表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/142

24 旦那様の事情

シオン視点の『酔っ払い達との帰り道の回想』と『翌朝』です

朝食の席に着いたら、すぐ後からクリスが入ってきた

「おはようございます、シオン様」

「ああ、おはよう」


今日は、昼まで使用人に暇を出しているから、朝食は執事長が用意している

とはいっても、シリアルなどで良いと伝えてあるが。


クリスが、紅茶を入れながら話しかけてくる


「昨日は、大変お疲れ様でした」


王宮での夕食会の事を言っているのか、その後の酔っ払いを迎えに行ったことを言っているのか・・・

おそらく、後者だろう。


「ああ・・・確かに疲れたな」


まあ、でも。

嫌ではなかったな。

なんというか


「リィナは、面白い、な」


紅茶を口にしながら、そうつぶやくと、クリスはからかうような笑みを浮かべる

「お気に召しましたか?」

「そういう意味じゃない」


そう

ホントにそういう意味じゃないし。




***********************************



クリスに騎士達の後処理とナンシーを任せ、店を出た後、シオンは、リィナの手首を掴んで、歩いていた



「ほら、リィナ。しっかり歩け」

「あるいてますよぅ」

まっすぐ歩けていないから、言っているんだが・・・

酔っ払いに言っても、無駄か。


「ミシェルー、くっつかないでってばー」

「フフフフっ、だってアリッサ抱き心地いいんだもんー」

「キャー、どこ触ってんのよっ」


・・・あっちはあっちで大変そうだ

それにしても、彼女たちは何だってこんなに酔ってるんだ?

「旦那様、リィナは大丈夫ですか?」

ミシェルを撒いてきたアリッサが近寄ってくる

「ただの飲みすぎだろう」

ふらふらしているし、話し方も幼くなっている気はするが、酒癖が悪いわけではないようだし、問題ないだろう。


「アリッサちゃん、私も抱っこしていい?」

「リ、リィナ!?なに言ってんの」

「えー、だって。抱き心地がいいってミシェルさんが言ってるー」


前言撤回。抱きつき癖でもあるのか?


「やだーーーーーー」


アリッサ、逃げた・・・あ、ミシェルに捕まった


「行っちゃったー」

「リィナ、立ち止まるな。ほら、帰るぞ」

そう言って掴んでいた手首を引くと、大人しくついてくる

時々立ち止まるので、また手首を引く

これはなんだか、小さい子供の世話か、もしくはペットの散歩をしているみたいじゃないか?

立ち止まっては歩かせて・・・を繰り返していると、クリスが追いついてきた


「シオン様、遅くなりました」

クリスは、意識の無いナンシーを横抱きにしている

それを見たリィナがまた立ち止まる


「あー、ナンシーさんお姫様抱っこだー」

「お姫様抱っこ?」


何だそれ?

