17話 思わぬ事実の発覚と運命の出会い
秘書のナターシャのイメージ
「※AI生成」「AI generated」
今後を占う大切な話し合いの場は、思ったより早くやってきた。
その日の晩、俺たちは食堂で、おっちゃんの――いや、料理長の“本気料理”に舌鼓を打っていた。
すると、不意に厨房から顔を覗かせたおっちゃんが声をかけてきた。
「おい坊主。明後日の晩、体を空けられるか? 例の話し合いをするぞ」
ぶっきらぼうな口調で、料理長がラングに言葉を投げる。
「え~と……その日なら大丈夫だよ。ね、みんなも平気だよね?」
ラングは、同じテーブルを囲む仲間たちに視線を向けた。
「「「「うん(お〜)」」」」
仲間たちは、ほぼ揃って元気よく返事をした。
「なんじゃ小僧、さっきの間は。いかにも予定が詰まってるようなフリをしおって。 どうせ予定なんぞ真っ白のくせして」
料理長は意地の悪い笑みを浮かべながら言った。
「おっちゃん、それ言っちゃおしまいだよ~。少しくらい見栄を張らせてよ〜〜」
ラングは口を尖らせて不満をぶつける。
「ふん。今さら格好つけても手遅れじゃ。お主なんぞ、どう逆立ちしたって“イケメンキャラ”にはなれんからな」
そう言い放つと、料理長は鼻を鳴らして厨房へと引っ込んでいった。
「おっちゃんひどいな〜……。いずれ“ハーレムルート”を進む予定だってのにさ」
テーブルの端で、ラングがぼやいた。
それはもはや、負け惜しみというよりは、願望に近いものだった。
「なぁ兄弟、気ぃ落とさんとき。いずれ道の曲がり角で“食パン”いうもんくわえた美少女とぶつかって、恋が始まる言うとったやろ」
すっかり“元の世界のお約束”に染まりきったコモドン氏が、励ますように言った。
(しめしめ俺が密かに進めている”元の世界の知識”の刷り込み作戦は順調のようだ)
☆
約束の日時、ラング達は連れ立って食堂に向かった。
食堂にはすでに数人の姿があり、テーブルの上には湯気を立てるスープや香ばしい焼き物が並んでいた。
食欲をそそる匂いに誘われるように、ラング達はそっとテーブルの前に立つ。
「おぉ来たか。遠慮せず、ワシらの向かい側に座れ」
料理長のぶっきらぼうな呼びかけに応じ、ラングはテーブル前まで進むと一礼した。
「本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。僕はラングと申します」
きちんとした口調で挨拶をしながら、反対側に座る三人の顔を順に見ていく――と、
そのうちの一人を目にして、思わず息を呑んだ。
(エルフきた~~~~っ!!! しかもテンプレに忠実すぎるほどの超絶美人! きょ、巨乳まで完備とか何このご褒美回!?)
異世界といえば絶対に外せない存在、エルフ。
美しい顔立ちにスラリとした体躯、そして服の上からでもわかる圧倒的ボリューム。
あまりのテンプレっぷりに、ラングのテンションは一気に跳ね上がった。
(俺は紛れもなく異世界に転生したんだ……)
今さらながら痛感するラング。
これまでに獣人やドワーフといった異世界の定番種族にはすでに出会っていたというのに、なぜ今さらここまで実感がこみ上げてくるのか――
あろうことか、けしからぬ妄想まで膨らみかけてきた。
……男とは、まったくもってしょうもない生き物なのである。
「では、失礼します」
ラングが”邪念”に取りつかれている間に、仲間たちはきちんと挨拶を済ませていた。
そのまま一斉にイスを引き、料理長たちと向かい合って腰を下ろす。
もし隣のコモドン氏にひじで突かれなければ、ラングは締まりのない顔をしたまま、いつまでも立ち尽くしていたかもしれない――。
「なんじゃお主らそんなに畏まって。こちらもきちんと紹介せにゃならんじゃないか。よしそれなら……」
料理長は少し改まった様子で席を立ち、右側の男性を指した。
「支配人じゃ。その横がナターシャさんじゃ」
もったいぶったわりに、あまりにあっさりとした紹介に、ラングは思わずずっこけそうになった。
「おっちゃ……じゃなくて料理長~~~~!いくらなんでも端折り過ぎだよ~~!」
ラングは思わずいつものようにツッコミを入れる。さすがにおっちゃんとは呼ばなかったが……
「あぁこそばゆい。いつも通りおっちゃんと呼べ。変に気を遣わんで良いぞ。そっちは俺の兄貴で、隣が話の分かる秘書さんじゃからの」
料理長はさらっと重要な情報を告げる。
「「「ええ~~~~お二人は兄弟なの(なんですか)~~~!!」」
(支配人さんもドワーフだとは気づいていたが、まさか二人が兄弟だなんて……)
驚きを隠せないラングだったが、どう見てもそれは”スタイル抜群の美人エルフ”に気を取られていたせいであるのは明白だった。
「やぁみんな急にお呼びだてして悪いね。”ラング君”だったね?弟からあらましは聞かせもらったんだけど、随分ワクワクする話じゃないか。これは一度会ってきちんと話を聞かせてもらわねば、しかもなるべく早く――そう思ってこの場を設けさせてもらった次第なんだよ」
支配人はその場で席を立ち穏やかな笑顔を浮かべながら皆の顔を順番に見渡しつつ語った。
「皆さま初めまして。会頭の秘書を務めますナターシャと申します。どうぞお見知りおきを。どんなお話をお聞かせいただけるか、楽しみにしておりますわ」
ナターシャもその場で立上り優雅な仕草で挨拶を行った。
(うわ~足なが~~。それにほっそ~~。あんなのリアルに存在していいの!?)
思わず見惚れるラングなのであった。




