4話 スキル【言霊】で紡ぐ、奴隷脱出のシナリオ
俺のスキル【言霊】は、いわゆる補助系スキルに分類される。
直接攻撃? もちろんできない。
となると、戦うのは仲間。俺の仕事はその仲間の能力を最大限に引き出すこと――。
だからこそ、**「元となる能力値をどう高めるか」**が、この世界で生き残る上で最重要の課題となる。
……というのも、そもそもこの異世界の生物全体の“平均的な強さ”が、俺のいた元の世界と比べて遥かに高い。
魔物が森や平原を我が物顔で闊歩し、人間が無防備に出歩けば命の保証はない。それがこの世界の常識だ。
考えてもみてほしい。
元の世界ですら、人間の身体能力は大型動物には到底かなわなかった。
じゃあ、動物より何倍も凶暴で強靭な魔物相手にどうするか?
……答えはひとつ。スキルで強くなるしかない。
スキルは、生まれながらに授かる「才能」のようなもので――
◆≪伝説級≫を持てば、生まれながらにして勝ち組。
◆≪上級≫なら、国に仕える兵士や冒険者として一目置かれる。
◆≪中級≫なら、一般階級の上の中流層として生きていける。
……だが、≪初級≫を授かった時点でアウトだ。
さらに最悪なのは、スキルそのものを授からない者。
そうなったら人生詰み。お先真っ暗。
そして、今の俺はその“初級スキル”をようやく手にしたばかり――
しかも、モルモル(※俺の協力者である上級神の呼称)が全力支援してくれたおかげで、ようやく、だ。
ありがたいことに、モルモルから加護と祝福も授かっている。
だがそれでも、俺は今“奴隷”という最低ランクの身分にいる。
この世界の奴隷には、大きく二種類ある。
労働奴隷:借金などの理由で奴隷となった者。俺はこっち。
犯罪奴隷:戦争や重罪によって自由を奪われた者。
俺の肉体――ラング少年は、前者の労働奴隷。だが、その前に背負った“負の遺産”は重すぎる。
この少年の人生は過酷極まりなく、俺はそこからスタートするしかなかった。
……前途多難にも程がある。
それでも俺はこの世界で“成り上がる”と決めた。
神の一柱――夢想神モルペスト・ルミスの協力を得て、必ず奴隷から解放され、妹を探し出す。
そして、俺たちの家族を死に追いやった連中を、この手で――いや、言葉で――裁く。
できることなら、あの胸糞悪い“女神”も、地獄の底に叩き落としてやりたい。
そのために、俺とモルモルで練り上げた作戦が、これだ。
▽ 目標:奴隷からの解放 ▽
■ 作戦その①:バフにバフを重ねる「チリ積も作戦」
俺のスキル【言霊】は補助特化。
ならば、その特性を極限まで活かし、あらゆる手段で強化バフを上乗せする。
一つひとつは微力でも、積み重なれば伝説級に匹敵する力となる。
■ 作戦その②:小技と裏技の「網目スルー作戦」
1.神器魔道具の多重活用
補正効果のある魔道具は「神器魔道具」と呼ばれ、神の力で作られる。
神器の格には≪低≫≪並≫≪高≫の三種があり、それぞれ下級神・上級神・原神が生み出す。
通常、神格によって創造制限はあるが、授与数に制限はない。
つまり、神々の「網目」を抜ければ、神器を数で揃える戦術が成立する。
2.加護と祝福の大量取得(通称:神チャレ)
夢想神モルモルの権能の一つ「夢見の神託」は、夢空間で会合を開ける能力だ。招集できるのは自らの使徒か信者のうち親和性の高い者。
モルモルはこの神託を“汚腐会”と称し、他の神々も定期的に夢空間に招集できる。
この汚腐会で他の神々と接触し、加護と祝福をかき集める。
奴隷の鎖は重い。だが、モルモルの協力と前世での俺の知識を活かせば断ち切れないはずがない。
俺は心身ともに成長し、発する言葉に重みを乗せる事で、理不尽なこの状況を打開して見せる!
【スキル:言霊】――
これは、俺がこの世界を“言葉で切り従える”ための、第一歩だ。
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