12 言葉の壁?
4/15呼び方訂正しました
異世界3日目になりました。
ここは異世界ここは異世界ここは異世界......
クリスさんが迎えにくるまで、現実を認めようとブツブツ呟いてしまっていました。
昨日は午前中の外出と、午後の洗濯とでさすがに疲れたので、
夕食を頂いてからすぐに寝てしまいました。
あ、淑女の礼の練習は、ちゃんとしましたけどね。
「よく眠れましたか?」
「・・・はあ、まあ」
正直、あまりよく寝れていない感じです。
なんか、身体がだるいのです。
ベッドが変わったから・・・というより、世界が代わったからかしら?
微妙に、筋肉痛も残っている感じで・・・だるい
「なにか、不都合があったら、すぐに言ってくださいね。やはり慣れるまでに時間がかかるでしょうから」
「ありがとうございます」
朝食に向かいながら、そんなやり取りをする
「おはようございます、シオン様」
「おはようございます、旦那様」
「おはよう」
食堂前で旦那様に会ったので、クリスさんと一緒に挨拶をする
まだ3日目だけど、『旦那様』と言うのに大分慣れて来た・・・と思う
今日の朝食は、パンケーキ
とりあえず、この美味しいパンケーキを堪能させてくださいっ
「シオン様、今日からリィナの語学勉強を始めたいと思います」
「そうか」
「リィナ、朝食が終わったら、すぐに始めましょう」
「・・・ふぁい・・・わかりました」
口の中の物を必死に飲み込んで、そういうと、クリスさんに笑われました
かなりがっついて食べていた自覚はありますけど、笑わなくても良いじゃないですかあ---
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「では、まず文字から覚えましょうか」
そう言って、渡されたのは、日本語で言うところの50音表
「・・・アルファベット、ですか」
「まあ、間違いではないですが、35文字あります」
「なるほどー」
文字が多いんだ。
表を見ながら、発音を教わる・・・結構似ているから、頑張れば覚えられそう
「あとは、繰り返し書きながら発音して、覚えていってください。次は・・・」
そう言って、クリスさんはカードを出してくる
「単語と文法を覚えましょう」
見せられたカードは、カラフルな絵に単語が書かれている・・・おそらく、子供用の学習カード?
「文法は、日本語とほぼ同じです。まずは、名詞文ですが・・・」
□□は □□です
□□は □□ではありません
という、もっとも使うだろう文を教わる
さっきのカードを使って、文を作ってみる
例えば『これは リンゴです』『私は 男性ではありません』
助詞と助動詞を覚えれば、名詞文は話せそうだね
「疑問文は、どうなりますか?」と質問すると?
□□は □□ですか
「返答は?」
はい、□□です
いいえ、□□ではありません
「クリスさん、私、覚えられる気がしてきました」
「ええ、私も少し驚きました。リィナは語学勉強は得意ですか?」
「いいえ、でも留学生に日本語を教えたことがあったので、その時に教え方の勉強をしたんです」
こんなところで役に立つとは
"わかりやすく教える"という勉強をしたから、逆に"わかりやすく教わる"コツがわかる
結局、午前中に形容詞文と動詞文まで教わった
ただ・・・まだ単語がわからないので、会話は出来ないのですが・・・
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お昼ごはんを頂き、午後からはまた勉強・・・かと思ったら、洗濯でした
ううっ、確かに昨日聞きましたね、ランドリーメイドが3日間休むって
ということは、明日も洗濯あるんですね
洗濯、嫌いじゃないですよ。本当に。
ただ、量が多いんです。
使用人分の洗濯って言ってたけど・・・この屋敷、何人の使用人が居るのかしら
というか、クリスさん、執事長、メイド長の以外の使用人に、未だ遭遇していませんが・・・
聞いてみたら、あっさりと教えてくれた。
「ああ、それは、意図的に避けているんです。まだ言葉が通じませんからね。第一印象で苦手意識を持たれたら、お互い気まずいでしょう?」
まあ、それは確かに
クリスさんは私が洗濯している横で・・・昨日の旦那様のように、突っ立っている
・・・監視ですか?ひょっとして
私のビクビクした視線に気がついたのか、クリスさんは苦笑した
「私がいると、気になりますか?」
「・・・」
気まずい・・・です。ハイともイイエとも言いづらいです。
「リィナはこちらに来てまだ3日ですからね。不測の事態が起きた場合、対処できないでしょう?だから、誰かしら一緒に居ることにしてるんですよ」
なるほど、昨日は旦那様で今日はクリスさんってことですね
あれ?でも昨日は旦那様、途中でどこか行きましたね
・・・
まあ、いいか。考えても仕方ないし
「リィナ、勉強の続きをしましょうか」
「はい?」
「日常会話をはやく取得しないとなりませんからね」
おはようございます
こんにちは
こんばんは
ありがとうございます
どういたしまして
しつれいします
よろしくおねがいします
はじめまして
etc......
洗濯機のレバーを回しながら、ひたすら繰り返し言わされました・・・鬼だ、鬼が居る
まあ、でも、異世界3日目にして、自己紹介ができるようになりました
『はじめまして。リィナと申します。どうぞよろしくお願いします』
『よくできました』
ニコニコしたクリスさんに頭をなでられました・・・何故子ども扱いですか
「ああ、すみません、つい。子供っぽいしゃべり方だったから」
「・・・」
たしかに、語学の覚えたてって、幼児言葉に聞こえたりするけどさあ
ちゃんと、言えたと思ったんだけどなー
自信あったんだけどなー
結局、洗濯をしながらずっとクリスさんと話していた
いや、勉強していた
そのせいで、昨日よりもずいぶんと時間がかかってしまい、二人でメイド長に怒られてしまいました
『ごめんなさい』
"すみませんでした"を教わっていなかったから、そう謝まってみたら、メイド長は苦笑しながら許してくれたけど。
でも、あの、どうしてみんな、頭をなでるのですか・・・?
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夕食の時間に差し掛かる頃、旦那様が外出から帰ってきました。
というか、外出していたんだね。知りませんでした。
頭を下げて、挨拶する
『おかえりなさいませ、旦那様』
よしっ、上手く言えたよ!
「・・・・・・」
旦那様は無言・・・反応がない
あれ
わたし、間違えた?
そう思って、そろーりと頭を上げてみると
驚いたように目をひらいた旦那様が、私を凝視しています
えっ、やっぱり私、言葉を間違えたのかなっ
一言間違えただけで、ぜんぜん違う意味になる場合とかあるし
あわててクリスさんを見ると、クリスさんはニコニコしている
"大丈夫ですよ"とでもいう感じで、小さく頷いてくれた
『・・・旦那様?』
旦那様の後ろに控えていた執事長が、固まったままの旦那様に声をかける
『あ・・・ああ、うん。・・・ただいま』
そう言って、顔を背けられました
・・・感じ悪いですよ、旦那様
クリスさんも執事長も苦笑してます
うーん、やっぱり旦那様はちょっと苦手です。




