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16 お買い物に行こう3

誰、この騎士風の鎧を身に着けた美女------



「グレイシア、何故あなたが市場に」


クリスさん、一瞬にして表情が硬くなりましたね

ちなみに態度も硬くなってますよっ


「第3騎士団より頼まれまして。私を含めた数名が来ています」

「そうですか、それはご苦労様」

「クリス様は、どうして市場に?」

「いえ、たいした用事ではないです」


ええっと、私の語学勉強とか、買出しとかは内緒なんですかね?

それなら話をあわせることも出来ますよ?

空気読みますよー(笑)


「護衛もなしに市場になど・・・危険ではありませんか」


えっ? そうなの?

貴族だからってこと?


あなた(グレイシア)が心配することではありませんよ」


明らかに不機嫌ですね、クリスさん

心配してくれているのに、この美女。


「クリス様にもしもの事があったら・・・」


おおっ! なんか王道の恋愛物語(ラブストーリー)っぽくなってきた

長いツヤツヤの黒髪に白い肌、ばら色の頬、潤んだスカイブルーの瞳

まあ肌と頬は化粧のようですけど、庇護欲をそそる美女ですよ

"もしもの事があったら、私、生きていけない"とか、そんな感じに発展・・・しそうにないな、これ。


クリスさんは私でも引いてしまうくらい、冷たーい視線を美女に注いでいます

さすが美女も、それ以上は黙りましたよ。


しかし、この美男美女のやり取り、目立つことこの上ない

さっきから、すれ違う人がチラチラ見ていきます


「特に用がないなら失礼しますよ。さ、行きましょう」

私を促し、美女(グレイシア)に背を向けて歩き出すクリスさん

「・・・そちらのお嬢様は、どなたですか」


もしかして、私か?

ガン見されてますね

何かのフラグが立ちそうな、嫌な予感が・・・


「彼女は・・・ナンシーです」


はい?


「さっナンシー、お腹がすいたでしょう? なにが食べたいですか」


つ・・・ツッコミどころ満載ですが

とりあえず、私はナンシーですか------了解です

さっきの冷たい目線を見た後なので、やさしく微笑まれても、怖いだけですわ


クリスさんは美女(グレイシア)を無視して歩き始めました

さりげなく、私の背中を押して、しかも早足で

しかし美女(グレイシア)、ついて来る気みたいですよ


無視して進んでいたクリスさんが、前方を見据えたまま、舌打ちしました

・・・きれいな顔がゆがんでますよー


「これはクリス様。どうされました? こんな所で」


前方から歩いてきたのは、体格の良い騎士様

見るからに騎士

だって鎧を着て長剣を帯刀してるしね

美女は鎧を着ていても『騎士風』にしか見えないのに対して、この男性は"いつでも戦うよ!"って感じがすごく出てるね


「お前もあの女も『(サマ)(サマ)』うるさいんだよ。おい、二度と私の前にあの女(グレイシア)をうろつかせるな」

「そうは言ってもな、まさかお前が市場にいるとは思わないじゃないか」


あれ? 騎士さん、ずいぶん砕けた話し方ですね

クリス様改め『お前』呼ばわりですか


「グレイシア、ここはいいから、裏門にまわってくれ」

「・・・はい、かしこまりました」


どうやら、この騎士様は上官のようですね

美女(グレイシア)は、渋々従い、去っていった

・・・私でもわかるほど渋々って、どうよ?


「で? シオン様の家令が、なんでこんなところに女性連れでいるんだ」


じっと見られています

ナンシー(わたし)の立ち居地がわかりません

メイドでいいのかしら


そっとクリスさんを見上げると、グレイシアが去ったからか、肩の力が抜けています


「彼女は当家(ウチ)のメイドだよ」

「へえ、よろしくお嬢さん」

そう言って、握手を求めてくる騎士様

差し伸べられた手をとろうとして・・・


バシ


クリスさんに、手をはたかれました

えっ? なに?

