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19話 新たな理解者

挿絵(By みてみん)

「今話のイメージ」「※AI生成」「AI generated」




ドワーフの食に対する評価基準を思い知らされたラングは――


おっちゃん――食堂の料理長「トルマ」の兄である「アルマ」支配人も”酒と甘味”双方を愛する人であって欲しい……そう願うのだった。



見事”会心の一撃”をお見舞いする事ができるのか、いよいよクライマックスを迎える。


今回は、――1点勝負だ。


決戦に向けラング自らスイーツの説明を始める。


「え~、次にお出しするのはてんさい蜜を使った『蒸し焼きプリン』です。

精製したてんさい糖の蜜を使用したプリンという甘味となりまして、底に焦がし蜜を敷いております。 全体的に甘いのですが、食べ進むうちに焦がし蜜の深い甘みが口の中で広がり、二種類の甘さを楽しめます。」


これはラングが転生する前の世界で好きなスイーツだった。

仕事が立て込んでいる時の休憩で、脳の養分を度々補ってくれた思い出の味だった。


ちょうどスーベが厨房から運んできて、テーブルの上にそっと置いた。

今回は二人分ではなく、ラングや仲間達の分もある。


一緒に食べてしまえば、前回みたいにお預けを食らう事もないというのが一番の理由である。

同じ轍を踏むほどラングは馬鹿ではないのだ。



「坊主よ、今回はみんなしてスイーツを食べるわけじゃな。 前回の当てつけというわけではなさそうじゃが、確かに賢いやり方じゃ。 まさか胃の中の物を出せとも言えんからの」


料理長は笑いながらラングに話しかけてきたが、目は笑っていなかった。


(絶対俺達の分を狙ってたな)


「まぁまぁ! 下種の勘繰りは止めて、みんなで楽しみましょうよ、みんなでね!」

ラングも負けてはいない。


「みんなで食べる」


その事を強調しておけば、料理長だってこれ以上は何も言えないであろうという目論見なのだ。


「ちっ」


大人げなく舌打ちまでして、悔しさを隠そうともしない料理長を見て、ラングはつくづく思い知らされた。


「食べ物の恨みは恐ろしい」と。


こうして会心の一撃が、いの一番に料理長を直撃した。


(おっちゃん、悪いね。 食とはつまり戦いなんだからさ)



ラングはプリンを取りに行こうとしていたスーベを捕まえ、

あまつさえスキル【言霊】を発動してまでこう言ったのだ。


「プリンは全部持ってきてくださいね!」


スーベは体をグワングワン光らせてプリンを取りに行ったのは言うまでもない。

しかもいつもの黄色に混じって、赤い光が点滅までしていたというのだから驚きだ。


それだけ、ラングの甘味への渇望が勝っていたという証なのだ。



☆ ☆



「アム。うまいぞ~やはりスイーツは最高じゃ~~」

食いしん坊ドワーフその壱の咆哮が木霊した。


「トゥルン。なんだこれは、本当に甘い。甘さが脳天を突き抜けていく~~!!」

食いしん坊ドワーフその弐の魂の叫びが木霊の二重奏を奏でた。


「まぁなんてことなのかしら。口に入れた瞬間、ふわりとほどけ落ちていく。まるで水面に広がる波紋のように、甘さが口いっぱいに広がって──。濃厚な玉子のコクが根雪のように口に残り、草原を吹き渡る涼やかな風にくすぐられながらまだ目覚めたくないと思わず願いたくなるような余韻を想起させるのですわ」

ナターシャは恍惚とした表情を浮かべまるで一編の詩のような感想を述べた。


脳筋丸出しの前二者のそれとは比べるべくもない素敵な言い回しに思わずラングは”キュン”となった。


(あぁ見た目通り知的で素敵な女性だな。ちょっぴり憧れちゃうや)



そんな満ち足りた味わいのひと時はその後すぐに打ち破られた。



「これで全部か?あともう少し作らなんだか?」

往生際の悪い()()()が吠える。


「もうこれでお終い。もうないってわかってるでしょ?作ったのは自分なんだから」

もう少し余韻に浸っていたかったのに、現実に引き戻されたラングは不満げに返事を返す。


「そうか~。お代りはできないのか~」

往生際の悪い()()()が嘆く。


いつまでも余韻に浸っていたい気持ちを断ち切るように、ラングは立ち上がった。


「さて……堅苦しい話を始めますよ」


甘さの余韻が残る舌の上に、今度は現実の言葉が乗せられていく。



そして――


《食の改革から始まる、革命へのロードマップ》についてプレゼンを開始したのだ。




……というわけで、農耕と畜産による食料の安定供給、調味料の開発を通じた豊かな食文化の形成、その結果としてのより豊かで成熟した社会を実現させたいと思います。



思わず拍手が鳴り響き、場に一瞬静寂が訪れた。



「えー……とても素晴らしい提言をありがとう、ラング君。内容も見事だったよ。段階を踏んだ無理のない計画、二手三手先まで見通した明確なビジョン。そして何より――今日、この舌で味わった“食の可能性”が、私にこの計画を進めよと物語っている。

私は以後、全力でこの計画をサポートしよう。詳細については、ここにいるナターシャ君とともに会頭に報告した上で、順次すり合わせていくつもりだ。《食の改革から始まる、革命へのロードマップ》──ぜひとも、成功させようじゃないか」


こうしてラングとその仲間達によるプレゼンは大成功に終わった。

もちろん料理長の全面協力があってのことだから、今後とも大いに頼る事となろう。


カイエイン商会のNo.2という実力者を味方につけた今──


ラングは、いや、ラング達は進む。


この世界に“うまい”を広めるために。


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