表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/114

33話 お嬢に笑顔を2

ラングはドキドキする胸の鼓動を抑えながら言葉を続ける。


「皆さんは普段肉や魚ばかり食べているから、植物なんてどれも似たりよったりに見えてると思います。あの草や、その木……、そんなものはさりげなく見渡した風景の一部分でしかないというか、目に入っても気に留める人なんていなかっただろうと思うんです。」


「でも、食べてみるとこれが――本当に美味しいんですよ!」

ラングはぐっと身を乗り出し、声に熱がこもる。

「旨味たっぷり野菜や、香さわやか香辛料、それから……今日この後出てくる、とっておきの甘味まで!」


「味を魔法みたいに七変化させちゃう事もできるんです!石ころに見えるなら、勝手にそう思ってればいいんですよ!気付く人は気付くし、はっきり言って気付いたもん勝ちってなもんで、気付かない人なんて放っておけばいいんです。他人は他人、人は人。わかってくれる人と仲良しこよし、わかってくれない人は放っておけってね」

ラングはエマルシアに向けて、にかっと笑いながら親指を立てた。


「えっ、あっそうね。なんか途中から話が変わってしまったみたいだけど、ラング君の言いたい事わかる気がする……」

エマルシアはふっと体の力が抜けるような感覚を覚えつつ自然に笑みを浮かべた。



「坊主のご高説とやらはもう済んだか?ならさっさと”例のやつ”をお嬢に食べてもうとしよう。お嬢覚悟しておけ!口から目ん玉飛び出すぞ!」

料理長は自信に満ちた笑みを浮かべ食堂メンバーに合図を出した。


「おっちゃん言い方!あんまりだよ……」

調子が出てきた……と思ったら、叩き潰されてしまったラングであった。


「ふふふ……」

そんなやり取りにエマルシアも控えめな笑い声を上げた。



「はい、新作スイーツ”クレープ”です。魔牛のミルクに玉子とバターと砂糖を混ぜた生地で、たっぷりの生クリームを挟んだものですよ!ラング君によれば、イチゴやバナナっていう果物を入れるともっと美味しくなるみたいだけど、果物は高価すぎるから、今回はごめんなさい。でも、十分目ん玉飛び出すほど美味しいから是非召し上がってね!」

皿を運んできたスーベが簡単にスイーツの説明をしつつ、テーブルにそっと置いた。



途端に漂う甘々な香りに一同目が釘づけだ。

ここからはもう言葉はいらない、さぁ己の欲のままにかぶりつけ!



「はむ……んっ!?…………キャ~~。なにこのふわとろ極甘天国~~!この……飲み込みたいのに飲み込みたくないってどういうことなの?意味が分からない、こんなの私知らない!このなの私はじめて~」

頬を赤く染め無垢な少女が叫ぶ破壊力よ……


中身大人のラングは妄想が膨らみ、想像が変な方向に行きそうになった……



その後もワーキャー大騒ぎをしながらエマルシアはクレープを平らげた。



「私こんな美味しい物今まで食べた事ないわ。もう他の物じゃ満足できない体になってしまったかも……」

エマルシアはペロリと唇を舐めながら追撃の一言を放つのであった……。



ラングはなぜか前かがみになって見悶えた。



ここで――、スイーツを運んだまま、お嬢が食べる姿を見守っていたスーベが声をかける。

「お嬢またいつでも来てくださいね。またクレープ作って待ってますから。」


「こら、スーベ!そこはワシがお嬢に言葉をかける場面じゃ!ワシの見せ場を取るとはまったくけしからん奴じゃ。しかも、まるで自分が作ったかのように言いおって……。貴様はシャカシャカかき混ぜてた程度だと言うのに」

料理長はプンスカ怒りながら、スーベに詰め寄った。


「料理長ひどいですよ~。魔牛の乳から生クリームの素を作り、何時間もかき混ぜて生クリームを作ったんですよ!腕ぱんぱんになりながら頑張ったのに~」

スーベは涙目で訴える。


「あ~~ズルい!俺だって早起きしてバイオレンスチキの巣に卵取りに行ったんだよ!あの凶暴な鳥から逃げ回りながら、体のあちこちつつかれて!」

本当はスキル【言霊】で強化したジョナサンを囮にして、その隙に卵をかすめ取ってきたラングであったが……まあ、美少女の前では見栄の一つも張りたくなるお年頃ってことで、今回は自分に甘くしてもいいだろう。



「ウフフ。みなさん頑張ってくれたんですね。私今日ここに来てよかった。ほんとありがとう」


エマルシアははにかみながら感謝の言葉を告げた。


お日様のような笑顔を浮かべて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