クリスに目線だけで説明を求めると、楽しげに笑って話し出す

「女性を横抱きにしていることを、日本では“お姫様抱っこ”というんですよ。」

「なんで、お姫様・・・?」

意味が分からない。少なくともこの国の『王女』が横抱きにされている姿なんて、生まれてから一度も見たことは無い。


「さあ。ただ単にイメージで名づけられたものだと思いますので。」

「へぇ、そういうもんか」

まあ、異世界の事だし。理解できない事もあるよな。

「ナンシーさん、いいなー」

酒飲んで睡眠薬で眠らされて横抱きで運ばれているのを見て、"いいなー"と思う感覚が分からない。やっぱり、リィナは異世界人なんだな。


「リィナも後で、抱っこしてあげましょうか?」

クリスがそう言うと、リィナは少し考えてから、断った。

「しなくていいです。」

「おや、なぜ?」

羨ましいのでしょう?とクリスが聞くと、驚くべき返事が返ってきた


「さっき、歓迎会でみなさんが、クリスさんは俺様腹黒鬼畜で裏表ありすぎの人だって言ってたんだもの」


ブッ

思いっきり噴出(ふきだ)したら、さすがにクリスに睨まれた

こいつ、隠してるつもりでも、使用人には全部ばれてるってことか

それにしても誰が言ったんだろう。興味があるな


「リィナ、みなさんというのは、一体誰のことですか」

多少笑顔が引きつりながら、クリスがそう尋ねる

「そんなの言えません。わたし、みなさんに嫌われてしまいますよぅー」

「では、みなさんにはリィナが話したことは黙っておきますから、教えてください」

「いやー」


クリスを疑って、話すのを嫌がっているリィナを見て、かなり面白かった。

そういえば、使用人の噂話に耳を傾けることを、あまりしてこなかったな。

王宮では噂話を集める為だけに、仕事も無いのにウロウロしている貴族もいる。

私も、もう少し自分の屋敷の使用人の話にも興味を持ったほうが良いのかもしれない。


とりあえずリィナの話を聞いてみようか・・・

「リィナ、私の話は何かしていなかったか?」

「シオン様?」

クリスが驚いてこちらを見るが、とりあえず無視する。


「旦那様の話ですか?・・・んー、特には。」

全く話をされていないのも、それはそれでちょっと・・・。


「ああ、でもー、お二人とも"手が早い"んだって言ってました」

リィナがにっこり笑ってそう言う


手が早い・・・

手が早いって、女性に対してって意味だよな?

クリスはともかく、何で俺が・・・

ひょっとして、今朝の事を言ってるのか!?


「プッ」

リィナの話しを聞いてクリスが噴出す。こいつ、俺のことを笑ったな

“お二人とも”って、間違いなくもう一人はお前だろう!


「ああ、あとー、旦那様は"ある意味かわいそう"だとかー、"自分で望んでいるわけではない"とか?」


ああ、なるほど。そっち(・・・)か。

俺は別に手が早いわけではない。

あれは・・・不可抗力だ。

閨房術の相手が屋敷に来ることは、使用人には周知してある。

そもそも、使用人が『屋敷の外』でウチの事を話したりしないように、私の事は使用人にはすべて(おおやけ)にしている。

どんな仕事をしていて、誰と付き合っていて・・・とか。

知っていれば、要らぬ興味もわかないし、他所から入ってくる悪意のある嘘や噂に惑わされることも無い。

もちろん、業務上知り得た情報を口外するような人間は雇っていないし。


「リィナ、他には?」

「んー・・・ああ、マイクさんも女癖がわるいってー」

「「それは、どうでもいい」」

・・・というか、

「「マイク(あいつ)と一緒にするな!」」

「あははははは、一緒にしゃべってルー」

少し離れたところに居たミシェルに、クリスと私の声が重なった所を聞かれたらしい・・・ウルサイ!


「まあ、いいか。リィナ、話してくれたご褒美に、”お姫様だっこ”してやろうか」

「シオン様!?」

クリスが驚いて目を見開いている・・・そんなに驚くことか?

とはいえ、きっと "手が早いって言ってたから、いやです" とか言われるんだろうな、などと思っていたら


「ええっ本当ー?いいんですか?」


あれ?なんか、喜んでるか?えっと・・・

「お前が、嫌じゃなければ・・・」


「嫌じゃないですー」

ニコニコニコニコ


嫌じゃないんだ?

まあ、それなら、いいか。


掴んでいた手首を離すと、するりと首に両腕をまわされる

急に体が接近して、シャンプーの甘い香りが鼻腔をくすぐり・・・ほんの少し心臓がはねる------


あれ?


甘い香りがって・・・ちょっと待て、俺。

屋敷(ウチ)で揃えているシャンプーの香りなわけで、もちろん俺も使っているのに

なんでこんなに・・・甘い・・・


いやいやいや、今は深く考えるのは止そう。

とりあえず、抱きかかえるのが先だ


よっと・・・ああ、思ったより、軽いな


それに、やわらか・・・いや、だから考えるな。

これはウチのメイドで、異世界人で、俺の召喚者で、俺より10才も年上で・・・





「旦那様、重くないですか?」

しばらく黙っていたリィナが、そんなことを聞いてくる

「いや、重くは無い。思っていたよりも、軽い」

そう言うと、そんなに重く見えてたんですかーと頬をふくらませる

その様子に少し笑ってしまった

酒に酔っているからか、普段より子供っぽくみえる




「旦那様の顔・・・」

「なんだ?」

「はじめてじっくり見ました」

・・・は?

