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27 会議中1

ワゴンを押して、旦那様と一緒に会議室に入ります。


って、ここが会議室ですかー

なんだか想像と違いました。

というか、想像を遥かに超えてますよ、これ。


大きな扉を入ったら、そこは部屋ではなくまた廊下でした。たくさんあるドアの中の一つに入りました。



ここはどうやら旦那様専用ブースのようです。

この会議室は2階建てみたいで、1階には議長席みたいな3人掛けの長テーブルと椅子が壇上にあり、壇下にはそれに向かい合うような形で曲線を描いた長い机がたくさん並んでいます。つまり一階は良くある感じの会議場ですね。


私と旦那様が入った入り口は、2階でした。2階は例えるならオペラ座などのボックス席のような感じです。

いくつものブースがぐるっとあり、部屋の大きさもまちまちみたいです。

廊下に出なければ各ブースの行き来はできませんが、衝立があるわけではないので、隣のブースもよく見えます。


このブースは、広さ的には6畳間ぐらいでしょうか。大きな執務机と大きな椅子・・・椅子の方は大きいと表現するより、立派な椅子というか、偉そうな椅子というか・・・

その執務机の後方には、テーブルと椅子2脚が置かれていて、簡易応接セットのようになっています。

更にその脇に簡単な水場が用意されています。


ドアの脇のスペースに小さな流し台と水差しがあります。流し台の脇のスペースが、ワゴンの定位置ですかね。よいしょっと。


一応、すぐにお茶が出せるように準備しておかなきゃね。

このワゴン、お湯の入ったポットからの熱で、カップも温まる仕組みになっていて、とても便利です。

でもそれではお湯が冷めるのでは?と思ったら、それはちゃんと保温できるだけの仕組みが組まれているんですって。


ポットよし、茶葉よし、カップよし。ついでにお抹茶もよし。

ところで私は、ここで立っていればいいんですかね?

こっそり、見える範囲にあるブースを覗いてみます・・・立ってる人はいるけど、ほぼ男性ですね。

やっぱり、クリスさんが来た方が良かったんじゃ・・・もしくは執事長とか、執事ズとか。


「リィナ、お茶」

「はい」

まあ、仕方ありません。私は私の仕事をしましょう。


しばらくたつと、会議が始まりました。


・・・私の語学力では、何を話しているのかよくわかりません。


日常会話とビジネス会話は、別物ですものね。

BGMだと思っておきます。


「リィナ、コレと同じ腕章をつけた者が来るかもしれない。来たら中に入れてくれ」

そう言って、旦那様はご自分のつけている腕章を見せてくれます。

色はえんじ色っぽいような、朱色っぽいような・・・要するに、赤色の一種ですね。

腕章の中央には金糸で立派な紋章が刺繍がしてあります。公爵家の家紋とは違うようですね。

「この色は、この国を表すカラーだ。今日の会議は他国の者は参加していないから、色は問題じゃない。『腕章をつけている』人間なら、中に入れてかまわない。腕章の無い人間には、口を開く必要もない。」

・・・無視しろっていうんですか。小心者の私にはハードルが高いですね。


そうこうしている間に、議題が変わったようです。旦那様も手元の書類をみています。

あら?その書類、見たことありますね。というか、この前私が作った表とグラフですよね。

あの時はパソコンがほしいと切実に願ったので、よく覚えてますよ。

表計算ソフトさえあれば『ポンッ』と出来上がるグラフを、定規を駆使して作りましたからね。


へぇ。わたし、会議資料を作らされていたんですねー

お役に立ててればいいのですが。


そしてまた議題が変わりました。

今度は、誰かが壇上にあがってきました。

顔まではみえないですが、一人は紺色の詰襟に金糸の刺繍と飾り紐。

もう一人はえんじ色の詰襟に金糸の刺繍と飾り紐。

あの服は軍服かな?騎士の礼服とかかな?

二人とも、騎士団の偉い人とかですかね?


えんじ色の人が書類を片手に何かの報告をしています。紺色の人はその隣で立っているだけですね。

報告が進むにつれて、会議場がざわざわしてきます。

旦那様も眉間に皺が寄ってますね

うーん、戦争になるとかでなければいいんですが。

あ、報告が終わったようです。

そしてどうやら、休憩時間のようですね。


「リィナ、お茶を3人分用意しておいてくれ」

「はい。」

休憩時間にお客様が来るんですか?

