40 召喚者たちと話そう
話数を間違えてました
私はいま、異世界カフェにいます。
「リィナさん、ここで好きな飲み物を取ってください」
アベルさんが、丁寧にシステムを教えてくれています。いい人だなー
異世界カフェのシステムは、まず受付でマスターに登録カードと身分証明書を提示。
中に入ってすぐの所に、ドリンクバーがあります。
ドリンクバーといっても、ベンダーがあるわけではなく、保温・保冷の効くピッチャーに入っています。こんなところも節電ですか。良いことですね。ちなみに炭酸飲料はなさそうですね。
そして、やはりというか、なんというか、紅茶の種類は豊富みたいです。
ドリンクバーの隣には、卓上用に置ける土台の付いた旗があります。
「この旗はテーブルに置くんです。ここでの標準語は英語なので、旗が置いていないテーブルは英語で話をしています。英語以外を話しているテーブルは、その言語の旗を置くことになってるんですよ」
なるほど。フランス語だったらフランスの旗。スペイン語だったらスペインの旗を立てるということね。あれ?日本の旗は無いんでしょうか・・・?まあ、白い紙と赤ペンがあれば作れますけどね。
というか、日本人はいるんでしょうか!?
店内を見渡してみると、中央の大きなテーブルに、4人ほど座ってお話しています。
その内の一人の女性が、アベルさんに手を振っています。
「セリーヌ!リィナさん、行きましょう」
ついに異世界カフェデビューですっ
ああ、どきどきします。
第一印象が大事ですからね!えがお笑顔っと♪
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「リィナ、彼女はセリーヌ。私と同じフランス人の召喚者です」
「はじめまして、リィナです。日本人です」
「まあ!はじめまして。セリーヌです。」
セリーヌさんは、金髪に茶色の目をした、美人さんです。同い年くらいかな?
「リィナはここに来るの初めてなんだ。」
アベルさんが、そう紹介してくれます。
「宜しくお願いします」
このテーブルに居た、他の3名も順番にお名前を聞きます。
「俺はパオロ。イタリア人だよ」
パオロさんは焦げ茶色の髪に焦げ茶色の目の・・・軟派そうな若いお兄ちゃんです。
「私はユージーン。イギリス人です」
ユージーンさんは黒髪黒目のイギリス紳士。彼は少し年上かも?
「私はエリーゼ。ドイツ人よ」
エリーゼさんは薄茶色の髪に青い目です。若いっ。20代前半でしょうね。
どうぞよろしくー、リィナですー。
仲良くしてください。
「セリーヌとエリーゼは、王宮で侍女を、ユージーンは執事をしているんだよ」
パオロさんが、教えてくれます。
まあ!侍女さんですか!
「ふふ、私は王妃様に、エリーゼは王女様に御仕えしているのよ。」
セリーヌさんが、素敵な微笑みで教えてくれます。
「そうなんですかー。
王妃様と王女様ってことは、ウチの旦那様のお母様と義理の妹様ですよね。なんだか親しみがもてますね。
「ユージーンさんはどなたに御仕えしているんですか?」
「国王陛下だよ。」
ああ、あの陛下ですか・・・へぇ。
しかし、イギリス紳士の執事って、似合いますね!
なんだかドキドキしますっ。
「パオロは管理局に勤めているんだよ」
アベルさんが、そう教えてくれます。
「リィナ、あの方達に何かされたら、すぐに頼るといいよ」
・・・アベルさん。あの方達は、基本的に良い人ですよ?そんな悪人認定しないであげてくださいな。
それに、さっきから急に呼び捨てになりましたね、まあそれは別に良いですけど。
でもなるほど、ここに居る皆さんは、王宮勤務組なわけですね。
「リィナさんは?」
おっとりとした話し方で、セリーヌさんが聞いてくれました。かわいいなぁセリーヌさん。フランス人形みたい。
「リィナでいいですよ。私はメイドをしています」
「メイド・・・?どちらで?」
「公爵家です」
一瞬、間があいたあと・・・
ガタタンッッ
皆、立ち上がりました・・・
あ、あれ?なにこの反応。
「こ、こうしゃく、け」
ユージーンさん?なんで青ざめてるんですか?
「リィナ、お屋敷に遊びに行っても良い?ねえ、良いわよね!良いって言ってっ!」
エリーゼさんは逆に顔が赤いですね。
「メイド!?メイドを召喚!?」
パオロさん、驚くのはそこですか?
