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43 ピクニックの準備

11.14誤字訂正しました。

朝です。


私はいま、階段を掃除しています。

王宮からお屋敷に戻って、もう2ヶ月が経とうとしています。


異世界カフェに行った翌々日にはお屋敷に戻ってきました。

『荷物はいいから、急げ!』と言われて馬車に乗せられ、なんだかすごいスピードで戻ってきたんです・・・何かあったんですかね?


お屋敷の皆さんは、私のこと心配してくれていたみたいで、とっても手厚く出迎えてくれました。


そして、帰ってきた翌日からまた階段の手すり磨きに励んでいます。

私が居ない間も誰かがピカピカにしてくれていたようです。


そして最近の新しいお仕事は、ドアノブ磨き。

ドアノブ、すごく汚れてるんですよ。

正確には、汚れているのではなく、金属が変色してるんですけど。

真鍮っていうのかな?金色でピカピカです。

元銀行員の私には5円玉でおなじみです。

でも、5円玉は変色しないはず!5円玉はきっと表面に何かコーティングされているのでしょう!

この手すりもコーティングするか、ステンレスのドアノブにしたらいいのにーと言ったら、怒られました。仕事をサボりたくて言ったわけじゃないんだけどなぁ。


ホコリをとり、専用の布でゴシゴシゴシゴシ・・・


うん、きれいになってきましたよ!


「リィナ、今日はキャリーが休みだから、上もお願いね」

「はい、キーラさん」


キーラさんにお仕事を追加で頼まれました。

キャリーさんというのは、同じメイドの子です。勤務時間帯が合わないことが多くて、まだあまり話したことはありませんが、茶色がかっている黒髪黒目でとても色白です。髪と目の色が私と似ているので、勝手に親近感がわいていますが。


キャリーさんは客室担当(パーラーメイド)なんだそうです。このお屋敷は、来客が少ないので、ハウスメイドの仕事を兼務しているらしいです。

さあ、いま頼まれた『上』の掃除をしましょうか。


『上』。そう、私が今居るフロアーの上の階・・・旦那様とクリスさんの執務室のあるフロアーです。

そのフロアーの掃除は3種。

廊下掃除、ドアノブ磨き、執務室内の掃除。

廊下の掃除は簡単です。

床の廊下はモップで。

絨毯敷きの廊下は粘着素材で出来たローラーでゴミを取った後、掃除機です。

ただし旦那様とクリスさん、お二人の部屋と執務室の前は、掃除機をかけることを伝えてから・・・らしいです。音がうるさいとかですかね?


廊下用のローラーは、幅も広くて楽チンです。

しかもローラーに付いたホコリは専用の布で取れます。

ホコリを取ると、またベトベトしてくるので、とってもエコです。



ローラーを廊下の端まで終わったところで、旦那様とクリスさんに会いました。

これから朝食ですか?

じゃあ、いま掃除機かけてもいいでしょうか?・・・いいですか、よかった!

ニコニコ笑顔のクリスさんに許可を貰ったので、これで遠慮なく掃除機がかけられます。


ちなみに旦那様は一言もしゃべりませんでした。

あの王宮事件のあと、少し仲良くなれたと思っていたのですが、気のせいだったみたいです。

話しかけても『ああ』しか言わないし、ひどい時は顔をそらすほどそっけないです。

がんばって掃除しても、料理作っても、書類作成しても、常に微妙な反応。

それなのに、私指名で仕事追加して来るし、忙しいときに限って大した用もないのに呼び出されるしっ!


ああっ、いけない!愚痴ってしまった!


ちなみに、旦那様のその微妙な反応の後は、かならずクリスさんがフォローしてくれます。

さすがお兄ちゃんですね、弟のフォローお疲れ様です。


ということで、掃除機掃除機っと。よいしょっと。


ひと通り掃除機を掛けたところで、お二人が戻ってきました。

間に合ってよかったですー

「執務室の掃除はどうしますか?」

「・・・今日はいい」

それだけ言うと、旦那様は執務室に入っていかれました。

クリスさんと顔を見合わせて苦笑してしまいました。

嫌われてる訳ではないと思うけど、なんか、そりが合わないというか・・・

「私の執務室も大丈夫です。ところでリィナ」

「はい、なんですかクリスさん」

「明日と明後日、休暇を取ってますね?どこか出かけるんですか?」

「明日は食材の買出しで、明後日はピクニックです」

「そうですか。楽しんできてくださいね」

「はい」


最近は、一人で外出しても平気になりました。

まあ、もともと王宮で危険な目にあったのは"謎の侍女"な訳ですし、"異世界人リィナ"は大した危険は無いんです。

まあ、"シオン様の召喚者"だとバレなければ、ですけど。


さあ、次の掃除っと。





**********************************************





翌日の朝、使用人通用口に集合したのは、私と、同室のアリッサと、料理長のマリーさん。

今日はこの3人でお買い物です。


アリッサは伯爵家にお嫁に行くことが決まっているので、伯爵の妻として恥ずかしくない知識の勉強に余念がありません。

「私の家の爵位は、男爵なんだけど、実際は庶民とほぼ同格の生活してたからさー」

「それで、なんでお料理の勉強を?」

マリーさんの疑問はもっともです。

だって、伯爵家にお嫁に行ったら、3食昼寝つきらしいです。

ちなみに昼寝がついてるのは、夜は夜会や社交行事で遅いかららしいです。

貴婦人たるもの、眠そうにしててはいけないんですって。

ともかく、お嫁に行ったら料理をすることなんて無いはずなのに。

「うん。自分で作ることはないけどね。でもどんな食材をどんな風に調理したのかも分からないっていうのは、ただ与えられた物を食べてるだけになっちゃうでしょ?自分では作れなくても、食べてる物が何かは知っておきたいじゃない?家族の健康まで使用人任せにはしたく無いしね。」


