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10. 乗ってやってもいいわよ

 見抜かれている。全部、お見通しだ。


 普通なら、不快に思うはずだった。仮面を剥がされるのは、ミーシャにとって最も恐れることの一つだったから。


 でも、不思議と――嫌じゃなかった。


 むしろ、どこかホッとしている自分がいた。


 ようやく、本当の自分を見てくれる人が現れたのだ。


 その安堵感が、胸の奥でじんわりと広がっていく。



      ◇



 レオンは、四人の少女たちを見つめた。


 日は高く昇り、路地裏にも光が満ちてきている。


 その黄金の光が、五人を優しく包み込んでいた。


 傷だらけで、埃まみれで、さっきまで殺気を放っていた少女たち。


 でも今、その瞳には、希望の光が宿っている。


「これで証明できた……かな?」


 レオンは、静かに四人を見回す。


 レオン自身まさかここまでうまくいくとは思っていなかったが、地獄の底で覚醒させた最強のスキル。このくらいやってくれなければという思いもあった。


「僕の【運命鑑定】は、本物だ」


 四人はレオンを見つめている。


「そして――」


 レオンは、一人一人の顔を見つめながら、言葉を続けた。


「君たちの才能も、本物だ」


 その言葉が、少女たちの胸に染み込んでいく。


 もしかしたら――――。


 この男と一緒なら、本当の自分を手に入れられるかもしれない。


 四人の美少女たちは、埃まみれで、傷だらけで、疲れ果てていた。


 だが、この瞬間――。


 彼女たちは確かに、美しく輝いていた。


 それは、絶望の底から立ち上がろうとする者だけが放つ、特別な輝き。


 夜明けの光よりも眩しい、希望の輝き。


「ねぇ?」


 エリナが、一歩前に出た。


 朝日を受けた漆黒の瞳が、レオンを真っ直ぐに見つめる。


 さっきまでの敵意は、もうどこにもなかった。


「さっきの話……」


 エリナは、少しだけ躊躇ってから、続けた。


「本気で言ってた?」


「どの話だ?」


「あたしたちと一緒なら、世界を救えるって」


 レオンは、微笑んだ。


 迷いのない、真っ直ぐな笑顔。


「ああ、もちろん本気だ」


 その言葉に、嘘はなかった。


 【運命鑑定】が示した未来。黄金の霧の向こうに見えた、希望の光。


 この少女たちと一緒なら、本当に世界を変えられる。


 レオンは、心の底からそう信じていた。


 四人が、顔を見合わせる。


 言葉はない。だが、視線だけで何かを確認し合っていた。


 そして――。


 ルナが、もじもじと前に出た。


 頬を真っ赤に染めて、恥ずかしそうにそっぽを向きながら。


「そ、その話……」


 声が震えている。だが、今度は恐怖ではなく、照れ隠しの震え。


「の、乗ってやってもいいわよ……?」


 上目遣いでチラリとレオンを見る。


 その仕草が、なんとも可愛らしい。


「べ、別にあんたを信じたわけじゃないんだから! た、ただ……。金貨二百枚は魅力的だし、あんたのような、仲間がいた方が効率いいこともあるかなって……」


 典型的なツンデレの言い訳。だが、その緋色の瞳は、期待に輝いていた。


「仲間になる話、ボクもいいと思う」


 シエルが、鋭い碧眼でレオンを射抜いた。


「でも――」


 その目に、かつて何度も裏切られてきた者の警戒心が宿る。


「裏切ったら、殺す!」


 冗談ではない。本気の宣言だった。


 だが、レオンは怯まなかった。


 むしろ、両手を広げて、どうぞという仕草をしてみせる。


「裏切るつもりはないよ。でも、信用できないなら、いつでも射抜いてくれて構わない」


 その堂々とした態度に、シエルの目が少しだけ和らいだ。


「……変な奴」


 呆れたように呟きながら、口元がわずかに緩んでいた。


「裏切らないっていうなら……ね?」


 エリナが、黒髪をサラリと手で流した。


 その仕草は、さっきまでの殺気立った戦士ではなく、年頃の少女のものだった。


「あたしも乗ってあげる」


 ニヤリと笑う。


「ただし……。足手まといになったら容赦しないから」


 口では厳しいことを言いながら、その漆黒の瞳は、どこか楽しそうに輝いていた。


「まずは詳細を詰めましょうか」


 ミーシャが、聖女の微笑みを浮かべた。


 だが、その空色の瞳には、いつもとは違う光が宿っている。


 本物の好奇心。本物の期待。


「報酬の分配、役割分担、活動方針……決めることはたくさんありますわ」


 優雅に首を傾げながら、ミーシャはクスクスと笑った。


「ふふふっ……楽しくなりそうね」


「ありがとう! よろしく!!」


 レオンはみんなを見回し、にっこりと笑った。


 その瞬間――レオンの視界が、再び黄金に染まった。


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