ああ、でも初対面時のウィルさんも、驚いてましたっけ。
「あらあら・・・みんな、はしたないわよ」
セリーヌさんだけは座ってます。おっとりしてます。きっとこういう性格なんですね。
皆さんの反応に、アベルさんも困惑気味です。
ええっと、説明プリーズ。
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ようやく落ち着いた皆さんにお話を伺いました。
要するに、ウチの旦那様たちが有名人過ぎってことでした。
「・・・どんなに頑張っても『クリスの紅茶の方が美味い』って言われるんだ」
「それは王様に?・・・そうですか、ご愁傷様です」
半泣きのユージーンさんを慰めます。確かにクリスさんの紅茶は美味しいです。
「リィナ・・・飲んだことあるんですか?」
「はい。入れ方も教わってます・・・一緒に習います?」
「ふっ、ううっ、ぜ、ひ。グスッ。是非お願いしますっ」
ああー、半泣きどころか本気で泣き出しちゃいましたよ。イギリス紳士のプライドが紅茶の味でここまでズタズタに・・・おそろしい。
「召喚してまでメイドを雇うって、なに考えて・・・」
今度はパオロさんです。パオロさんによると、召喚は手間もお金もかかるので、無駄なことこの上ないそうです。
「・・・普通に雇おうとしたら、王太子様に召喚者にしろと言われたそうです」
メイド長が教えてくれました。
「ああ、あのバカなら言いそうだ・・・公爵も大変だな」
パオロさん、ため息をついてます。なんか不敬な発言がありましたが、聞かなかったことにしましょう。スルー力は大事です。
「それで、いつお屋敷に行ってもいいかしら?」
「えっと・・・すみません。人を呼んでいいのか分からないので、確認してみます」
「そうなの?使用人用の部屋なら良いんじゃないの?」
「私は3人部屋ですし、談話室はありますが、使用人以外の人間を見かけたことがないので・・・」
「そうなの、厳しいのね」
「エリーゼ、王宮の使用人棟と一緒にしてはだめよ?王宮だって主居棟に入れる人間は限られているでしょう?公爵様は騎士団の責任者なのだから、ご自分のお屋敷に隙をみせるわけにはいかないのではないのかしら」
んんーと
「ウチの旦那様は、責任者なんですか?騎士団の?」
「そうよ。リィナ、知らなかったの?」
知りませんねぇ。
まあ、私はメイドですから、旦那様の仕事を知らなくても問題は無いんですよね。
そう言うと、なんか皆さん納得してくれました・・・アベルさん以外は。
なんか不満そうなアベルさん・・・に、セリーヌさんが言います。
「アベル、リィナさんのお勤め先は、国の重要ポストについている方のお屋敷なのよ?」
「だからと言って、リィナは召喚者でしょう?召喚主の説明義務が・・・」
「説明義務を怠っているわけではないと思うわ。むしろ、リィナさんを守るために、必要最低限の情報を、その都度伝えるようにしているんじゃないかしら?」
わたしも、そう思います。
ウィルさんも言ってましたが、過保護なんですよ、旦那様たちは。
セリーヌさんの話を、ユージーンさんが引き継ぎます。
「アベル、私達のように王宮勤めの者たちは、職業によって立入禁止区域が分かれていて、とても分かりやすく情報規制されているが、公爵のお屋敷では、そうはいかないだろう?特にリィナはメイドなのだから、公爵のプライベートルームに入ることもあるはずだ」
ありますねぇ。
ソファで驚くような目に合いましたよ。
そして『えっ!プライベートルーム!』とエリーゼさんが目を輝かせています・・・なるほど、第一王子様狙いですか?
「知っていれば防げる事よりも、知らないからこそ安全な事の方が、あきらかに多いだろうね」
「そうそう。特に俺たち異世界人はさ、元の世界に戻ることが前提な訳だし」
「戻った後、知識を利用されたりするのは真っ平よね」
それを聞いたアベルさん。ちょっと反省したみたいです。
「・・・リィナの安全の為。そうですね、全て知っていれば良いって訳じゃないですよね」
アベルさんがそう呟いてます。
まあ、そうは言っても『拉致されるかも』とか『護衛つけてるよ』とか、そういう事は言っておいてほしいですけどねー。
それにしても、さすが皆さん。王宮で働いているだけあって、情報の怖さをよくわかっていらっしゃる。
ああ、理解者がいるっていいなぁ。
「と、ところでリィナ。公爵のプライベートルームは・・・」
「・・・業務上知り得た事は、お話できません」
「ええー。じゃあ、好きな食べ物くらいなら・・・一緒にご飯を食べることくらいあったでしょ?」
「・・・旦那様は、眉間の皺が標準装備なので、好き嫌いがよくわかりません」
「「「「・・・たしかに」」」」
まあ見事にハモりましたよ。さすが皆さん王宮勤めですねぇ。ウチの旦那様のしかめっ面も、よくご存知のようです。
カランコロン
ドアベルの音がして、みんな振り返ります。
黒髪黒目の、アジア人男性がご来店です。
「ああ、リィナ。彼は・・・」
アベルさんが説明するよりも早く、その男性が近づいてきます
『君がリィナさん?はじめまして』
ええっと・・・
日本語、ですよ。
ふぅ、やれやれー、やっと日本人登場です。
彼の素性&なぜリィナを知っているのかは、次回!