握手しようとした手をはたかれるなんて、初めての経験です

びっびっくりしたー


「すまないリィナ、びっくりさせたね。ウィル、何の真似だ」

「なるほど、お嬢さんは異世界人なんだね」


騎士様はニヤニヤ笑っています

クリスさんは、超不機嫌顔です


「お嬢さん、覚えておくといい。この世界では、***で*****はしない」

"手を*********、*****する人間は、異世界人って事だよ"


そう言って、私の顔を覗き込む騎士様

浅黒く焼けた肌に茶髪の騎士様は、ニヤリと笑っています


ええっと


「なんて言ってるんですか?」

クリスさんを見上げてそう言うと、二人ともポカンと口をあけてしまいました


「・・・ハハハハハハハハハ」

クリスさんがお腹を抱えて笑いだしました


「あー、まいったね」

騎士様は苦笑しながら頭をポリポリかいています


で、なんて言ってたんですか?





**************************************************




この世界では、挨拶で握手はしない

手を差し伸べられて、握手する人間は、異世界人って事だよ



と言われたらしい。

なるほど

覚えておきます




ここは食堂です

結局、3人でランチタイムです


で、まだ笑ってるんですか、クリスさん

「す、すみませんリィナ」

「お前が笑い上戸だったとはね」


大きなハンバーグを食べながら、騎士様がつぶやいています

ちなみに、私の辞書を奪い、言葉を指してくれてます・・・笑い上戸、なるほど


「それにしても、まだ4日目の異世界人だったとは」

「なにか?」

「クリスとグレイシアの話は、わかったのか」

「はあ、まあ」

比較的、わかりやすい話の内容でしたからねー

「召喚時の条件に『短期間で言葉の習得が出来る者』と設定したんですよ」

「ほう、それで話ができるのか」


召喚時の条件? そんなものあったんですか・・・

で、わたしはその条件に当てはまってしまった為、召喚されたんですか

・・・落ち込んでもいいですか



もぐもぐもぐもぐ

ところで、このハンバーグ美味しいですね


「旨いだろう? この店のレシピは、異世界人が置いていったらしいよ」

なるほど、だから口に合うんですねー

いえ別にこの世界の料理が口に合わないわけでは無いですよ


「それでクリス、彼女の召喚主は誰なんだ」

「シオン様だよ」

「は?」

「彼女の召喚主は、シオン様だ」

騎士様は私の方をみます

"本当に?"と目で訴えてくるので、頷きました

「なんで、メイドを・・・ああいや、言わなくていい。大体わかる」

口を開きかけたクリスさんを手で静止して、騎士様はなにか考え込んでいます

「あの、クリスさん。お二人はどのような?」

「ああ、そういえば紹介もまだですね。リィナ、この男は第3騎士団の団長でウィルです。ウィル、こちらはリィナ。日本人だよ」

「やっぱり日本人か。俺もクリスと一緒に日本に留学してたことがあるんだよ」

「そうなんですか」

「ウィルとは同級生なんですよ。留学も同じ時期にしました」

「俺の場合は、10日だけだったから、言葉はもう忘れちまったけどな」

懐かしむようにそう話すウィルさん

騎士団長かー

偉い人だったんだね


それと、もうリィナと名乗っていいんですね


「はじめまして、リィナと申します」

「はじめまして、かな? 俺、君に会ったことある気がするんだけど」


「なに口説いてるんですか? ウィル」

「わたしは会った記憶はないですよー」


クリスさんの突っ込みと、わたしの口説きをスルーするセリフが、同時に出ました


「ククク、お前ら、面白いな」

「面白いのはお前の思考回路だ。彼女を口説くなら、シオン様の許可を得てからにしろ」

「女性を見たら口説くのが俺の流儀だ。しかし、シオン様に頭下げてまでは口説かねぇよ。というわけでゴメンな。君を口説けない」

「いえいえ、お気になさらずー」


口説かなくていいですー

口説かないことを謝られたのは、初めてだわー


「でもリィナ? 君の事は気に入ったから、王宮に来て困ったら、俺を頼るといい」

「困ったら?」

「例えば迷ったり、しつこい貴族に絡まれたり、どこぞの女に目をつけられたり」

どこぞの女って、グレイシアさんですか?