お茶の準備をしていると、ドアがノックされました

ええっと、私が応対するんですよね。


カチャ

ドアを開けてみると・・・


先ほど壇上にいた、軍服らしき礼装の2人組が居ました。

一応、旦那様が先程言っていた『腕章』を確認してみると、2人ともつけていますね。


ノックをしたのは紺色の人。紺色の軍服に金髪が映えてます。飾り紐も金色なので、すごく似合ってますね。やさしそうな笑顔の、とてもイケメンな・・・


ん? んん??

金髪・・・イケメン・・・



「リィナ、お疲れ様。」

「・・・」

ポカーンとしてしまいました

これ・・・いやこの人、クリスさんだ・・・


「・・・メガネは」

「ん?ああ、あれは伊達メガネですので、なくても困らないんですよ」


入ってもいいですか?と聞かれました・・・はぅっ!そうですよねっ。すみませんっ


お二人を中に通し、準備していたお茶をお出しします。

メガネなしのクリスさんと一緒に居たのは・・・ええっと、一度お会いしましたよ、ねぇ?


「リィナちゃん、俺の事覚えてないのか・・・」

「ええっと、覚えてますっ、覚えてますよっ」

名前をわすれましたけど。

一緒にハンバーグ食べましたよね。


「俺そんなに印象薄いかぁ?」

騎士さんはクリスさんと旦那様にそう聞いています

「まあ、リィナですから。」

「そうだな。リィナだからな。」


むむむっ、なんか馬鹿にされてますね、私。

人の顔をじっくり見るのが苦手なだけで、記憶力は良いんですから!!

ええっと、何て名前だったっけ。

たしか最後がルだったような?

アル、イル、ウル、エル、オル・・・ウォル?

「ちがう、俺はウィルだ!!!」

怒られちゃいました。惜しかったじゃん。

「そんなに惜しくないだろっ。おい、彼女メイドとしてどうなんだ!?」

「メイドとして?なかなか優秀ですよ」

クリスさんがフォローしてくれます。しかも優しそうに微笑んで。

それにしても・・・メガネが無いだけで、ずいぶん印象が違いますね。

いつもの、裏がありそうな笑顔が成りをひそめているのですが・・・ただメガネが無いからってだけじゃないと思われます。今日はなんか機嫌がいいみたいですね。

ホント、イケメンは目の保養になりますねぇ。


・・・いかんいかん、こんな腹黒の人に見惚れてしまったら、イカン!


こっち見ないで下さいクリスさん。別になんでもないですよ、なんでもないったらっ。


そうこうしている間に、また会議が再開されました。

お二人とも、ずっとこちらに居るんですか?・・・そうですか。


「リィナ、先ほどウィルが発言していた内容は分かりましたか?」

「わかりません」

キッパリ言ったら、クリスさん苦笑。

だって、言葉が難しいんですもの。


「まあ、そうだよな。むしろ数ヶ月で日常会話がコレだけ出来るってのが、珍しいだろう。」


ウィルさんがそんなことを言っています。

私の努力の結果ですよー


「そうだクリス様、前に言葉の取得を召喚条件に付けたって言ってたな?」

「ここで様付けは止せ。それにお前が言うと気持ち悪い。」

「いまさらだろ。」

「・・・」


クリスさん、素敵なお顔がゆがんでますよ?

ウィルさん、騎士団長って言ってましたよね?騎士団長が『様付け』するクリスさんって、何者ですか?軍服着ているし。・・・騎士団関係者なのかな?・・・なんで家令をしてるんですかね?


