46話 魔道具製造部立ち上げ決定!――ラングはこの時ロックオンされた!
「ラングをロックオンしたナターシャのイメージ」「※AI生成」「AI generated」
クレイマー騒動からしばらくして――
恒例となりつつある“食堂での会食”が、今日も行われていた。
商会の改革について話し合う場としては、そろそろ「ながら会議」――つまり食事をしながらの会議――は卒業してもいいのでは、と思わなくもない。
だが現状、商会改革推進室は正式な部署ですらなく、専用の会議室もない。
食堂の一角を借りるのが現実的な選択肢というわけだ。
そのためラングは、会議に集中するためにも、食事はできるだけ早く済ませていた。
今日の出席者は、ラング、ナターシャ、そしてドグマ。
先日、菜園で“体操着ブルマ”という奇行を披露していたナターシャのことが一抹の不安だったが――
今日はちゃんとした服装で来てくれた。
紺のスーツをキリッと着こなし、まさに“できる女性”のオーラを纏っている。
(……ここ最近、残念な姿ばかりだったから逆に新鮮だな)
久々に「素敵大人女性」なナターシャを前に、ラングがしばし見惚れていると――
ひとりの男性が急ぎ足で近づいてきた。
「ナターシャさん、すみません。急な仕事が入ってしまって……皆さんも、お待たせして申し訳ありません」
ナターシャの席の斜め後ろに立ち、丁寧に頭を下げる。
ラングはナターシャに視線を送って、その男性の紹介を促す。
すると――
「まぁ、そんなに見つめられると恥ずかしいですわ。
そういう熱いまなざしは、二人っきりの時にしてほしいですわね。ポッ」
(……えっ? え? 今日はまともかと思ったのに、開口一番ボケるの!?)
ツッコミを入れるべきか迷っていると、ナターシャが真顔で続けた。
「ラングさん、せっかくボケたのですから、スルーされますと困ってしまいますわ。
私ひとり頭のおかしい人と思われてしまいます。ボケたらツッコミ! そうでしたでしょう?」
「いやいや、初対面の人がいるので……せめて、お互いの紹介が済んでからにしませんか?
それと、口で『ポッ』って言うのやめましょう」
ラングが控えめに突っ込む。
「まぁ、うれしい。ツッコミいただきましたわ!
私とラングさんの仲ですものね。人目なんて気にせず――荒々しく突っ込んでくださいまし!」
「言い方! 誤解を招く言い方はやめてください! しかもここ、公衆の面前なんですから! 荒々しくなんて無理です!」
ラングは真面目にツッコまずにはいられない。
「では、やさしく……」
「だから言い方ァァ! 初対面の人、めっちゃ困ってますから!!」
ナターシャのラングに対する距離感は、日を追うごとにおかしくなってきている。
なぜこんなにグイグイ来るのか、ラングにはまったく理解できないのであった。
「お約束はこれくらいにして――では、早速ご紹介いたします。こちら、マニフェスさんです」
ナターシャが紹介したのは、一人の小柄な男性だった。
「これまで倉庫番として働いておられましたが、今回リヤカーの製造販売に伴い、魔道具製造部を新設することになりました。その関係で、倉庫課は統廃合され、マニフェスさんはドグマさん率いる新部署に配置換えとなる予定ですわ」
(おいおい、お約束の一言で片づけられたよ……。それにしても、話が急すぎないか? この人、どんな人物なんだろう?)
ラングが探るようにマニフェスを見ると、彼は軽く頭を下げた。
「初めまして、マニフェスです。倉庫課がなくなると、行くあてもないので……拾ってください。チラッ」
「その潤んだ瞳で見つめられても困ります! その視線は責任者になるドグマさんへ向けましょう! それと“チラッ”は口で言わない!」
ラングは早くも押され気味だった。序盤からボケが立て続けに飛んでくるとは思わず、心の準備が追いついていない。
「ところで……俺たち奴隷が、一般職員の上司になるって問題ないんですか?」
ラングは、素朴な疑問をそのまま口にする。
「ええ、まったく問題ありませんわ。むしろ、ドグマさんには商会からの正式な依頼を引き受けていただく立場。責任者として相応のポジションについていただくのは当然ですの。
加えて、ドグマさんの功績はラングさんに次ぐと当商会では評価しております。実はもう間もなく、奴隷から解放される予定なんですのよ」
ナターシャはにこやかに、二人の顔を交互に見ながら話を続ける。
「実はその件、今日改めてご相談するつもりでしたの。
お二人が開発された新たな運搬道具――『リヤカー』と『ネコ車』には、非常に高い潜在需要があると私どもは見ております。既にいくつかの方面から引き合いもございますし、今後商会にもたらされる利益は相当なものになる見込みですわ」
ナターシャはそこでドグマの方へ笑顔を向け、言葉を続けた。
「将来性の高い製品開発と、運搬効率の劇的な改善。これらを総合的に評価し、解放に必要な原資の返済は既に完了したと判断しました。
ドグマさん、正式な日付はまだ決定しておりませんが、奴隷からの解放は間もなく実施されます。もしよろしければ、その後も幹部の一員として、我が商会に引き続きお力をお貸しいただけないでしょうか? これはアルバート会頭からの強いご要望でもあります」
(なるほどな……)とラングは納得する。
“奴隷のままでも昇進できる”という建前はある。だが、対外的な印象を考慮すれば、解放後に昇進――そして新部署の責任者に据えた方が、何かと体裁が良いということだろう。
あとは、ドグマ本人がどう判断するかだ。
「話は理解しました。ご提案、承りました。ただし、一つだけ条件があります」
ドグマは静かに、しかしはっきりとした口調で言った。
「ここにいるラング君が、解放後にこの商会を離れるようなことがあれば……そのときは私も行動を共にします。ですので、「ラング君が在籍している限り」、私も商会に残るということでお願いしたい」
「その点、承知いたしました。つまり、ラングさんを捕まえておけば大丈夫、ということですね」
ナターシャは微笑みながら頷いた。
「でしたら――私の全身全霊で、ラングさんを捕まえさせていただきますわ。お任せくださいませ」
(えっ……ちょ、待って? なにこの展開?)
ナターシャの目が――さっきまでと明らかに違う。獲物を狙う捕食者のように光っていた。
(全身全霊って……まさかハニトラ!? ダメダメ、いくら中身は大人でも、体はお子ちゃまなんだから、それはちょっと……)
――じゃあ、大人になったら?
(そりゃ……「苦しゅうない」ってなるよね)
だって――
ちょっとおかしなところはあるけれど、どストライクなタイプなんだから。
(でも、お願いだから、今この場で舌なめずりするのはやめて? こっちに狙い定めないで……!)
この物語では、妄想が爆発し、暴走しがちなキャラクターが今後も登場します。
ですが、青少年の権利と保護を念頭に置きつつ、楽しく健全に物語を描いて参りますので、安心してお付き合いいただければ幸いです。




