おかわりをしないで
小柄で可愛らしい見た目と食べっぷりのギャップがある女の子を僕は好きになってしまった。
彼女の名は、ヒロミ。広海と書いて、ヒロミ。
牛丼屋でも大盛りをペロりと食べてしまう。頬に米粒をつけるキュートな彼女の笑顔に、僕は夢中になった。
僕が告白したら、ヒロミは困ったような顔をして僕に聞いた。「私、ご飯いっぱい食べるよ? きっと嫌いになっちゃうよ?」
「ご飯をたくさん食べる君が好きなんだ。結婚しよう」
「はい」
僕は、その時は天にも昇りそうな気持ちだったんだ。
「おかわり」
結婚して彼女の食欲は底なしである事を知った。
給料の4/5が食費に消えていく。テレビのニュースで相撲部屋の食費を知った。我が家の食費とほぼ変わらない。実家が家を用意してくれなかったら、とっくに米代で破産していただろう。
丼に13杯目の米を盛るヒロミに僕は言った。
「ヒロミ、もうおかわりはしないでくれないか」
ヒロミは悲しそうな顔をして頷いた。
「ごめんなさい。私、もうおかわりしない」
僕は酷い男だ。ヒロミを悲しませてしまうなんて。
翌朝。
ヒロミは我が家の3升炊き業務用炊飯器の羽釜を抱えて、米をモリモリ食べていた。
「私、もうおかわりしない。羽釜で直接食べるほうが洗い物少ないもんね」
頬に米粒をつけるキュートな彼女の笑顔はあの時のままだ。
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我が家の「おかわりしない」事件から、3年経った。ヒロミはYoutuberデビューし、我が家の食費問題は一気に解決した。米のグレードが上がり、ヒロミは大喜びだ。
次のコラボは、猿渡部屋でちゃんこ鍋を食べるらしい。相撲部屋とのコラボは人気で連戦連勝している。
「知らせたい事があるの」
ヒロミが僕に言った。なんだろう。炊飯器はこの間、5升炊きに買い換えたばかりだけど。
「赤ちゃん、できちゃったみたい!」
やったー。僕は天にも昇るような気持ちになったあと、僕らの子供の食欲を案じるのだった。




