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38 旦那様の反省1

シオン視点です。

2話に分けましたので、続きは今夜!


作中の召喚についての記述ですが、作者に専門的知識はありません。

11.15誤字・脱字訂正およびそれに伴う追記をしました。話には影響はありません。



リィナが拉致された会議の日から、2日後の朝

シオンはいつもどおり、王宮の執務室に居た



はぁ・・・

何度目になるのかわからない溜息をついた。

寝不足で頭が回らない。やっぱり昨日は王宮に泊まらずに、屋敷に帰るんだった。


いつの頃からか、王宮では眠れなくなった。

王宮(ここ)に住んでいた時は眠れていたはずなのだが、やはり寝ている間に厄介ごとが多いから、それを脳が記憶してしまっていて、眠りを拒否しているのかもしれない。


ただ昨日は色々と・・・クリスからの説教と反省することがあったため、屋敷に帰って寝ると言い出せなかった。


「あいかわらず、寝てないんですか?」

あくびをかみ殺していたら、クリスに指摘された。


「ああ」

「困りましたね。騎士団の責任者(・・・)ともあろう人が、自分の屋敷でないと眠れないとは」

「・・・屋敷でないと眠れないんじゃない、王宮だと眠れないんだ」

「またそんな屁理屈を。騎士団の本部は王宮にあるんだ、同じことだろう?」

「・・・」

反論できない。


「せめて眠れない原因がわかれば、解決しようもあるんですがね」

「・・・2日や3日、寝なくても平気だ」

「だったら、眠そうにするな。あくびも禁止だ」

「・・・」

反論できない・・・


言葉に詰まっていたら、ウィルの部下が、一昨日の拉致監禁事件の経過報告を持ってきた。



***************************************



リィナを危険な目にあわせてしまった日の夜は、王宮へとどまった。

連中が何か仕掛けてくるなら、夜の方が危険だから。

クリスと二人で、交代でリィナの部屋の見張りをしていた。もちろん、本人には内緒で。

俺の場合、どうせ自分の部屋に居ても眠れないし。

そして昨日の朝、屋敷へ戻り仮眠を取って、午後王宮へ来たとたん、リィナの部屋につけていた女官が執務室へ駆け込んできた。

「お嬢様方が、お戻りにならないんです!」

クリスがウィルに連絡を取っている間、女官から話しを聞く。


ナンシーがリィナを連れ出した、だと?


「シオン様、ウィルがリィナに護衛をつけているそうです。すぐに場所を特定できそうです」


しばらくして、主居棟を出てから西翼の図書館に向かったことが分かった。その後、料理人たちと厨房に移動・・・?

なぜ厨房?

「私は厨房に向かいます、シオン様は念のため図書館へ」

「ああ、わかった」

とにかく、無事でいればいい。まずはその確認だ。


図書館へ行き、司書にリィナの事を聞いてみる。

今日は変装していないため、『髪が短めの・・・』と言ったら、2時間以上も前に出て行ったといわれた

じゃあ、やっぱり厨房に居るのか?

「料理人さんたちに、連れて行かれたようですよ?」

「そうか、すまない、邪魔をしたな」


なぜ厨房にと思いながらも、クリスが迎えに行ったし、厨房からだとおそらくもう戻っているだろうと思い、直接リィナの客室へ行く。


ノックをしようかと思ったら、微かにクリスの声が漏れ聞こえててきたので、ノックせずにそのまま開ける

「クリス居るか?リィナは見つか・・・・・・」


ドアのすぐ側で、クリスとリィナが、抱き合っていた

「・・・」

いや、ちがうか?抱き合って(・・・・・)はいない。クリスがリィナを抱きしめている。

「・・・」


二人も無言・・・リィナは俺とクリスを交互に見てる・・・

えっと、これがどういう状況かが、わからない。

この二人は、そんなに親密な関係だったか?


「・・・・・・あ、出直す・・・か?」

直視しててもいいのか判断がつかず、微妙に目線をそらして、そう言ってみる

「・・・出直さなくていい」

クリスに即答された。

「えっと、ちなみに何を・・・」

なぜクリスがリィナを抱きしめている?

そうだ、なぜ昨日のクリスは、リィナを助け出すときに、あんなに余裕がなかったんだろう。

ああ、なんか、グルグルする。

リィナは俺の召喚者で。

クリスは、リィナが好きなんだろうか・・・・・・


「何を?・・・そんなの、リィナに嫌がらせをしているに決まってるじゃないですか」


は?

・・・はぁ?

い、嫌がらせ?

いつものように腹黒い笑顔でそう言い切ったクリス。

しばし、絶句してしまう。


「そ、そうか。とりあえずリィナを離してやれ。ジタバタしてるから。」

「そうですね、このくらいにしておきましょうか」

そう言って、クリスはリィナを離す。

リィナは"むー"と唸りながら、クリスを見てる。


・・・なんか、もやもやする。

もやもや?・・・ムカムカ?


「リィナ」

「はいぃ」

「なぜ部屋を出た」


自分が思っていたよりも、不機嫌な声が出た。

リィナは斜め下に俯いていて、目を合わせようとしない。

「言えないような理由があるのか?」

目を背けられて、なんかムカムカする。お前は俺の召喚者だろう!?