「どこぞの王太子に拉致された場合に関しては、効果はないけどな」

・・・王太子って名指ししちゃってるね

「まあ、とにかく困ったら、第3騎士団のウィルに用があるって言えばいい」

「リィナ、確かにこの男の名前を出せば、その場はしのげます。ありがたく使わせてもらいなさい」

「そうそう、シオン様のメイドですって言ったとたん、フラグが立つからね。俺の名前にしときなさい」

「はい。では、そうします」


一体なんのフラグが立つんですか?------2人とも教えてくれないんですか。そうですか。

旦那様にお聞きしても?------わっわかりました! やめておきますっ


「素直な子はかわいいね」


そう言って、頭をなでられました


うーん、このナデナデは "よくできました" なのかな




***************************************************




帰り道、馬車の中でずっと気になっていた事を聞いてみます

もう、異世界語がいっぱいいっぱいなので、日本語で。


「クリスさん、先ほどのグレイシアさんは、お知り合いですか」

「彼女は・・・ストーカーです」

「は?」


ストーカー?

あの美女がですか?


「彼女は玉の輿をねらっている子爵家の令嬢で、結婚相手を見つけるために騎士になり、第2騎士団に所属しています」


ちなみに、第1騎士団は王室と王宮の警護、第2騎士団は王都の警護、第3騎士団は王都の外の警護だそうです


「若い頃、散々付きまとわれたので、彼女に会うと、つい警戒してしまうんです」

「若い頃って、彼女私たちよりずっと若いですよね?」

「私が20才くらいの頃ですかね。彼女は8才くらいでしょうか・・・幼女を殴るわけにもいかず、かといって叱ると泣くし・・・本当に大変だったんです」

「なるほど」

「彼女も成長するにつれて、家令(わたし)が結婚できない職業だということがわかったらしく、落ち着いたのですが、その後はシオン様に付きまとうし」


へえー、家令って結婚できないんだ

そして旦那様、付きまとわれてたんだ

チョー仏頂面であしらってたんだろうなー

くくっ


「ここ最近は、王太子に付きまとっていたので、あんなところで会うとは、油断しました」


王太子様に、付きまとうって・・・不敬罪とかにはならないのかな


「あの、それとナンシーって」

「ああ、すみません。とっさに偽名を」

「はあ」


とっさに偽名っていう理由を聞きたかったんですけどね

教えてくれないですか

そうですか







その後、ナンシーさん宛に嫌がらせの手紙が届いていた・・・らしいです







リィナとクリスが市場に行っている時、お屋敷では------


メイド長「ナンシー、なぜリィナが泣いていたなどという嘘を・・・」

ナンシー「えー、だってキーラさん。リィナさんが迷子になってたのは本当ですう。それに、旦那様はお優しいから、きっと怒らないですよ」

メイド長「そうだとしても、クリスさんにまで嘘をつくとは」

ナンシー「・・・やっぱり、まずかったですかね」

メイド長「(ハァ) あとで、必ず仕返しされると思いますよ」

ナンシー「・・・」

メイド長「覚悟しておきなさいね」




そして、翌日から嫌がらせの手紙が・・・

剃刀入りや、悪臭付きや、グロイ写真入りetc......



ナンシー「クリスさん、すみませんでしたっ、助けてください」

クリス 「私に言われましてもね。手紙を出している本人に言ってください」

ナンシー「グレイシア嬢に言えませんよう」

クリス 「私だって、あの女にはかかわりたくありません」

ナンシー「そんなぁ」


シオン 「ナンシー、困っているようだな」

ナンシー「旦那様ぁ、助けてくださいぃ。1日3枚も不幸の手紙がぁ」

シオン 「自業自得だ。反省しろ」

ナンシー「えーん、すみませんでしたー、もうしませんからぁ」



結局、手紙は2週間、計42通届きました------

ナンシーはリィナと仲良くなることを、心に誓ったのでした(笑)

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