタしていたら・・・

ガツン!

「あっ、」

いま何か蹴りました、思いっきり!

何か・・・いや、誰か・・・?

「・・・足癖が悪いようですね、リィナ」

ヒッ!クリスさん!

「ごっ、ごめんなさいっ、すみませんっ、大丈夫ですか!」

横向きに座らされている私の足が、旦那様の隣に座っているクリスさんにクリーンヒット!しました。

「まさかメイドに足蹴にされるとはね」

「ち、違います!誤解です!蹴ったんじゃないんです!」

「いえ、蹴られました」

「ああ、蹴ってたな」

旦那様!?元はといえば旦那様の所為ですよね!

「シオン様、足癖の悪いメイドにお仕置きをしてもいいでしょうか?」

「・・・まあ、いいんじゃないか」

真っ黒黒のクリスさんと、それに同意する旦那様・・・

「っ、二人ともさては酔ってますね!?」

「まさか、酔ってませんよ?」

「ああ、酔ってない」


酔っ払いはそう言うんですってば!


「さて、じゃあ・・・とりあえずそのニーハイソックスを脱ぎましょうね、リィナ」

「は?」

ナニイッテルンデスカ、クリスサン?????

「その太腿の絶対領域も確かに捨てがたいんですが、せっかくのお仕置きなので素足になりましょうね」

「・・・は?」

ダカラナニイッテ???


クリスさんはなんだかすごく楽しそうに、私の足首を掴み靴を脱がせた後、太腿に手を伸ばし・・・

「えっ、ちょっ!どこ触っ!」

「リィナ、そんなに足を上げたら、見えちゃいますよ?」

「ひゃ!」

急いでスカートを抑えますが・・・見た!?

私がスカートに気を取られている間に、クリスさんは私の靴下を脱がしていきます。

「いやっー!なんか靴下脱がされるとか、いやらしいから!ヤメて下さい!」

「あきらめろリィナ。クリスは足フェチなんだ」

ポソっと旦那様が呟きます。

「そういうシオンは巨乳好きでしたね」

クリスさんがニヤリと笑ってそういいます・・・ん?巨乳好き?

「の、覗かないで!」

あわてて、胸元を押さえますが、おそらく膝に乗せられた時からずっと見ていたのであろう旦那様は・・・

「チッ!」

舌打ち!?王子様が舌打ち!?

クリスさんは嬉しそうに靴下を脱がせてるし・・・


誰この人たち!?


なんか普段とのあまりの変わりように、別人なのではないかと思ってしまうのですが!?

いや、そんなことよりも!

「セクハラ!セクハラです!」

「いいえ、これは上司を足蹴にしたメイドへのお仕置きですよ。」

「じゃあパワハラです!」


結局、靴下はたっぷりと時間をかけて両足とも脱がされ、素足に靴を履かされました。

旦那様は相変わらず膝から降ろしてはくれず・・・

他の人たちが酔っ払ってこちらを気にしていないことだけが、かろうじて救いですが・・・



「・・・あーあーあ、こりゃあ酷いな」

「ウィ、ウィルさん!助けて!」

「あー、またずいぶん可愛がられちゃったね、リィナちゃん」

「セクハラです!パワハラです!この二人変です!」

「うんうん、そうだねー。でもその姿で制服着ちゃった君も悪いんだからね?」


「ウィル、何しに来た?」

「そりゃあ、お二人を回収しに。こんな痴態、他の奴らに見せらんないだろう?」

旦那様の質問に、溜息を吐きつつウィルさんが言います。

「さ、帰りますよ。シオン様はリィナを膝から降ろして下さい。リィナちゃんはさっさと靴下履いて!」


なんで私が怒られるんでしょうか・・・


「先生、この三人、連れて帰りますんで」

「ああ、よろしく」

マスターは楽しそうに笑って・・・マスターには見られてたってことですよね!?うううっ、恥ずかしい。


「ほら荷物もったか?はやく馬車に乗る!」

「はいっ!」

「まったく、そんなスカートで・・・」


ウィルさんには馬車の中で、服装についての小言を延々と言われました。

お屋敷までの距離が短かったのが、せめてもの救いですが・・・腑に落ちない。


この服装も、二人が飲みすぎたのも、私の所為じゃないのに!!!






翌日、お仕事がお休みの私は、ゆっくり朝寝坊し、ブランチをいただきました。

使用人の方々は、ほとんどの方がご実家に帰ってますので、今日は自分のペースでのんびり過ごします。


午後、部屋でお茶を飲みながらのーんびりしていたら、ナンシーさんが帰ってきました。

「お帰りなさいナンシーさん。」

「リィナは何時ごろ戻ってきたの?」

「午前3時ごろですかねぇ」

「なるほどね・・・私、今日は兄と王宮に行ってきたのよ」

そういえば、ナンシーさんは侯爵家のお嬢様でしたね。

「王族の皆様に挨拶してきたんだけどね・・・旦那様とクリスさんが・・・」

はい?

「旦那様は青い顔してずっと顔をしかめてるし、クリスさんはずっと目をつぶって米神押さえてるし・・・」


二日酔いでしょうね。自業自得ですね。ふんっ。


「兄が言うには、旦那様たちが飲みすぎたのはリィナの服の所為だって言うのよ・・・『あの服は二度と着させるな』って言ってたわ。リィナ何着てたの?」

「・・・・・・」


私の所為じゃないでしょ!?


クリスさんの足フェチとか知らないし!

旦那様の巨乳好きとかも知らないし!



「う、うん。とりあえずあの服はもう着ないから」


若干引きつった笑みを浮かべている自覚はありますが、

あの制服は封印・・・いや、焼却することを私は心に決めたのでした。










ちょっとイヤらしい旦那様はいかがですか?

まあ、そんな時もあるよねwww


この回の裏がどうなるのか、私も今から楽しみです。



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