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41 情報交換してみよう

『』内の会話は日本語です。

『君がリィナさん?はじめまして』


ええっと・・・

『はじめまして・・・』


日本語で返事したら、ニコッと笑われました・・・

彼、日本人ですよね。

黒髪黒目です。平たい顔です。同年代か、少し年上かもしれません。


なんで私を知ってるんでしょうか・・・?


私が首をかしげている間に、飲み物を取りに行ってしまいました・・・話しかけそこなった


「リィナ、タクトを知ってるの?」

アベルさんが聞いてきます・・・が、

「いえ、知りませんし、初対面なんですが・・・」

どういうことでしょうか。



飲み物を取って戻ってきたタクトさんは、今度は皆さんが話しはじめて・・・また話しかけそこなった

「タクト、いつ帰ってきたんだい?」

「昨日の夜だよ。」

「おつかれー」

「ホントに疲れた。何事も無く戻ってこれてよかったよ、マジで。」


そう言ってため息をつく・・・タクトさん。


「ところでタクト。タクトはリィナを知ってたの?」

セリーヌさんが聞いてくれた!


「ああ、さっき副団長に聞いたんだ。カフェ(ここ)に日本人が来てるって・・・俺、騎士団に勤めてるんだ」


前半はセリーヌさんに向かって、後半は私に向かってそう言ったタクトさん。

副団長って誰ですか?え?アンドリューさんって人?・・・私の知り合いではないですね。


「タクトが一番、異世界っぽい仕事だよなー騎士だもんなー」

パオロさんがストローをくわえたまま、そう言います。

「俺なんて、異世界に来てまで事務職だぜ?」

私なんて、メイドですが・・・


「私はどうして料理人なんでしょうかね・・・」

私はどうしてメイドなんでしょうかね・・・


「執事とか侍女とか、異世界っぽくない?」

エリーゼさんは、不満がないようです。

私もメイドに不満なわけではないのですが・・・


「イギリスには一応、執事養成学校なんて物もあったよ。別に"異世界だから執事"って感じではないな」

ユージーンさんは、やや不満そう。

「あらあら」

セリーヌさんは・・・どうでもいいみたいですね。


それより聞いてみたいことがあります。

「タクトさんは、騎士なのですか?」

「うん」

「それって、騎士を召喚したら、タクトさんが来たってことですか?」

「そうらしいね」

「・・・日本では一体何を?」


騎士って、剣とか使いますよね!?

日本で一体何をしていた人なんでしょうね!?

「剣道を子供の頃からやっていたからだと思う。仕事は消防士でした」


ほほーう、なるほど。剣道男子だったんですかー。納得!


「リィナさんは、日本で何を?」

「私は、銀行員です。」

「銀行員・・・?なんでメイドに?」


それは、私が一番知りたいです!!





*************************************




しばらく7人で雑談をしていたら、続々と人が入ってきました・・・お昼だからですかね。

アベルさんは、お昼から仕事があるそうで、お城へ戻るそうです。

私はどうしようかなー

お迎えが来るまで、居たほうがいいんだよね、きっと。

勝手に動くと、また怒られそうだしね。


「リィナさん、昼飯食べに行こうよ」

「タクトさんは、お仕事は大丈夫なのですか?」

「今日は非番だから」


ということで、タクトさんとご飯を食べに行くことになりました。

ちなみに、王宮4人組はお弁当持参でした。持ち込み可なんですねー。わたしも今度持ってこようっと。


異世界カフェを出て、お店を探します。

そして、店を出たとたん、日本語を話すタクトさん。

『何食べよっか?』

『タクトさん、おすすめのお店はありますか?』

『うーん、正直おすすめは無いなぁ・・・』

『そ、そうですか。』

『日本料理もどきの店はあるけど、美味くは無いよ』

『そうなんですかぁ』

『そうだ、煮込み料理の店は美味かった!そこ行こうか?』


はいっ!出来る限り美味しいお店でお願いしますっ!




連れてってもらったお店は、高級店と大衆食堂の間くらいの、レストランでした。

案内された席に座ると、店員さんがメニューを持ってきてくれました。

ちなみに、お水は出てきません。別料金のようです。

「ランチのおすすめは、クッキーとアイスのトマレ煮です」


なんか、変なこと言われました・・・

クッキーとアイスを、なにで煮たって?

思わず顔をしかめてると、タクトさんが苦笑しながら教えてくれました。

『クッキーは鳥の種類で、アイスはキノコの名前で、トマレは、トマトみたいな酸味のある野菜だよ』


そういえば、私、お屋敷では食材の名前に困りませんでした。それって、マリーさんをはじめキッチンメイドの方々が、日本語に合わせてくれてたんですかね・・・

それとも、これらはお屋敷では出ない食材なんでしょうか?


