51 パーティーの始まりは
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
お気に入り登録とポイントを、ありがとうございます。
皆様がよい一年を過ごせますように!
さて、本日は年越しパーティーです。
でも、本日の侍女の仕事は王女様が就寝されるまで続きます・・・
どうやって異世界カフェまで行こうかなーと考えていたら、クリスさんが迎えの馬車をよこしてくれるということになりました。……何から何までお世話をお掛けしております。
え?私がふらふらしてると危険だから?何ですかその危険人物指定は。私が危険な目にあったのは私の所為ではないじゃないですか!
ともあれ、あとは王女様が早く寝てくれるのを待つばかりです。うふふっ。
この国では年末は家族と過ごすのが一般的だそうです。明日の新年は、王宮で新年の催しがあるそうなんですが、未成年の王女様は参加されないそうなのです。
なので、王女様も先ほどまで王族の皆様と一緒に過ごされていました。
そして現在、王女様はお風呂の時間ということで、2人の侍女が王女様のお世話をしています。
私は今日の午後も、王女様との勉強と刺繍で精神的なダメージを食らってしまい、ヨロヨロしながら勉強部屋を片付け、他の侍女さんと一緒にお茶でもしていようかと思い、控え室に入ると・・・そこに居たのは
「リィ・・・アンジェ。」
言い間違えましたね、旦那様。減点1です。
「お前はなんで一言目で間違えるんだか・・・。お疲れ様アンジェ。」
他の侍女さん達には聞こえないように小声でシオン様の間違いを指摘し、ため息をつくクリスさん。気持ちはわかります。
「どうしたんですか、お二人ともお揃いで。」
「迎えに来たんだ。このまま一緒に帰るぞ。」
えっと・・・
馬車をよこしてくれれば充分だったんですが。
王子様2人の登場に、周りの侍女さん達からの視線が、ちょっと痛いです。
しかもクリスさんが今日は王子様仕様なので、メガネを外しています。ムダにキラキラしてます。
「ところで何で侍女の控え室に堂々と入ってるんですか?」
「・・・」
「場所を変えましょう」
私の質問に目を背ける旦那様と、黒く笑ったクリスさん。
何かあったんですか?・・・聞かないほうがよさそうですね。
そして王女様のお部屋の応接室に移動して、話を続けます。
「えっと、いま姫様が入浴中でして、退室の許可が……」
「大丈夫だ。侍女頭には報告済だから。」
はぁ、そうですか。では帰りますか・・・
とりあえずここに居る侍女さんたちに挨拶して------
「ではすみません、お先に失礼いたし------」
バタン!
「シオンっ」
ドアが勢い良く開けられ、中から姫様が飛び出してきて、旦那様の腰にしがみ付きました。
そう、腰に。
「ダリア、邪魔だ」
「やーん、だっこー」
しがみ付いて抱っこを強請る王女様と、ため息をつきながら腕に乗せて目の高さまで抱え上げる旦那様・・・
王女様は旦那様の首にしがみ付いて頬を染めながら問いかけます。
「シオン、"よばい"しにきたの?」
「・・・幼女に興味は無い。大体、意味分かってるのか?」
「ダリア、シオンは真っ平な体型には興味がありませんよ」
「ひどいっ、なんてことを言うの貴婦人に向かって!クリスなんか嫌い!」
「お前のせいでシオンが幼女趣味だとかいう噂が流れてるんだぞ、いい迷惑だ。」
クリスさんの言葉に、旦那様も頷いています。まあ、そうですよね。王女様は8歳ですから、旦那様が手を出したら・・・立派なロリコンです。
「ほら、もう寝る時間だろ」
そう言って王女様を降ろすシオン様と、それでもまだしがみ付く王女様。
「いやっ、シオンと一緒に寝るの!」
「幼女と一緒に寝る意味が分からない」
「ダリア、シオンと一緒に寝たければ、せめて・・・そうですね、アンジェくらいまで育ってから改めてねだってみなさい」
は?
クリスさんのそのセリフに、全員の目が私に・・・そしてなぜそんな生温かい目を・・・はっ!?
いやいやいや、旦那様と一緒に寝たことなんて無いですからね!!
「クリスさん!?なんてこと言うんですか!変な誤解されそうな発言はやめてください!!」
「アンジェくらいなら、ちょうどシオン好みの身体かと思っただけなんですが・・・」
今度は全員の目が、上から下まで私の体型を・・・何人かがなんか納得したように頷いているのは、これまでの旦那様の好みの女性を目にしたことがあるとか?そういうこと?
