表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/97

序章

ご覧いただきありがとうございます。

ブックマークやリ思い入れを頂けるととても励みになります。

よろしくお願いします。

挿絵(By みてみん)

今後登場予定「秘書の女性キャラ」のイメージ

「※AI生成」

「AI generated」


目を覚ました瞬間、俺は絶望した。


カビ臭い、暗くて狭い部屋。

全身に鈍い痛みが広がり、体を少し動かすだけでも激痛が走る。


わけが分からないまま、胸の奥に流れ込んできた――記憶。


一族郎党を皆殺しにされ、奴隷として売られ、

希望もなく、夢もなく、ただ生きるだけの毎日で、心まで擦り切れ……

やがて、自ら命を絶とうとした少年の姿。


どうやら俺の魂は、その少年の中に――封じられていたらしい。


転生? 奴隷?

……なんだこの罰ゲームは。


☆ ☆ ☆


始まりは、あの妙な空間だった。


気づけば俺は、黄金の髪を持つ、まるで絵画のような美しい女性と向かい合っていた。

整いすぎた顔立ちに目を奪われていると、突然彼女が口を開いた。


「……あなた、ウザいんですけど。同じ空気吸うとか、マジ無理なんですけど?」


(え、今なんか、罵倒された? 俺、何かしたっけ……?)


「今わたくしが、元の世界で死んだあなたの魂をこの異世界に召喚したところですが――

全然ダメ。不合格。いえ、私の大切な時間を無駄にした時点で評価マイナス。よって、奴隷として苦痛の中で朽ち果てなさい。

あ、それと、下手に抵抗されても面倒だから、記憶は封印して――」


そこから先は、意識が急速に遠のいていった。

全部は聞き取れなかったが、ひとつだけ確かにわかった。


――これは、とんでもなくヤバいことになってる。


☆ ☆ ☆



「やっと見つけましたよ~!」


間の抜けたような声が耳元に響く。


目を開けると、俺の手をブンブン振り回す女の人がいた。


(誰だ……? えらくいい笑顔してるけど……)


「覚えてます? 腐神ちゃんでーす! 先生のファンで~す! 応援コメント、よくしてたんですよ~!」


期待に満ちたキラキラの目でこちらを覗き込んでくる。


「正直に言っていい?」


「はいっ!」


「ごめん、全然覚えてない」


「がーん……!」


「思い出そうとすると、なんかこう……頭が痛くなってきて、あたたた……」


「あっ、そうでした! 記憶、封印されてたんでしたよね~。

 ならば、えいっ!」


気合の入った掛け声とともに、俺の頭を両手で掴んで、右に左にぐわんぐわん。


「……どうです? 何か思い出しました?」


ぐったりする俺を覗き込む彼女は、自らを“夢想神”と名乗った。名前は――モルベスト・ルミス。


つまり神様らしい。前世で売れないラノベ作家だった俺の、熱烈なファンだったとか。


そして、俺の突然の消失を知った彼女は、神力を駆使して探し回った末に、ようやく今の俺を見つけ出したという。


その結果わかったのが、「異世界転生&奴隷ルート」。

しかも、「加護なし・スキルなし・祝福なし」の“三なし”仕様。

おまけに、魂ごと少年・ラングの中に封じられ、意識まで失っていた――という最悪のオチ。


やったのは、あの妙な空間にいたものすごいべっぴんさん。

なんでも気まぐれで身勝手この上ない上級神だそうで・・

今目の前にいるモルバイトさん?よりも格上の存在らしい……


「先生、モルバイトじゃなくて“モルベスト”!」


「あ、めんごめんご。……って心の声、聞こえた?」


「はい!一応神ですから~」


「怖いな……。下手なこと考えられねぇじゃん」


「あれ~?先生今変なこと考えようとしてたんですか?

いやぁ困ったなぁ。目の前にこんな美女が現れたら妄想も膨らんで……ついでに――」


「はい、ストップ。“膨らんで発言”の続きはNGで!」


「ところで、眠っていた俺を目覚めさせてくれたのがモルベストさんって事なんだよね?」


「はい。どうにか先生を見つけられたと思ったら、死ぬ間際の奴隷の男の子だったのも驚いたし、

記憶ごとその男の子に封じられて――先生も一緒に死ぬ直前だったんですよ!

ちくしょうめ~あのくそ女神が、鬼、悪魔、ちんどん屋!」

何故かモルベストさんがぷんすか怒り出した。


「どうどうどう。落ち着いて。気持ちはわかる。

というか俺なんかのために怒ってくれてありがとう。」

彼女の怒りが静まったのを確認して俺は続けた。


「それにしてもいくらなんでもひどすぎるよね。

俺が頼んでもいないのに召喚しておいて、キモいとかそんな理由で普通ここまでする?」


「いえ、普通じゃないんですよ、あのくそ女神。

でも、下級神の私じゃ、太刀打ちできませんし……。ショボン。」


(ショボンって口で言ってたけど、とりあえずスルーしとこ……)


「だから不肖モルモルが先生を全力で推しまくります!」

妙なテンションで拳を振り上げる夢想神。


「ですが、チートスキルとかは無理なんです。残念ながら授けられません。

下級神の私じゃせいぜい――、私の神性に関わる範囲での加護や祝福くらいが精一杯……」


「ですがご安心あれ~。小技・裏技の限りを尽くして、必ずやお役に立ってみせます!

そのために、先生のお知恵を是非ともお借りしたい!」


(ん?なんか勇ましい事言ってた割に最後おかしな事言ってたような……)


「俺の知恵を借りたい?どういうこと?説明プリーズ」


「それはですね、正攻法で行ってもこの世界では成り上がる事はできません。

もう悲しいくらい格差のある世界なのです。今先生がいるのは。」

モルモルさんはここで言葉を切りさらに続けた。


「ですが、抜け道ならいくらでもあります。前世の知識と発想で、チートの代わりになる手段を一緒に探しませんか?」


(なんだかおかしな展開になって来たぞ……頼りになるのかならんのかさっぱりわからんが――

頼れる人も他にいないのも事実。それならば……)


「わかった!そういう事なら協力するのはやぶさかではない。と言うか全身全霊で小技・裏技を考えてやろうじゃあ~りませんか~!」


こうして、夜通しの作戦会議が始まった。

奴隷という最底辺から、俺は這い上がってみせる。


異世界で、ゼロから――いや、マイナスから成り上がるために。

この腐った運命ごと、ひっくり返してやる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