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49 王宮侍女の日常


王宮侍女1日目・・・


午前中にクリスさんとシオン様に王宮に連れてこられた私は、午後には黒髪に染められコンタクトを装着させれられて、王女様の前に連れ出されました。


最近練習していなかった淑女の礼で挨拶・・・プルプルしなかったから、自分的には合格点!


そして挨拶した直後にお茶を入れさせられ、もう緊張でドキドキしながら、なんとかクリスさん仕込の『おいしい紅茶』を入れて、王女様に差し出し・・・差し出す時に手が震えてカチャカチャしないように気をつけるのでもう、一杯一杯!


結局、1日目はお茶を入れただけで、王女様のお部屋を退出し、待機室で他の侍女さん達と一緒に控えているだけでした・・・



「でもまあ、紅茶を気に入ってもらったらしく・・・最初の難関は突破しましたぁ」

いま、バームクーヘンを頬張りながら、本日の報告をしています。もぐもぐ。

「お疲れ様、リィナ」

そう言って紅茶を出してくれるエリーゼさん。

そういえば、バームクーヘンはドイツのお菓子でしたね、日本でも大人気ですよ。


ここは王宮のエリーゼさんのお部屋。

使用人棟にある侍女用の1人部屋です。

本来であれば、私も侍女用の部屋をもらうはずなんですが・・・旦那様に却下されました。

理由は云わずと知れた、拉致事件。

もう首謀者捕まったんですよね!?と主張しても、全く聞き届けてもらえず、この前お世話になった客室にまたお世話になることになりました。


「リィナ、部屋に戻る時は私が送っていくから」

「え、いいですよ。一人で帰れます」

「ダメよ。シオン様とクリス様に命令されてますからね!ちゃんと主居棟まで送っていくわ。それに、そのくらい協力させて。」


そう言われてしまうと・・・

「じゃあ、お願いします」

「うん」


エリーゼさんは現在、王女様の命令で王女様のお部屋にいることが出来ないため、私が王女様の様子を伝えてあげようと思い、こうして使用人棟を訪ねたのですが・・・私を客室まで送っていくという余計な手間をかけさせてしまいました。反省。


「エリーゼさん、今度から私がお勤めの日は私の部屋で待ってる?そうしたら報告もしやすいし!」

「ありがとう。でも客室は立ち入るには許可が・・・」

「シオン様に許可を取っておきますから。ね?そうしましょ?」

「・・・うん」


よし、これでエリーゼさんとの連絡方法も確立できそうです。

そして、客室に送っていってもらった私は・・・


「なんで、ウィルさんがいるんですか?」

私の客室の前に、ウィルさんが騎士2名を引き連れて、ニヤニヤ笑って佇んでいました。なんで!?


「そりゃあ、後見してる少女(・・)が、心配だったからに決まってるだろう」

「うっわー、なんてわざとらしい笑顔!」

「・・・言うねぇ、リィナちゃん」

「リィナ?誰ですかそれ?私はアンジェリーナですわ、お・じ・さ・まっ」

ウィルさんの米神がひくひくっとしてます。私が少女だったら、あなたはおじさんですぅー、ふふん。


そして、私とウィルさんのやり取りを笑いつつ見ている騎士さん達。んん?この人たちはきっと事情を知ってるんでしょうね。

私の視線に気づいたのか、ウィルさんが紹介してくれました。


「この二人はクリスの部下だ。アンジェリーナ(・・・・・・・)の警護とこの部屋の警護だと」

「・・・なんでそんな大げさな」

「まあ、そう言うなよ。あの2人の過保護さは今更だろ?」

「はじめまして、リィナ様」

「宜しくお願いいたします」

丁寧にご挨拶してくれた騎士さん達・・・いえ、こちらこそ宜しくお願いします。というか、すみませんっ。


「で?そのコがエリーゼちゃん?」

「は、はい!どうぞよろしくお願いいたします」

エリーゼさんはウィルさんに淑女の礼をしますが・・・そんなに畏まらなくていいと思うけどなー。だってウィルさんだし。


「そうだ、ウィルさん。私の仕事が終わる頃、エリーゼにこの部屋にいてもらおうかと思うんですが、いいですか?私が使用人棟を訪ねると、ここまで送ってもらうことになってしまうようで---」

「なるほど。この2人のどちらかが常にこの部屋の前に居るから、通してもらえばいい」

「はい。宜しくお願いします」

エリーゼさんはこんどは騎士さんにお辞儀します。騎士さん2人はそれに応えるように手を胸に当てて会釈します・・・


なんかみんな、様になっててカッコイイなー。


「じゃあ、また様子見に来るから」

「はい。おやすみなさい、ウィルさん、エリーゼさん」


ウィルさんは私の頭をポンポンとしてから、帰って行きました。

ちなみに、エリーゼさんを使用人棟まで送っていってくれるんですって。なかなか紳士的なところもあるんですね。


えっと、騎士さん二人は、どうするんですか?

