プロローグ
誤字訂正しました
「それでは皆さん、おせわになりました。」
私は"この世界"で最初に教わった「淑女の礼」にて仕事仲間たちに別れを告げる。
みんな口々に別れの言葉をくれる。最後はなんだか泣き笑いでお別れした。
みんないい人ばかりだったなあ・・・
地下への階段を下りながら、しみじみとを思い出す。
メイド長の厳しい教育も、執事長の優しさも、同室の子たちも。
"元の世界"に戻っても、これほど人間関係の良い職場は無いだろうと思う。
・・・思う、が、いかんせん、雇用主が問題だ。。。
"うん。元の世界に帰れれば、あれほどひどい上司にめぐり合うことは無いと思うわ。"
特にこの1ヶ月はひどかった
パワハラは当たり前・・・うつ病になるかと思った。
セクハラも当たり前・・・というか、本気で身の危険を感じましたとも!!
ここ1年くらいは、人柄もだいぶわかってきて、良好な関係だったから尚更だ。
"3年間・・・本っ当~に長かった"
階段を下りながら、思わずため息をついた。
いきなり異世界に召喚されて。
召喚主である旦那様との性格の不一致から始まり、ようやく、まずまずの信頼関係を築くまでに至り、
やっとこの度、元の世界へ戻してもらえることになったのだ!!
屋敷の最下層へ到着し、扉を開ける。
そこには家令のクリスさんと、問題の旦那様が居て、床に大きな『魔方陣』を書いている。
クリスさんは私に気づき、にこやかに話しかけてきた。
「お別れは済みましたか? おや、ずいぶん荷物が少ないですね」
「はい。こちらに来た時は手ぶらだったのだし、記念になるものだけ持ち帰ろうかと思って」
わたしの返答に"なるほど。"と言って、クリスさんは私の荷物(ボストンバック1つ)を持ってくれる。
しばらくクリスさんと雑談(主に、鞄の中身について)をしていると、不機嫌な声が聞こえてきた。
「おい、・・・できたぞ」
黙々と魔方陣を書いていた旦那様は、立ち上がると、顎で私に魔方陣の中心へ行くように促す。
わたしはクリスさんから鞄を受け取り、ウキウキと向かう。
中心で立ち止まり、旦那様にも『淑女の礼』をする。
旦那様は何も言わずに、片手を魔方陣にかざし、帰還のための呪文を唱え始める。
"ああ!これでやっと帰れるのねっ"
私は、懐かしい元の世界へ戻れることが、うれしくてうれしくて!思わず胸の前で手を組み、目を瞑って(顔はニヤけながら)今か今かとその時を待つ・・・
・・・・・待つ
・・・・・・・・待つけど
あれ?戻らないよ?
来た時はあっという間だったよ?
不審に思い、目を開けると
・・・旦那様と目が合った。呪文は唱えてない・・・なぜ?
小首をかしげて『なぜ?』と問いかけると、旦那様はありえないことを言い出した。
「やめた」
なぜか、不機嫌丸出しの仏頂面で。
* * * * *
事の発端は、3年前にさかのぼるのです。
初投稿です。
更新はのんびりですが、よろしくおねがいします。