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75話 開店準備

ご覧いただきありがとうございます。

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よろしくお願いします。

出店の大成功を受け、急きょ「今後の店舗展開」を議題にした会議が開かれた。

呼び出しは唐突だったが、それだけ事態が切迫していたのだ。



今回の鎮潮祭での出店は、あくまで「市場調査」が名目だった。

しかし売り上げは想定を大きく超え、需要の手応えは十分すぎるほどあった。


評判が良すぎたあまり、祭りの途中からすでに問い合わせが寄せられ始め、

カイエイン商会の従業員は行く先々で「お店はいつ開店するの?」と質問攻めにあったという。

中には商会幹部の居場所を突き止めてまで迫る者まで現れた。


祭りが終わり通常業務に戻ると、事態はさらに悪化する。

各方面からの問い合わせが殺到し、業務はほぼパニック状態。

これ以上は業務に支障が出ると判断し、緊急会議の開催に至った。


もっとも、すぐに出店できるわけではない。

最大の理由は――食材の供給が追いつかないことだ。

農園と呼べる規模にはなってきたが、まだ試験栽培の段階である。

イワンが日々研究を重ねてはいるものの、本格的な量産体制にはほど遠い。


正直、ここまでの反響は予想外だった。

ある程度の手応えは予想しており、「一年後の出店」をぼんやり描いてはいた。

だが現実は、予想を軽く凌駕してきたのである。


こうなると、もはやラングひとりの手には負えない。

企画生産部すら正式には発足しておらず、少人数での立ち上げ段階。

人員も予算も不足していては、どう逆立ちしても対応できない。


とはいえ悠長には構えていられない。

まずは、日常業務を妨げている障害を一刻も早く取り除く必要があった。


結論は明白――人員の確保が急務である。

人手なくして店舗展開の加速は望めない。

予算については、出店の利益を原資にすればどうにかなる。



こうして打ち出された短期目標は以下の通り。

1.本格的かつ大規模な求人活動

2.アウトソーシングの検討

3.農耕用器具・道具の開発

4.秘密保持対策

5.人材育成



今回は中・長期的な展望は一旦脇に置き、

まずは一日も早く開業することに全力を注ぐ方針となった。


1については商会任せだ。

ただし、奴隷だけでなく一般市民からも人材を募ることになった。

とにかく一人でも多くの人を集める必要がある。


2については外注も視野に入れるという事だ。

とは言えこの世界に農家はいない。

まるっと何かの栽培を任せる相手はいないのだ。


何度も言ってるようにこれまで植物は、ただの石ころも同然だったのだ。

石ころを日がな一日集めるような奇特な人間は、趣味で集める人を除いて、いるわけがない。

だからこそ植物栽培に精通した人など、まずお目にかかれないのだ。



そこで想定するのは、一連の農作業ではなく、

種まき・草むしり・収穫など作業を細かく区切り、

必要なときに応援を頼む形だ。


それならば体力自慢の業者を探せばどうにかなるだろう。

意欲があれば農作業を少しずつ覚えてもらい、

いずれは完全委託も視野に入れる。



3についてはドグマに丸投げだ。

ラングがアイデアを出し、ドグマが形にする──

今後も続く鉄板の解決策である。



4については、砂糖をはじめとする調味料の機密保持。

店舗展開の要とも言える部分であり、

情報や現物てんさいが外部に漏れないよう厳重に管理する必要がある。



5については、新たに加わる人材だけでなく、

幹部層も育成していくということだ。




かくして商会は、店舗開業に向けて目の色を変えて動き始めた。

鎮潮祭で知り合った孤児院周辺の空き地を買い取り、耕作面積を拡大。

もっとも、そこで栽培するのはてんさい以外の作物である。



カイエイン商会の敷地では、砂糖生産量を増やすため、

てんさいのみを集中的に栽培。

それ以外の作物は、当面すべて外部で生産することにした。



「てんさいは商会敷地内でのみ栽培する」──

これも機密保持策の一環だった。



孤児院のあるエリアはもともと過疎化が進んでおり、農地にできそうな空き地は豊富にあった。

そのため、耕作用地の買収はその後も積極的に進められていく。


一方、店舗開業までの間は、月に一度の移動式屋台を出すことが決まった。

これにより「開業準備が着実に進んでいる」という対外アピールができ、外部からの不満を和らげることができた。


許可は拍子抜けするほどあっさり下りた。

「月例祭にも甘味を奉納したいなぁ。祭りを盛り上げるために屋台を出したいなぁ」

使徒ラングの一言に、周囲は「ありがたや、ありがたや」と信仰心を込めて頷いたのだ。


日々は目まぐるしく過ぎ、その中で着実に成果も積み上がっていった。

企画生産部の人数は、いつの間にか二十名を超える。

カイエイン商会の各部署からの派遣もあったが、それ以上に甘味の虜となった人々が次々と求人に応じた結果だった。


応募者が殺到しすぎて、泣く泣く多くを断らざるを得なかったのは惜しいが、無理は禁物だ。

人を育てるには時間も労力もかかる。


右も左もわからない新人を教えている間は、1+1が2にはならない。

仮に新人を0.5人分の働きとすると、教える方も何かと時間を取られ0.8人分くらいに仕事量が減るのだ。


そのため、一度に雇える人数は限られ、成長具合を見ながら少しずつ補充していくしかない。



その点ラングのスキル【言霊】は人材育成でも大いに効果を発揮した。

全能力値にブーストがかかるのだから、成長速度だって例外ではない。


傍目にわかるほど、急激に戦力が充実するのを見て、商会の幹部たちも度肝を抜かれたようだ。

こうして人員を着実にまとめ上げつつ、日々は順調に回っていった――。



そんな中、仕事以外の場面で一つの問題が持ち上がる。

出店で自信をつけたエマルシアが、新たな悩みを抱えたようなのだ。



夕食後の食堂で、ラングはその話を聞くことになった。






この世界の貨幣についてまとめました。

以下の活動報告をご参照ください。

アインラッド王国の貨幣と貨幣価値について

https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3488243/

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