考えれば考えるほど、謎が深まりました・・・帰ったらナンシーに聞いてみよっと。



「今後、語学習得を召喚条件に加えたがる連中が出てくるかもな。」

「すでにシオン様が王室に提案済みだ」

「へぇ、さすが」


あいかわらず、仲良しですね。二人とも。


ところで旦那様、静かですね。

年長組と会話することも無く、会議を聞いて------無いっ。


あーあ、寝てるし。

そりゃ静かだわ。


そうだ、さっき気になった疑問を聞くなら、今かもっ。

まわりのブースに聞き耳を立てられないように、ひそひそ話をすることにしました。

「あの、クリスさん。一つ聞きたいことがあるのですが」

「なんですか」

「どうして私は侍女の服を着ているのでしょうか」

「キーラさんに聞いていませんか?メイド服では王宮には・・・」

「それは聞きました。でも、それっておかしくないですか?侍女って、女主人に付く者なんでしょう?」

「・・・」


そうなのだ。キーラさんの説明を受けたときは『そんなものか』と思っただけだったけど、旦那様に女官の話聞いたときに沸いた疑問。


「なぜ旦那様のお供をするのに、私が来る必要があったんですか?」


屋敷には、旦那様のお供をするために、執事長をはじめ、執事見習いがたくさんいるのだ。

この3ヶ月、執事長と執事ズが旦那様のお供をしている様子を、散々見てきている。


わざわざ『屋敷に居もしない侍女』を仕立てる理由

それは『私を連れてきたかった』から。

だから、それは何故?


「あちこちのブースから、視線を感じるんです。旦那様ではなく、私を見てますよね?」

咎めるようにクリスさんに言うと、クリスさんはふぅーとため息を吐きました。

「・・・ごまかせると思ったんですけどね。」

「なかなか鋭いね、リィナちゃん。」

ニヤニヤ笑いのウィルさん。


「この会議はね、見栄の張り合いなんですよ」

「はい。それは旦那様に聞きました」


私を連れてくると、見栄が張れるんですか?

意味分からないし。


「シオン様が、公爵家に居ないはずの侍女を連れてきたから、注目されているんです」

「午後からの会議でシオン様が壇上に立たれるからね。先に注目を集めておくのも必要なんだよ。俺達が今ここに居るのもそう。」

「屋敷のメイドたちで、顔が割れていないのが、リィナだけなんです」

「公爵家には居ない筈の侍女がここに居るってことは、普通に考えれば『誰かがシオン様に自分の侍女を派遣した』という事。派遣した人物は限られてくる」

「シオン様に侍女を派遣できるような高い身分の貴婦人は、この国では2人だけです。」

「「王妃もしくは王女」」

ふたりの声がびったり重なります。


「わ、わたしは王族の方の侍女だと思われているんですか!?」

なにそれっ

「今日のシオン様の後ろ盾に、王妃か王女が居ると、会議場のみんなが思っていますよ。このブースは、下の階からも見えますしね。」

「まさか、メイドが化けてるとは思わないだろう」

「いつもの髪型なら、異世界人だと分かってしまいますが、今は変装してますし」

「話しかけられなければ、まず大丈夫だな。それに『王妃や王女から派遣されている侍女』に、話しかけてみようという者は居ないしな」

「ええ。話しかけたところで、欲しい情報など引き出せませんからね」


えええええ!?

「バレたら、どうするんですかっ」

「問題ありません。『皆さんが勝手に勘違い』しているだけですよ。私達もリィナも、一言も嘘は言ってないじゃないですか」


フフフと、黒い笑いをしたクリスさん。

お腹真っ黒ですっ

ああ、やっぱりこの人、腹黒だー!!

さっきの優しい笑顔はどこにいったのー!?


「昼の休憩になったら、リィナにはもう一仕事してもらいますよ」

「・・・な、なにをスルンデスカ」

「大したことではありません。私達にお茶を入れてもらうだけですよ」

「一挙手一投足に注目されるだろうなぁ」

「それに・・・いえ、これは言わないほうがいいでしょう」

「何?なんですかっ」

気になるじゃないですかっ

「リィナちゃん、下手したらシオン様の花嫁候補だと思われるかも?そうだよな、クリス様」

「ウィル・・・まあそういうわけですからリィナ、しっかり頑張ってください。」


"勘違いしている皆さんの、目の前でね"


クリスさんは、いつもの裏がある笑顔で、そういいました。















月でクリスさん視点の裏話、始めました。

シオンに隠れて何してんのっ!?って話になる予定です。

「異世界から来た彼女」で検索してくださいね。

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