え!一人が部屋の前で見張りっ!しかも夜通し!

わわわわわっ、すみません、すみませんっ!

部屋の護衛という意味を深く考えていませんでしたっ


事の重大さに初めて気づいて平謝りする私に、

「「いいんですよ、しっかり特別手当が付くことになってますから」」

と笑顔のままユニゾンで応えてくれた騎士さん二人。

金か・・・それじゃ口出しできないな。お金稼ぎたいのかも知れないし・・・


こ、今度なんかお礼にお菓子でも差し入れますので、どうぞよろしくです、はい。





**************************************




王宮侍女2日目・・・



姫様のご起床前に、侍女は朝礼を行います。

朝礼は、姫様の第一侍女のオリビアさんが仕切ります。

今日の姫様は午前中はお勉強、午後からは刺繍・・・刺繍?


「アンジェ様は刺繍はお得意?」

にこにこ笑顔の先輩侍女さんから、そんなことを聞かれました・・・突っ込みどころ満載です。


アンジェ様?

私に『様』付けなんて聞いてませんよ!?

それに刺繍!?得意ってなに!?私も刺繍するんですか!?


いろいろ呆然としていると、朝礼後にエリーゼさんがこそっと教えてくれました。

ちなみに、エリーゼさんは王女様の部屋には出禁ですが、朝礼には出てます。まだ侍女ですから。


「そもそも侍女になるのは貴族の令嬢だから、基本はみんな『様付け』よ。侍女頭様だけはみんなを呼び捨てにするわ。」

「あの、刺繍ってなんですか?」

「仕事の一つ・・・かな。リィナは侍女の仕事ってどんなものか知ってる?」

「王女様のお世話としか・・・」

「そう、衣装選びと管理、ヘアメイク、あとは常にお供に何人か付くことになるし、その際の荷物持ちも兼ねるわね。王女様の衣装の簡単な手直しもするし、あとは、話し相手とご学友も兼ねる感じ」

「ご学友・・・」

「そう。リィナ、意図せず姫様と年が近くなっちゃったから、一緒に刺繍の勉強をさせられることに・・・ちょっとリィナ、大丈夫?」


ダメです・・・刺繍なんて、小学校の家庭科以来です・・・

そして刺繍に気をとられていた私は、午前中のお勉強の付き添いをすっかり失念しておりました。


【1時間目 歴史】

この国の歴史なんざ知るかー!!的な私に、王女様は疑惑のまなざし・・・

「アンジェ、今まで家庭教師(カヴァネス)は居なかったの?」

「姫様、アンジェは異世界生活が長いのです」

勉強の時間に顔を出した侍女頭(バーバラ)様が、そうフォローしてくれました。

「ふーん、そうなの。それでこの国の歴史は不得意なのね。」

「はい、これから勉強いたします。」

うううっ、初日からおバカ認定・・・・・・かと思ったら!


【2時間目 経済】


「というわけで、需要と供給のバランスが・・・」

という教師の話に明らかに退屈している姫様

「アンジェ、意味わかる?」

「えっとですね、需要と供給はこういう曲線で・・・」

「アンジェが知ってるなら、ここから先はアンジェに教わるわ」

「ええ!?」

は!教師に睨まれてますよ私!

