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45 動揺と安堵のその後に

11/24サブタイトル変更しました。

キン!

カキン!

カン!


という音が響いています。というのも、見習いくん達が少し離れたところで剣を打ち合ってるんです。

型が決まっているのか、危険な感じはしません。

「ほらほら、どうした」

「もっと真面目に打ち合えよー」

見物人さん達は、それでは物足りないようで、野次ってます。


『タクトさん、あれって真剣(ホンモノ)?』

模擬剣(ニセモノ)だよ。音が軽いでしょ』

たしかに、カキンカキンって、軽い音です。


『剣道とはだいぶ違いますよね・・・』

『うん。俺も西洋剣はこっちに来てから教わったから、彼らとそんなに変わらない腕前です』


つまり、タクトさんが教えてるのはあくまで『剣道』で、西洋剣の使い方は召喚後に練習したってことですか。

召喚騎士さんも大変ですね。


カンッ!

キン!


「おいおい、それで騎士になるつもりかぁ」

「ボウヤ達にはまだ早いんじゃないか?」

『あ、そうだ!タクトさん、デザートに抹茶ババロアを作ってきたんです』

『え!マジで!食いたいっ』

「ほらほらどうした、もう息切れしてんのかぁ」

「おい、ちょっと代われよ、オレサマが稽古をつけてやるよ」

『タクトさん、甘い物もお好きなんですか?』

『うん。甘い物も辛い物も好きだよ』

『・・・雑食?』

『ははは、そうかも』

「ちっ、ちょっとやめてください、俺らは型の練習中なんです」

「型の練習なんか役に立たねえよ」

「こっちは実戦経験があるんだぜ?いいから代われよ」


ああ!剣を取り上げられてます!

取り上げた男は、剣の扱いに慣れているようで、見習い君に打ちかかっています。


『・・・タクトさん。そろそろ"見ないフリ"するのも居た堪れないんですが』

『リィナ、俺たち召喚者はこういう時、口を出せないんだよ』

『わかってます、わかってますけど・・・』

そうなのです、自分が巻き込まれていない揉め事には、召喚主や雇用主の許可がない限り口出しできないんです。

もともとは、召喚者を守るための制度です、召喚者が異世界の揉め事に巻き込まれないように制定されているのです。

あの子達もそれを知ってるので、こっちをチラとも見ません。



『タクトさん、誰か止めてくれる人を呼んで来て!』

『リィナをここに一人で置いては行けないし、呼びに行っても、誰も居ないかもしれない。』


あの子たち私の料理、美味しいって言ってくれたのに。

・・・助けてあげたいのに


『・・・野次馬が寄ってきた時点で、緊急用の発信機をONにしておいたから、すぐに誰か来てくれるはずだから』

彼らが傷つく姿を見ていられなくて、うつむいていたら、ぎゅっと握り締めていた手をタクトさんに握られました。

タクトさんを見ると、険しい顔で彼らの揉め事を見ています"我慢して"いるのはタクトさんも同じで・・・



見習い君は、野次馬さんに打ち込まれて、もうボロボロです。

でも歯を食いしばって耐えています

うぅぅっ、誰か!早く来て!



「・・・リィナ?こんなところで何してる?」

「え!」

振り向いたそこには、歩道からこちらに向かって歩いてくる・・・

「旦那様!」

そうだ!ここ、王宮!

思わず立ち上がり、旦那様に駆け寄りました。


「・・・なんだ、あの人だかりは?揉め事か?」

「旦那様、助けてください!」

「何があった?」

「えっと・・・美味しいって言ってた見習い君が、絡まれてるです!」

「・・・は?」


あ、あれ?さっきからずっとタクトさんと日本語で話してたから、上手く異世界語が出てきません!

"何を"と"誰に"が抜けているので、単語を思い出そうと、ワタワタして"えっと、えっと"と言ってたら、タクトさんが旦那様に説明してくれました。ナイスフォローですタクトさん!


「・・・事情は分かった。リィナは助けたいんだな?」

「はい」

コクコク頷きます。ジェスチャーは重要です!

「クリス、止めて来い」

え?クリスさん?・・・居たんですか!

