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21. 巨大な塔の上で

「これなら、本気で付き合ってもいいかもしれませんわね」


 その言葉には、ミーシャなりの最大限の賛辞が込められていた。


「じゃあ、改めて」


 レオンがテーブルの中央に右手を差し出した。


「僕を受け入れてくれて、ありがとう」


 翠色の瞳が、四人を見つめる。


「一緒に、輝く未来を目指そう」


「うん!」「いいんじゃない?」「よろしく!」「ふふっ」


 一人、また一人と、手が重なっていく――――。


 五つの手が完全に重なったその瞬間、レオンの視界が黄金に染まった。


【スキルメッセージ】

【運命共同体・成立】

【構成員:レオン、エリナ、ミーシャ、ルナ、シエル】

【未来予測:この結束が、世界の運命を書き換える】


 さらに、新たなビジョンが流れ込んでくる。


 五人が肩を並べて、巨大な影に立ち向かう姿。


 剣を振るうエリナ。弓を引くシエル。魔法を放つルナ。回復魔法を唱えるミーシャ。そして、指示を出すレオン。


 世界中の人々が、彼らの名を讃える光景。


 歓声。拍手。涙を流して喜ぶ人々。


 そして、最後に見えたのは――。


 五人が、笑い合っている姿だった。


 見たこともないガラスでできた巨大な塔の上で傷だらけで、疲れ果てて――でも、心から笑っている。


 温かい光に包まれて、肩を寄せ合って。


 まるで、家族のように。


 だが、そのビジョンは霧に包まれて、全貌は見えなかった。


 詳細は分からない。いつ、どこで、何があったのか。


 でも、温かい気持ちだけが、確かに伝わってきた。


 ――これが、僕たちの未来か。


 レオンは、胸が熱くなるのを感じた。


「どうした?」


 エリナの声で、レオンは現実に引き戻された。


「急に黙り込んで。大丈夫?」


「いや」


 レオンは、首を横に振った。


 そして、微笑んだ。


 今見たビジョンのことは、まだ言わないでおこう。


 いつか、みんなで笑い合える日が来たら、その時に話そう。


「なんでもない。ちょっと、感慨深くなっただけだ」


「感慨深い?」


「ああ。今朝、全てを失ったと思っていたのに」


 レオンは、四人の顔を見回した。


「今は、こんなに大切な仲間がいる。不思議な気分だよ」


 少女たちが、照れくさそうに顔を見合わせる。


「あ、あんたも大概、恥ずかしいこと言うわね……」


 エリナが、頬を赤らめながら言った。


「うふふ、でも悪い気分じゃありませんわ」


 ミーシャが、くすくすと笑う。


「あたしも! 仲間って、いいね!」


 ルナが、目を輝かせる。


「ボクも……嬉しい」


 シエルが、はにかむように微笑んだ。


 レオンは、自分の金貨の包みを懐にしまった。


 四十枚。


 借金の返済には全然足りない。


 でも、それでいい。


 今日という日は、金では買えない、かけがえのないものを手に入れた日なのだから。



     ◇



 静かな感動が漂う中、レオンがふと思い出したように問いかけた。


「ところで、君たちのパーティ名は?」


 その瞬間、四人の少女たちの表情が一変した。


 まるで、秘密の箱を開けられたかのように。


 エリナが急に視線を逸らし、頬が薔薇色に染まる。シエルが居心地悪そうに肩を竦め、碧眼を伏せる。ミーシャですら、完璧な聖女の微笑みに、かすかな動揺が走った。


 そして、ルナ。


 小さな体を、まるで消えてしまいたいかのように縮こまらせ、震える声で呟いた。


「よ……『四つ葉のクローバー』よ」


 静寂。


 カッコよさを求めがちな威勢のいいパーティ名が一般的な中、『四つ葉のクローバー』はあまりにもほんわかとしたのどかさを感じさせる。


 そして――。


「くすっ」


 レオンの口から、小さな笑いが漏れた。


 瞬間、エリナの瞳が炎のように燃え上がった。


「笑わないで!」


 声が、研ぎ澄まされた刃のように響く。


「この名前に決めた夜――私たちは雨に打たれて野宿してた。屋根もない、ただの廃屋の軒下で」


 エリナの声が、かすかに震える。怒りではない。記憶の痛みだ。


 シエルが小さく頷く。


「何も食べてなくて、お腹が鳴って……」


 ミーシャも仮面を外したような素直な声で続ける。


「寒くて、怖くて、明日が見えなくて」


 ルナが涙声で語る。


「でも、そんな時に私が言ったの。『四つ葉のクローバーみたいに、いつか幸せが見つかるかも』って」


 エリナが拳を握りしめる。


「皆で泣きながら笑った。馬鹿みたいだって分かってた。でも、それしか希望がなかった」


 新たな涙が、ルナの緋色の瞳から零れ落ちる。透明な雫がきらりと輝いた。


「悪かった」


 レオンが真剣な表情で深々と頭を下げる。


「馬鹿にしたんじゃない。むしろ逆だ」


「は?」


 エリナが眉をひそめる。


 レオンは顔を上げ、四人を見つめた。

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