2話 この世界のスキルについて
「まずは、スキルのことを知ろう!」
モルモル――俺がそう呼ばないと拗ねるので、以後こう呼ぶことにする――は、手のひらに魔法陣のような光を浮かべながら口を開いた。
「この世界のスキルには、大きく分けて四つのグレードがある。初級・中級・上級、そして伝説級。それぞれ≪初≫≪中≫≪上≫≪伝≫の文字で示されるよ」
「そのまんまだな」
「うん、そのまんまだね。でも、侮っちゃダメだよ。たとえ初級スキルでも、努力と工夫次第では、伝説級――はちょっと難しいとしても、上級に匹敵するくらいには化けることだってあるんだから」
モルモルは目を輝かせて、続ける。
「さらに、どのグレードにも『レベル』があるの。初級から伝説級まで、それぞれLv.1からLv.10まで存在するわ」
「つまり、≪初5≫とか≪上3≫って感じで表記されるってことか」
「そうそう。スキルの成長段階を数字で把握できるから、わかりやすいでしょ?」
そう言いながら、モルモルは手のひらの魔法陣を指ではじいた。
すると俺の目の前に、淡く光るステータスウィンドウが浮かび上がる。
……おお、これぞ異世界ファンタジーってやつだ!
「次に説明するのは、スキル補正についてだよ」
「補正?」
「うん。スキルには基礎効果があって、そこにレベル補正がかかるの。たとえば、初級なら基礎補正は50%前後。そこにスキルレベルを掛けると、最終的な効果が決まるのよ」
「ん?……ってことは、≪初5≫だと、50×5で250%補正ってことか?」
「正解! ≪初8≫なら400%。強くなればなるほど、目に見えて威力が変わってくるわ」
モルモルは得意げに胸を張った。小さいけど。
「じゃあ、≪上6≫だったら……?」
「よくぞ聞いてくれました!」
モルモルはわざとらしくポーズをとると、ニヤリと笑った。
「上級の基礎補正は5000%よ。そこにレベル6を掛ければ……?」
「……げっ、30000%? つまり300倍!?」
思わず、声が裏返る。
「そうなのよ~。グレードが上がると、補正倍率も桁違い。だから上級スキルって本当にすごいんだから」
モルモルはうんうんと何度も頷くと、さらに言葉を重ねる。
「ただし、同じグレードでも個体差があるの。中級スキルの基礎値はだいたい5000%だけど、中には3000%しかないハズレもあれば、8000%みたいな当たりもあるのよ」
「ふぇえ……スキルって奥が深ぇんだな……」
「でしょ? ちなみにね、私が君に直接授けられるのは初級スキルまでだから、そのへんはよろしくね♪」
へらっと笑うモルモル。
このちっこい神様(?)、妙にノリが軽いけど、話はけっこう大事だぞ。
[スキル] = グレード × レベル補正
グレード(4種):
┌───────────────┬─────────────┐
│ グレード名 │ 基礎倍率 │
├───────────────┼─────────────┤
│ ≪初≫(初級) │ × 50 │
│ ≪中≫(中級) │ × 500 │
│ ≪上≫(上級) │ × 5000 │
│ ≪伝≫(伝説級) │ ×50000 │
└───────────────┴─────────────┘
レベル補正:Lv.1~Lv.10(各グレード共通)
例)スキル ≪上6≫ の場合
→ 基礎倍率5000 × レベル6 =【補正値:30000%】(=300倍)
※ただし、個別スキルには“素体倍率”の個体差あり。
例:≪中≫でも3000~8000とバラつく場合がある。