まるで空気のように気配を消していたクリスさんが、旦那様の3メートルほど後ろにたたずんでいました。


「はい、シオン様」

クリスさんはそう言うと、人ごみに向かって歩いて行き、途中で芝生に置かれっぱなしになっていた槍を手に取り・・・


ガンッ

キーーーン

トサッ


ええっと、槍のリーチを利用して、すこし離れた場所から丁度打ち合っている剣に向かって槍を"ガンッ"と振り下ろしたら、"キーン"と両者の剣が弾けて"トサッ"と芝生に落ちたみたいなのですが・・・よく見えませんでしたけど?

というか、どんなタイミングで振り下ろせば、そんなことになるんでしょうかね・・・?

隣でタクトさんが驚いて目と口を開けっ放しにしています。


「・・・さて、事情をお聞きしましょうか?」


さっきまで気配を消していたはずなのに、今ではすっかり“黒”くなったクリスさんが、揉め事を起こした人たちにニッコリ笑ってそういいました。


見習い君達まで青褪めてますね・・・あれ?私ひょっとして、事態を悪化させましたでしょうか・・・?





*******************************




クリスさんによる野次馬さん達への指導および、見習い君達へのお説教が始まりました。

どうやらクリスさん、野次馬さん達を知っているようです。

「またあなたたちですか。今度は何をしたんです?」

「俺らは・・・そこの見習いを鍛えてただけだよ」

「元志願兵の貴方達が、見習い騎士の指導者の資格を取得していると?」

「し、資格は・・・ない、です」

「しかも酒臭いですね・・・酔っているんですか?」

「・・・」

「庭園での飲酒は厳禁と知っていますよね」

「・・・ここで飲んだ訳ではなく」

「飲んでから王宮に来たというわけですか、そうですか。それが言い訳になると、本気で思ってるんですか。」


黒いクリスさんに追い詰められていく野次馬さん達・・・はやく謝っちゃった方がいいですよ!


「そこの見習い3人は、腕立て500回」

「「「ええっ!!」」」

「元志願兵とは云え、一般人にそこまで打ち込まれるのは鍛え方が足りない証拠だ。腕力を付ける為に腕立てしてなさい」

「「「・・・はーい」」」

「おや?500回では不服ですか?」

「「「いえ!すぐに始めます!」」」


鬼だ・・・

散々ヤラれてボロボロになった子にまで腕立てさせるとは・・・!



クリスさんのお説教が続く中、私は・・・不謹慎ですが、飽きてきました。

騒ぎが収まりそうで、ホッとしたというのもありますが。

ちなみに、タクトさんが発信機で呼んだ騎士団の助っ人の人は、王子様2人が対応してくれたことにひたすら恐縮しながらも、忙しいのか早々に戻っていきました・・・。


「そうだ旦那様、お昼食べましたか?」

「いや、食べてない」

「ピクニック中なんですけど、少し召し上がります?・・・食べかけですが」

騒ぎの間に避難させていた(私が旦那様に駆け寄った後、タクトさんが蓋を閉めて、すぐ移動できるように一纏めにしておいてくれたんです。)お弁当たちを旦那様に指し示すと、興味を持ったようで・・・

二人でレジャーシートに座ります。あ、タクトさんは芝生に直座りです。偉い人と同席はしたくないのかな。


幾つか小皿に盛り、フォークと一緒に旦那様へ渡します。

「旦那様ってひょっとして、こんな所で・・・というか外でご飯食べるの初めてですか?」

「・・・ここはさすがに無いが、ガーデンパーティーや茶会なら年に何度かあるな」


ガーデンパーティーとは・・・まあ、王子様ですもんね。


「・・・うまい」

「本当ですか、良かったです」

「全部、リィナが作ったのか?」

「そうですよ。今回はタクトさんのリクエストで日本での日常食がメインですけど、」


日本は和洋中からエスニックまで、日常的に食べられる良い国です。

旦那様はから揚げがお気に入りのようです。昨日から漬け込んでるから、味がしみてて美味しいでしょ?

ハンバーグも気に入りましたか?そうですか。

え?エビフライも?

・・・今度お子様ランチでも作りましょうか?・・・いえ、何でもないです。


「タクトさん、デザート食べる?」

「うん、いただくよ」

「旦那様もどうぞ。抹茶ババロアです。」

「ああ、ありがとう」


おお!?

"ありがとう"ですって。お礼を言われましたよ!

しかも、美味しいものを食べているからか、眉間の皺がありません!