え、えへへへ・・・・とりあえず笑って誤魔化しときます。


なんとか無事に午前中の付き添いを終えた私。

感想。

王女様と一緒に勉強って、明らかに侍女の仕事じゃない気がします。侍女って一体・・・



そして

姫様は昼食を取り、そのあとお昼寝タイム。

その間、私たち侍女は姫様の部屋に詰めている数名を除いて、昼食を兼ねた休憩です。

仲良くなるために、みなさんに紅茶を振舞いました。

いやー、侍女って結構ハードワークですよ。だって姫様に指名されたらすぐに行かなくてはいけません。


姫様はお気に入りの侍女は名指しで指名してくるんです。

着替えはリリーさん、髪を結うのはコーニーさん、爪の手入れはメグさんなどなど。

なのでお気に入りになればなるほど、年中無休24時間体勢なんですって!休暇は無いようなものだとか。みなさんすごいなー。


「アンジェ様はお勉強担当になりそうですわね」

やっぱり?なんとなくそんな気はしてるんですよね。

にこにこ笑顔でみなさん頷いておられます。

王女様付きの侍女さんたちは、私の実年齢と近い人たちが多いです。

まあ、王女様が我侭言った時に、若い子だと対応できないのかもしれませんね。

ただし、みなさん軽く5~10歳は若返ってます。一般的なの?この若返りって?と思ったら、王女様に少しでも合わせる為にだそうです。

侍女の見栄えも王女様の評価になるらしく、みなさん日々努力してるとのことでした。

ちなみに、私の実年齢は侍女頭様とエリーゼさんしか知りません・・・つまり、一番年下に思われてますね、きっと。

お菓子をつまみながら、雑談。主に美容とか美容とか美容とか!・・・ためになります。今度ナンシーにも教えてあげよう。

そして、貴族のお嬢様たちは”うふふ”とか”おほほ”とか、とにかくお上品です。


『リリンリリン』と鈴の音がなりました。

「姫様が起きられたようね」

そう言って、みんな慌しく動き始めます

起きたばかりの姫様を着替えさせる侍女さん。

着替えた姫様の髪を整える侍女さん。

紅茶を入れる侍女さん・・・と思ったら


「紅茶はアンジェが入れて」

ご指名入りました―

「はい、かしこまりました」


一昨日、クリスさんから王女様好みのお茶について、レクチャーを受けています。

苦味がお嫌いらしいので、長く抽出せずにお出しするといいんですって。

「お待たせいたしました。」

「ありがとう」

姫様は一口飲んで頷きます。お気に召したようですね、うんよかった。




そして、刺繍の時間・・・・・・



「ふふふっアンジェ、あなた意外と不器用なのねっ」

「はぁ、すみません姫様」

「アンジェ様には基礎からお教えしましょうね?」

刺繍の先生は"困ったわ"という顔でそうおっしゃいました・・・うううっ、出来ない子でごめんなさい。

結局、サテンステッチという刺し方を教わりました。あー、あったねーこんなの。

不器用な訳ではないので、思い出せばね、それなりにね、出来ると思うのよね、たぶんね。

今日はハンカチにイニシャルを刺繍してみました。

といっても、今の私のイニシャルは『A』

・・・使えない、王宮(ここ)でしか使えない。


「なかなか上手ですよ。次回までにたくさん練習してきて下さいな」

笑顔の先生が恐ろしいことを!練習ですか!

またやるんですか?・・・そうですか。え!明後日!?


その後、姫様は着替えて夕食に行かれて、その間に私たちは食事。

帰ってきた王女様がまた刺繍をするというので、また私も一緒に練習させられてます。


「ねぇアンジェ。(わたくし)、さっき食事の時シオンから、アンジェの事よろしくって言われたわ。だから、刺繍を教えてあげるわね」

「まぁ、ありがとうございます。私などが姫様にお仕え出来るだけで、大変喜ばしく思っております」

「ふふふっ、なんなら私とシオンが結婚した時、アンジェを正式に私の侍女にしてあげてもいいわよ。」


え!?結婚!?


「姫様、結婚なさるのですか?シオン様と?」

「ええ。その予定よ」


そ、そうなんだ・・・でもまあ、ありなのかな?

義理の兄妹だけど、親戚としては遠いしね。

ふーん、そうなんだー、と思っていたら、目の端に第一侍女様が見えました。

ん?

首を振っている

つまり

結婚の予定は・・・無い、と。


・・・まあ、姫様が楽しそうだから、いっか。


「姫様、おめでとうございます」

「ええ。ありがとう」

「お式はさぞ盛大ですばらしいのでしょうね」

「それはそうよ、(わたくし)とシオンの結婚式ですもの」


うふふ、おほほ、と笑いながら、ドレスがどうの、ブーケがどうのと結婚式話が進んで行きます。

私の少々度を越えた『嬉しがらせ(リップサービス)』に、第一侍女(オリビア)様が目に見えて青ざめていますが、知ったことではありません。


まずは姫様と仲良くなるのが先決ですから!







エリーゼも無事、リィナを餌付けできた模様。

ウィルさんの評価が下がったのは、若返った時に笑われたのを根に持ってるからでしょう。。。

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