そして、胸を凝視する視線をたどると・・・
「どこ見てるんですか」
「いや・・・別に」
さすがにまずいと思ったのか、私から目をそらす旦那様。
胸、ですか。確かに王女様はまだ真っ平らですけどね。
これは立派な・・・セクハラですよね。
みんなの微妙な空気をキョトンと見ていた王女様ですが、自分の主張は忘れてなかったようです。
「今日はシオンと一緒に寝るっ」
「私は仕事があるから、屋敷に戻るんだ」
「ダリア、シオンの仕事の邪魔はしないと、陛下と約束してますよね?」
「んんんー、じゃあ今日もアンジェと寝るっ」
そう言って、王女様は今度は私にしがみ付きます。王女様の我侭出たー!
実はここ最近、王女様の就寝前にお話相手をしていたら、添い寝をご所望されまして。
最初は侍女が添い寝なんて無理ってことでお断りしていたのですが、どういうわけか侍女頭様の指示があり・・・
まあ、でもそのおかげで王女様に好かれたことは間違いありません。しかもエリーゼと私が仲良しだと知った王女様は、私が一緒の時はエリーゼの入室を許してくれました。
前と同じようにとはいかないみたいですが、少しずつ歩み寄っている王女様とエリーゼさん。帰還まであと少しですものね、本当によかった。
「ダリア、アンジェはこれから出かけるんだ」
「やなのっ!」
「そうですね・・・それなら私達と一緒に屋敷に来ますか?私とシオンは仕事が残っていますので、いい子にしてるなら・・・ですが」
「いいの?」
「ええ。明日の朝、一緒に王宮に戻ればいいでしょう」
クリスさんの申し出に大喜びの王女様。そして出かける準備を手早く整える侍女たち・・・さすがプロだね。
良かった、これで遊びに・・・いえ、飲みに・・・コホン、パーティーに行けます。
別に、お酒が飲みたいからって訳じゃないですよっ、ほら私、幹事の手伝いがあるしっ
そんなわけで、旦那様、クリスさん、王女様と3人で馬車に乗り込みます。
王女様のお供として2人の侍女と2人の護衛が別の馬車に乗り込みました。
侍女2人って少ない気もしますが、お屋敷に行って、就寝、朝には王宮に戻る・・・だけなので、荷物は最小限だからだそうです。まあ、お屋敷にはメイド長も居ますしね。
護衛も2人って少ない気がしますが、クリスさんが一緒に居るからいいんだって。そんなに強いんですかクリスさんって。
そして馬車は街の一角に止まり・・・
「では、ここで失礼いたします」
「ああ」
「気をつけて」
「アンジェ、またね」
旦那様の膝の上で上機嫌の王女様にダダをこねられる事なく、無事に馬車を降りれました。ほっ。
皆様を乗せた馬車をお見送りします・・・ほら、私メイドですしね。
さて、パーティー、パーティー♪
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「あ、リィナ!やっと来た!」
「すみません、エリーゼさん。抜け出すのに少し手間取りました。」
「いいのよ、それより早く!」
はい?
受付で私を待っていたエリーゼさんは私の腕を引っ張って、奥にある小部屋に連れて行きました。
「はい!これ着てね!下着はこれで、靴はこれ。あ、ストッキングは履いちゃダメよ、そのかわり靴下があるから。」
「・・・・・・」
わすれてた。わすれてたよ・・・私のコスプレって・・・
そこに用意されていたのは、某グループを彷彿とさせるミニスカートの制服。
チェックのプリーツスカートがとても可愛いですが・・・
「ほら!ぐずぐずしない!」
「はいっ!」
とりあえず着替え始めますが・・・
王女様の件でエリーゼさんとは親友といっても良いくらい、仲良くなりました。
お仕事の愚痴の言い合いも元の世界の話もコイバナも出来る、いい友達です。
私が帰還したあと、ドイツに遊びに行く約束をしたんですよっ
オクトーバーフェストに行ってみたいな~なんて・・・どんなに早くても3年後ですけどね。
「な、なんでブラウスのボタンがこんなに下なんですかっ」
胸元が開いたブラウス・・・覗き込んだら谷間が見えそうですっ、やだこんなの!
「私、日本語よくわからないんだけど、『エロカワイイ』っていうのを目指したんだって。リィナ、分かる?」
「・・・」
わかりますが、考えたくないです。私にエロカワイさを求めたヤツ、一度なぐる。
「それに大丈夫よ、その下着、見えてもいい物らしいから」
「見えても良くたって、下着は下着です!」
「ほらー、ただでさえ遅刻なんだから、急いで!」
「遅刻?遅刻ってなんですか!?朝まで出入り自由なパーティーでしたよね!?」
とにかく強引なエリーゼさんに------このくらいじゃないと、王女様の侍女は務まらないんでしょうが------急かされて、着替えを終えました。
私が化粧をなおしている間に、エリーゼさんが手早く髪をまとめます・・・というか、この髪型ですか!?
「さあ行きましょう、リィナ」
私は満面の笑みのエリーゼさんに掴まれて、パーティー会場に入ったのでした・・・うううっ。
仮装パーティーのはじまりはじまり~