気づいたら、リィナを抱きしめていた。


リィナは決して小柄な方ではないが、それでも俺の腕の中にすっぽり入る。

ああ、やっぱり、やわらかい。

それになんか、ホッとする。すこしムカムカが治まった。


リィナは、なんか騒いでるが、適当に返事をしていたら「は、離してくださっ」と聞こえた。

ああ、でもクリスが言ってたな"嫌がらせ"で抱きしめてるって。だったら、この際そういう事にして・・・

「理由を話したら、離す」

「りっりゆう!?」

「うん」

「ひっ、ひまだったから!暇だったんですっっ」


暇だったから、部屋を出たのか?昨日あんなに危険な目に遭ったのに?

なんだか、またムカムカする。


「・・・お前は自分が狙われていたことを忘れたのか?」

「へ?私まだそんなに危険なんですか?」


うっ・・・

たぶん、リィナには悪意はない。

純粋に、疑問を口にしただけだろう。

だが、危険な目にあわせたまま、原因を取り除けていない俺たちには、その言葉はキツイ一撃で。


「ハァ・・・もう少しだけ、おとなしくしててくれ」

つい、ため息も一緒に出てしまった。



「あの・・・旦那様、理由も話しましたし、そろそろ離してくれませんか」

「ああ」


正直なところ、リィナの温もりが心地よくて、離したくなかった。


「あの!」

「・・・」

それに、やっぱり良いにおいがする。

思わず首筋に顔をうずめてしまった


「ちょっ・・・離してください!」


リィナはジタバタしている。ジタバタするのを宥めようとおもって、背中を撫でようと触れたら、悲鳴を上げられた。

「ひぁっ!セ、セクハラで訴えますよ!?」


セクハラ?訴える?

「・・・誰に?」

少し意地悪だが、そう聞き返してみる。リィナは少し考えたあと答えた。


「・・・管理局、とか?」


管理局という言葉を聴いて、リィナを離した。

・・・たしかに、抱きしめるとかセクハラだし。

メイド抱きしめるとか・・・

ええ!?

なんで抱きしめたんだろう?

俺、一体何してるんだろう?


ウィルがなんか言ってるが、正直、頭に入ってこなかった。


少し、冷静に考えてみる。

リィナが、クリスに抱きしめられていて・・・

なんだか、もやもやして・・・いや、ムカムカだったか?

それでなぜリィナを抱きしめたんだろう?

自分でも理解できない。

そう思ったところで、急にウィルの声が耳に届いた


「なんで?召喚主が召喚者を抱きしめてただけだろ?」


その言葉に、愕然とした。

召喚の技術訓練の際、繰り返し教官に言われた言葉。

『召喚は空間のひずみを人工的に作り出し、それを特殊な模様で固定して、異世界をつなぐ行為です。ひずみを起こすのは召喚主自身の存在が核になります。つまり召喚される先は召喚主と波長の合う場所と限定されます、そして召喚者は』


召喚者は・・・


『召喚者は、召喚主と波長の合う者と限定されます。でなければ、ひずみを超えられません』


だから、召喚者は・・・


『条件付けを3つつけるのは、無条件で召喚した場合、召喚主と波長が合うという一点だけで召喚されてしまう為、異世界協定の柱となっている"人材の相互活用"にはならなくなってしまうからです』


波長が合う・・・つまり、考え方や感覚がよく似ているという事。

同姓の召喚者の場合、帰還した後も友人として手紙のやり取りをしているという話を聞くぐらいは、波長が合うらしい。


実際、リィナに仕事を・・・会議の資料作成を手伝わせたら、手直しが要らないくらいの資料を作ってきた。

最低限の指示だけで、こちらの思惑を汲んだ資料を作れるというのは、考え方が似ているからこそだったのか。

あまりにもこちらの期待以上の仕事ぶりだった為、クリスも驚いたようで、今後こちらの仕事を組み込む事を想定して、メイド長(キーラ)とリィナのメイド仕事の割り振りを見直しているようだ。


クリスがリィナを抱きしめていたのを見て、なんだかもやもやしたのも。

さっきリィナを抱きしめたとき、なんだかホッとしたのも。

召喚主と召喚者の『波長』の問題、なのか。


なんか原因が分かって、少し安心した。

うん、大丈夫だ。原因が分かれば、それなりに対処できる。よかった。

私は、自分の行動が理解できないなんてことが、許される立場じゃない。しっかりしなくては。


そう、そもそもメイドの不足を召喚者で補うと決めたときに、『言葉の習得』『仕事をこなせる』『異世界および屋敷に馴染める』というのを重要視した訳だし、この短期間での言葉の習得と、勤勉さと優秀さが垣間見える仕事ぶりは文句の付けようがない。波長が合うというのは、こういう事なんだな・・・


その時、リィナの声が聞こえた

「ナンシーさん!」

そう言って扉まで駆けていくリィナ。

「ナンシーさんっ、愛してますっ!」

「えええっ!?」



リィナ、お前、短期間で馴染みすぎじゃないか?・・・それはさすがに、想定外だ。













つづきます


前書きにも記載しましたが、作中の召喚についての記述ですが、作者に専門的知識はありません。矛盾点などあるかもしれませんが、深く追求しないでいただけるとありがたいです。

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