はぁー、なんていい子なんでしょう。

こんなお嫁さんを貰う婚約者殿は幸せですねぇ。


「じゃあ、夜会や夕食会、それと伯爵家で普段食べていそうなメニューがいいわね」

「はい、宜しくお願いします、マリーさん」

「リィナは、何を作ると言ってたかしら」

「お弁当です」

「お弁当?」

「はい。日本食を恋しがっている人が居まして・・・」


そう、この買出し&ピクニックは、タクトさんの"お願い"なのです。

異世界カフェ初日の昼にお願いされたのです。

『日本食を食べさせてくれないか?』と。

『お安い御用です。ただ、こちらの食材が日本と微妙に違うので、もう少し勉強してからで!』と言っておいたのです。

そしてそれから1ヶ月間マリーさんに教わりながら食材の勉強をし、『準備できました。いつにしますか?』とタクトさんに聞いたところ、『騎士団の遠征に出ることになって、帰ってくるのが1ヶ月』とのお返事が……ということで、約束から2ヶ月経ってようやく日本食を作ることになったのです。


タクトさんに食べたいものを聞いたら、卵焼きとか、から揚げとか、煮物類とか・・・なので、もういっそお弁当箱に詰めてピクニックにすることにしたのです。


「なるほどねぇ。でもそうだよね、故郷の味って食べたくなるよねー」

「はい。醤油・みそ・みりんが手に入って、本当に良かったです。」

異世界食材を置いているお店に、日本の調味料が色々ありました。

お米も王宮の料理長から以前貰ったものがあるし!


私たち3人は、途中でお茶をしたりしながら午前中一杯、買い物を楽しんだのでした。


そして午後からはマリーさんによるアリッサへの『貴族向け料理講習会』です。

「ヒラメは痛みやすいから、なかなか輸入されないのだけど、王宮主宰の集まりでは必ず出るわね」

ヒラメは輸入物なんですねー

日本産もあるかしら?

「この薄い魚がですか?どこ食べるんです?」

おおぅっ!なるほど、初めて見るとそういう感想ですか?

「私もあまり捌いた経験は無いのよ。ぶつ切りにして煮込む方法と、スライスの方法があるのだけど・・・リィナ、詳しかったりする?」

「・・・5枚に下ろせばいいですか?久しぶりなんで、期待しないでくださいね?」


そう、ひらめは5枚に下ろすのです。

中骨にそって切れ目を入れて、身をはがして、縁側の方から切れ目を入れて、・・・よいしょっと。


「こーんな感じですね」

「すごーい、リィナ本当にお料理できるんだねー」


その突っ込みはどうなの?アリッサちゃん?


講習会の傍ら、私は明日のお弁当の仕込みをします。

お寿司屋さんの出汁巻き玉子が食べたいと言ったタクトさん。

甘い玉子焼きは私も大好きです。

なので、玉出汁を作ります!

作り方は出汁、醤油、塩、砂糖を加熱して、終了。


次は、から揚げの準備です。

とりの腿肉を・・・ちなみにこれ、鶏ではないです。この前食べたクッキーという鳥です。

鶏もいることはいるらしいんですけど、まだ見たことありません。

まあ、とにかく、ぶつ切りにした肉に醤油と酒と生姜を入れて、よく揉みます。

そして明日まで漬けておきます。


さあ、次は・・・煮物類を作りましょうか。

実は先日、大根をマリーさんから分けてもらったので、屋上で切干大根を作ってみたんです!

この国は日本と違って空気が乾燥しているので、それなりに出来ました。

コレを使おうかと!


「な、なにそれ、リィナ」

「茶色い・・・」


うん、まあ。茶色いです。醤油で煮てるからね。

アリッサもマリーさんも引き気味デス・・・おいしいんだけどなー。


さて次はお弁当用のミニハンバーグを。

玉葱、ひき肉、パン粉、ナツメグ、卵、牛乳・・・

練って、形を整えて、焼いてしまいます。

明日、ソースで煮込んで、煮込みハンバーグにして持っていく予定。


ご飯はどうしよう。

白米を持っていくか、おにぎりにするか?

うーん・・・


そうだ!

デザートも作りましょう!

抹茶ババロアなんてどうかしら?

ああ、でも、きな粉とか黒蜜は無いだろうなー・・・・・・別になくてもいいか。


こうして、夜までずっと、調理場の片隅で準備を続けたのでした。









玉出汁のレシピです。(卵6個分)

出汁70cc

淡口小さじ1/4

塩小さじ1/3

砂糖大匙2と1/2


美味しいですよ♪

出汁は昆布と鰹節でとったほうが良いです。

市販の顆粒だしを使うときは、このレシピだと塩分が強くなるので注意!


次回からまた王宮です。

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