めずらしー

旦那様もせっかく見目麗しいのだから、あとはもうちょっとニコっとすれば良いのにー

そんなことをつらつら考えていたら・・・

「何だ?」

旦那様が訝しげに私を見ます。

「いえ、別に何も」


ええ、何も。

ああ、また皺が・・・やっぱり眉間の皺は標準装備なんですね。



ところで・・・

芝生の上には槍が1本、無造作に置かれています。

剣は見習い君たちが、もう1本の槍はクリスさんが持ってるんですが・・・気になるっ!

「タクトさん、これ触っても良いですか?」

「うん、気をつけてね」

立ち上がって槍に手を伸ばします。気を付けてね、と言われたので気を付けながら、横たわっている槍を立ててみます。

長さは全長2メートル位でしょうか、金属製の柄と、先端に30センチ位のカバーがしてあるので、カバーの下が刃なのでしょうかね。

金属製にしては、とても軽いです。


「これもニセモノ?」

「いや、それはホンモノだよ。訓練中もカバーは外さないから、本物を使うんだ。」

「へぇ~。」

「リィナ、槍が気に入ったのか?」

旦那様が不思議そうにそうに聞いてきます。

「はい」

両手でギュッと持ってニコニコしてたら、不思議そうな顔をした旦那様と怪訝そうな顔をしたタクトさんに「「へえ」」と言われました。


「タクトさんは槍も訓練してるの?」

「いや、俺はしてないよ」

「槍は主に盾兵に持たせる。騎士は剣を使うからな」

旦那様が説明してくれました。

「・・・銃器は使わないんでしたっけ?」

「勿論訓練はある。だが、日本人に銃の扱い方を訓練するわけにはいかないだろう」


まあ銃が撃ててもしょうがないですもんね。日本では銃刀法というものがありますので・・・ん?

「剣はいいんですか?」

「・・・」

「ちょっと!なに目を逸らしてるんですか!」

「・・・」


旦那様が目を逸らしたままなので、タクトさんも苦笑いです。

銃なんて撃てないほうがいいですけど、剣だって使えないほうがいいのでは!?

なんかうやむやにされた気分!





***************************************:




お説教を終えたクリスさんが、こちらに合流しました。

ちなみに見習い君達はまだ腕立て伏せ中。

野次馬さんはクリスさんに怒られ、退場。

ただし、王子様2人が居るため、別の野次馬が発生中・・・みんなチラチラこちらを見ながら、じりじりと輪を狭めて近づいて来ている感じです。


「リィナは何故、槍を持ってるんですか?」

「これ気に入りました。」

「・・・そうですか。これは見習い用の槍なので軽量で扱いやすいでしょう?手解きしてあげましょうか?」

「結構です!」

ここは、きっぱり断ります!

「・・・気に入ったんでしょう?」

「クリスさん強そうなので、結構です!」

大体、クリスさんの性格じゃ、ネチネチネチネチ指導されるに決まってますよ!


「リィナ、いま何か・・・」

「べっ別に何もっ!」

黒い笑顔でじぃーっと見られました。怖い・・・。

「そ、そうだ!クリスさんもお弁当いかがですか!」

「リィナ、明らかに誤魔化してますよね?」

「誤魔化してるな」

旦那様もそこでクリスさんに同意しないでください!

あ、ちなみにタクトさんは、そんな二人の後ろで苦笑い中です。

「・・・た、食べたくないならいいです」

「食べないとは言ってませんよ」

さっさと旦那様の隣に座って、ちゃっかり食べ始めるクリスさん。

「リィナはお料理上手ですね」

にっこり笑ってそう言うクリスさん。

ギャラリーの女性がクリスさんの"素敵な"笑顔にざわつきましたが、私はさっきからクリスさんの"黒い"姿を見ているので、共感は出来ません。

「ありがとうございます、クリスさん」


クリスさんがお茶をみつけて、自分と旦那様用にいれてます。

なんだか、揉め事も収まったし、さっきまでの緊迫感が緩んで、みんなで"のほほん"としてした・・・その時でした。


王子様を見に来た野次馬ギャラリーから、小柄な少年がひとり転げ出てきました。


その少年は手に短剣を持ち、転がった勢いのまま旦那様の方へ・・・!

















王宮内なのに刺客登場!

王子様なのに護衛も居ないよ!


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