ともかく、鳥肉とキノコをトマトで煮込んだ料理ってことですよね。

『せっかくなので、そのおすすめを食べてみます』

『そう。じゃあ俺もそれにしよう。』


店員さんを呼んで2人前の料理とパンとサラダを注文します・・・タクトさんが。

それにしてもタクトさんは異世界語がペラペラですね・・・どのくらいこちらに居るんでしょう?

『俺?こっちに来てもうじき丸3年だよ』

『そんなに!じゃあ、もうじき帰国ですか?』

『俺は5年契約だから、あと丸2年は確実に居ることに・・・』


なんですって!?5年契約ですと!?

『王宮勤務者は5年契約って決まってるらしいよ』

と教えてくれました。


『リィナさんは、メイドだからサービス業扱いなんだろうね。サービス業や製造業は3年。』

『へぇー、そうなんですねー。・・・私、異世界(こちら)に来てからお屋敷の人以外と接することが、あまり無かったから、知らないことばっかりで・・・』

『俺も来た当初はそんなもんだったよ。26だったしなぁ』

あれ?さらっと年齢の話ですか?

来た当初26才ということは

『タクトさんは28才ですか?』

『いや、29才・・・3月生まれなんだ。』

『いま4月ですもんね。もう新年から3ヶ月も過ぎたんですねぇ』

『新年から?・・・そうか、ひょっとしてこの国の暦をまだ知らないのかな?』

『暦?カレンダーですか?』

カレンダーなら見たことありますよ。大体1ヶ月30日前後で、地球の暦と似てましたけど・・・

『うん。地球と合わせるために、1年間を365日にしてあるそうだけど、1年の始まりは1月じゃないんだ。向こうの11月が新年なんだよ。』

『そうなんですか?私、12月30日に呼ばれたんですけど・・・つまり、その前の月が新年だったという事なんですね』

そっかー。だから年明けても何にもイベントが無かったのかしら・・・一人で勝手に初日の出を拝んでしまった。

『うん。ニューイヤーは、結構あちこちでパーティーがあって、華やかだよ。来年は一緒に行けるといいね』

『はい。ぜひ連れてって下さい。』

『えっと話はそれたけど、俺は29才で・・・』

ああ、なるほど、聞いちゃいますか?では教えて進ぜよう。

『私は、1月生まれの30才ですよ。』

ひとつお姉さんです。

『そうなんだ。・・・若く見られない?』

『日本に居たときは年相応に見られてたとは思うんですけど・・・こちらに来てからは若く見られますねぇ』


タクトさんは"いや日本でも若くみられるでしょ"とブツブツ言ってますが・・・とりあえず無視。


あっ、ご飯が来ました!


私が想像していたのは鶏肉のトマト煮込み・・・けど、届いたお料理は黄色でした。

でもおいしそうな匂い~!

ニワトリじゃ無いんだよね、どんな味だろう。


「パンはお代わり自由ですので、お申し付け下さい」

そう言って、店員さんは去っていきます。このパンも焼きたてのようですよ!

『いただきまーす』

まずはこの黄色い煮込みを一口・・・

『美味しい!』

『そう、よかった』


黄色い物体は本当にトマトのようなお味で、鳥肉もやわらかく、脂が乗っててジューシー。

一緒に煮込んであるキノコは、その二つの旨みを吸い込んでまた絶妙な・・・


これは、ハマリそうです!

いやー、いい店教えてもらった!



『そういえば、タクトさん。騎士ってどんな仕事なんですか?』

『・・・ほぼ、訓練』


えっと・・・


『あと見回り、警備、護衛・・・警察と警備員とSPを合わせた様な感じかな。』

『ふーん。危険な仕事だったりはしないんですか?』

『まあ、なんか事件が起きたときは危険だけど、すこしでも危険を避けるために、訓練してるんだよ』


なるほど、すごいですね。


『リィナさんは』

『リィナでいいですよ。みんなそう呼びますから。』

『じゃあ、俺もタクトで。リィナはどんな仕事してるの?』

『ほぼ、掃除です。』

『・・・そう。本当にメイドなんだ』


メイドといいつつ実は・・・というのを期待されていたのでしょうか。残念ながら、メイドです。

『掃除と、料理と、あとたまに旦那様のお仕事の資料作りをしたり・・・』

『料理と資料作りも・・・するの?』

『はい、最近はキッチンメイドの皆さんに混じって、まかない作りのお手伝いをしてます』

『・・・リィナ』

『はい?』

『折り入って頼みたいことがあるんだけど』


タクトさんは、ものすごく真面目な顔で、意外なことを言い出しました。


まさか、このお願いがあんなことに発展するとは、この時は私もタクトさんも、想像すらできませんでした・・・










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