表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/114

22話 ドグマチャレンジ

ラングとホルスは、カイエイン商会の敷地内にある空き地にいた。


休みの日を利用して、仲間たちと密林から運び出した木を適当な長さに切り、杭打ちの作業に取り組んでいる。


空き地の一角を囲い、農地を作るための準備だ。


ふたりは週に三日ほど、運搬部での仕事を午前中に切り上げ、午後はこうした作業に時間を割いていた。


ラングはその日々の中で、少しずつドグマへの働きかけも続けている。



はじめのうちは、朝に夕に挨拶を交わし、二言三言(ふたことみこと)声をかける程度。

予想通り、取りつく島もなかった。


視線すら合わせず、完全無視だ。


だが、こうしている間にも――ドグマの身には、確かな変化が生じていたのだ。


ラングが投げかける“二言三言”の言葉。それはスキル【言霊】の力によって、ドグマの体調をすこぶる良好なものへと導いていた。


「おはようございます。今日も頑張ってくださいね!」


そんな励ましの言葉がかけられた瞬間、ドグマの体が淡く光り、知らぬ間に活力が湧いてくる。


「お疲れさまでした~! ゆっくり休んで、また明日もよろしくお願いします!」


仕事を終えて戻ってくれば、今度は労いの言葉。するとまた体が光り、疲労感がすっと抜けていく――。


肌艶なんかがまるで別人のように見える。



そうこうするうちに、ある夜のこと。

食堂を後にするドグマに、連日まとわりついてくるあの少年が小包を差し出した。


「お疲れ様のご褒美です!」


そう言って、おもむろにドグマの手に押しつけてきたのだ。


ほとほと迷惑していたドグマは、部屋に戻るなりその訳のわからぬ小包を捨てようとした。


だが――袋から漂ってくる甘い香りに、思わず手が止まる。


つい……口にしてしまった。


「なんじゃこれは!!!!」


思いもよらぬ衝撃に、ドグマは叫び声を上げたのだった。


そして翌日も、その翌々日も、同じように小包は届けられた。


さすがに、黙っているわけにはいかなくなったのだ――。




「何が目的だ。あるなら正直に話せ」

ドグマは、真っすぐに問いをぶつけてきた。


「実は……お願いしたいことがありまして……」

ラングは相手の顔色をうかがいながら、おずおずと切り出す。


「まったく、けしからん奴だお前は」

ドグマは心底呆れた様子でため息をついた。


「人を食い物で釣ろうだなんて、あさましいにもほどがある。

……だがな。あんなとんでもないもので餌付けされてはかなわん。反則もいいところだ」


ドグマはぽつりと吐き出すと、肩をすくめて続けた。


「負けだ負け。もう、あの口いっぱいに広がる“甘い幸せ”を知ってしまったからには、元には戻れぬ。

さあ言え、俺に何をさせたい?」


こうして、ドグマはラングの“甘味作戦”に屈したのだった。




ドグマを仲間に引き入れるべく、ラングは“おっちゃん”――料理長に相談を持ちかけていた。


「スイーツを食べさせればイチコロじゃ」


そう助言されたのだった。


そのため、まずは徐々に距離を詰め、タイミングを見て“一気に甘い物勝負”を仕掛ける作戦に出たのである。


そして――作戦は見事成功。ドグマの協力を取り付けることに成功した。


「フム、それはとてつもない話だな。お前らがその“砂糖”とやらを作り出し、今後も生産し続けられると?

しかも農園……だと? そんな見たことも聞いたこともないようなものを、いったいどうやって思いついた。お前は一体、何者なんだ」


そう言って一息ついたドグマは、静かに、しかし確かな決意を込めて続けた。


「まぁよい。その話、乗ろう。

俺がその“リアカー”だの“ネコだか犬だかの車”だのってやつを作ればいいんだな?

そしたらまた……あの”甘焼き菓子”が食えるんだな?」


「もちろんです! 甘焼き菓子だけじゃありません。いずれ他にもたくさんの甘味が食べられるようになりますよ!」


「なんと……甘焼き菓子以外の甘味もか!」


「はい、作れます!」


「そうとわかれば、すぐに犬猫車を作るぞッ!」


ドグマの意気込みに圧倒されつつも、ラングは満足げに頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