「リィナはいままで、私の顔を見ていなかった・・・ということなのか?」

「はい。ボヤーっとは知覚してましたけど、目鼻立ちをじっくり見たことはなかったみたいです」

「そうか」

そんなに印象が薄かったか。まあ、なんだかんだで召喚時から常に一緒に居たクリスよりは、接点が少なかった自覚はあるが。

「旦那様も『イケメン』だったんですねー」

急に『日本語』を話された・・・

「イケメンってなんだ?」

「『イケてるメンズ』で、イケメンです」

メンズは英語だろう。それはわかるが・・・イケテルって、どういう意味だ?


「シオン様、褒め言葉ですよ」

「褒め言葉?」

「リィナはシオン様を"かっこいい"と言ってるんですよ」

「・・・そうなのか」

「リィナ、私とシオン様では、どちらが『イケメン』だと思いますか?」

負けず嫌いのクリスが、くだらない質問をリィナにする

質問されたリィナは、「うーん」と考え込んでいる

「どっちもかっこいいですけど、クリスさんの方が、顔は良いかなぁ」

「それはそれは。ありがとうございます」

「でも、かっこよすぎて観賞用な気がします」


プッ

観賞用って

ああ、クリスの笑顔が固まった・・・


「リィナ お前、面白いな」

酔っ払いの戯言だけど、

退屈しない


「なんだか眠くなってきましたー」

「もう屋敷だから、まだ寝るな」

「んんーーー」

急に睡魔に襲われたらしく、首にしがみつき、首筋に顔を埋めてきた


また、甘いにおいが強くなる・・・が、さっき一度動揺したせいか、今度は平気だった

屋敷の中に入り、リィナに声を掛ける

「ほら、着いたぞ。下ろすぞ」


うとうとしているらしく、しがみついたままのリィナ

このまま使用人棟まで運んでいくわけには、いかないだろう・・・さて、どうするか


と思っていたら、クリスはナンシーを部屋まで送り届けるらしい・・・


しょうがない、私も行くか


ハァ


ため息をつきつつ、使用人棟まで行くと、キーラが大慌てで謝りに来た・・・まあ、そうだろうな。

クリスが事情を軽く説明すると、中に入れてくれる

私が使用人棟に入るのは、実は初めてだったりする


使用人のプライバシーの保護という名目があるものの、

自分の屋敷なのに、自分の知らない場所があるというのは、意外と気味の悪い事だったのだ。

こんな機会が無い限り、入ることが無かったわけだから、ある意味、リィナのおかげかもしれない。



アリッサが部屋を開けて、私とクリスを入れてくれる

「そっちのベッドがナンシーで、こっちがリィナです」

「ほら、リィナ。着いたぞ」

そう声をかけて、ベッドに下ろし、首にまわっている腕を解こうとしたとき・・・リィナが首元で、小さな声でつぶやいた

「だんなさまって・・・いいにおいがします」


えっと


「・・・リィナもな」


あー、今日はなんか・・・疲れた。

最後の最後で、すこし心拍数が少し上がった気がするが・・・



俺も疲れたのかな。きっと気のせいだろう。





*********************************************




朝食を終えて、いつもの通り、執務室で仕事を始めようとしたところ、クリスが昨日の騎士たちの報告書を作ってきた。


一体、いつ作ったんだか・・・昨日の夜か?

提出するのに私のサインが必要なため、目を通さなければならない。



第2騎士団所属の5名が、店に居た女性に睡眠薬入りの酒を飲ませた

騎士にあるまじき行いであり、騎士団の風紀にそぐわないものとし、降格および王都勤務である第2騎士団からの除名を申請する

今後の処遇は第3騎士団長に一任する



まあ、妥当だろうな。

ナンシーが意識を無くしていた訳だし。

それより・・・5名もいたのか


サインをして、クリスに渡す

「届けておいてくれ」

「はい。それと、あの店を少し調べてみてもいいでしょうか」


たしかに、酔い方がおかしかった気もするな


「任せる」


そこまで言ったところで、ドアがノックされた





リィナとシオンは微妙~にズレてます


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