11話 凶暴なる異世界のニワトリ達
「今後本編に登場するヒロインの紹介”エマお嬢”」
「※AI生成」「AI generated」
肉や魚が主食のこの世界では、植物なんて、そこらじゅうに生えているだけの、ただの石ころ同然だ。
”トレルの実”や甘い果実という例外はあるものの、見向きもされないのが普通なのだ。
ましてや、土の中にあるものなどどこの誰が興味を持つと言うのだ。
魔物のように大きく、凶暴な存在が闊歩する世界。
強くて”でかい”ものが”美味い”という単純この上ない理。
さらに海の近いこの港町では巨大な魚介系の魔物もわんさかいるのだ。
これらを単純に火で焼き、塩でも振れば”極ウマ料理”のできあがり。
そんな世界で”土いじりをしている者”の姿を見たら、皆腹を抱えて笑うことだろう。
いい年した大人が、たまの休日に何を馬鹿なことをしてるんだって、笑いものにされるに決まってる。(まあ、一人子どもも混じってるけど……)
だがそんな事はかまわない。
何故ならここまで収穫したものの中に起死回生とも言えるとんでもないポテンシャルを秘めた逸品を見つけたからだ。
その話は後に回すとして、そろそろ帰るとしよう。
そう考えていた俺の耳に突如けたたましい何かの叫び声が聞こえた。
俺は慌てて声の聞こえた方に目を向けると――、
そこにいたのは、大きな鳥――そう、俺の元いた世界にもいた“ニワトリ”だった。ただし、今にも俺たちに襲いかかろうとしていた。
だがそいつが近づくにつれ、俺の知るニワトリとのあまりの違いに思わず腰を抜かしそうになった。
で、でかい!
体高は1メートルを優に超え、俺の背丈とそう変わらない。
大きさ的にはダチョウと肩を並べるくらいだった。
そんなやつが1羽、翼をバタつかせて猛然と俺達に迫ってきたのだ。
しかも、その後ろから続々とこちらに向かっている姿が目の端に映っていた。
なんてこった……今日はバトルモードじゃないってのに。おかしいだろ、これ。
ひょっとして水魔法担当のあのおばちゃんの一言がフラグだったのか?
異変に気付いた仲間達もにわかに身構える。
しかし、俺達にはこれといった武器すらないのだ。
武器代わりに使えそうなものと言えば――
今日ほとんど使わなかったスコップぐらい?
あとは今の今まで使っていたシャベル。
……ん? “シャベル男”の出番ってことか?
(シャベル違いだけどね……”話す”方だから)
勘弁してくれ。そんなネタみたいな展開、こっちは命がけなんだぞ。俺はとにかく、弱いんだから。
こうなったら、みんなに頑張ってもらうしかない。
……というわけで、スキル【言霊】発動。
今の俺にできるのは、全身全霊で仲間を応援すること。それが、唯一の手段なんだ。
☆
「スーベさんあの魔物の鑑定はできますか?」
ニワトリに似た魔物が迫る中、俺はスーベさんに尋ねる。
「ごめん無理だよ。僕が鑑定できるのは”食材”だけだから……」
申し訳なさそうにスーベが答える。
「わかりました。とりあえず今からみんなを強化します。」
俺が言葉を発した瞬間みんなの体が淡い黄色の光に包まれる。
これは俺の効果が他の人に作用している証だ。
「申し訳ないんだけど、俺は戦闘には参加しない。どうせ足手まといにしかならないから……でも、俺を信じて、この場は俺の指示に従ってくれますか?」
俺が続けてみんなに告げると、
「うんわかった。」
ジョンジョンがすぐに元気な声を上げた。
「わかった。君に従おう」
ホルスさんも同意してくれた。
「了解!」
スーベさんも短く答えた。
「ジョンジョン、スコップで殴って! ホルスさんは“牛化”して角で突っ込んでください! スーベさんは少し離れたところから、石を投げて援護を!
恐れる事はないから全力で戦って下さい!」
俺の指示を受けそれぞれ戦闘態勢に入る。
そして……
足元の石を幾つか拾いスーベが先頭のニワトリに投げつける。
石はうなりを上げて飛び、飛び上がったニワトリのすぐ横をかすめていった。
だが、その石が巻き起こした風に気をとられたのか、わき見をしたところを敢然と走り寄ったジョンジョンによってはたき落とされた。
ニワトリは物凄い音を立てて地面に激突し、そのまま仰向けに倒れて足をピクつかせていた。
やった!とりあえず1羽撃破だ!
俺がその感触を味わう暇もなく今度は……
牛化したホルスさんが土煙を上げて後続のニワトリ達に向かって突進していく。
すると、まさに闘牛のごとき突破力の前に次々とニワトリが跳ね飛ばされ、空を舞っていった。
後には完全に伸びて痙攣する白い塊が残っただけであった。
だが、ニワトリ達を蹴散らした当のホルスさんも勢い止まらず大きな木に激突して派手な音を立てながら大の字になってひっくり返った。
危ない!最後尾から俺達に迫っていた最後の1羽が気を失ったホルスさんに襲いかかる。
もはや絶体絶命かと思われたが、スーベさんが次々と投げた石の一つが見事命中し、事なきを得たのだった。
ちなみに今石を投げたスーベさんを含め、戦闘に参加した全員から淡い青の光が輝いていた。
恐らく何らかのシーツを身に着けたのだろう。
予想もしてなかった突然の魔物との遭遇には驚いたが、みんなのおかげで撃退する事ができた。
俺は戦闘に直接加わってはいないけど、緊張が切れたせいか、その場にヘナヘナとへたり込んでしまった。
異世界で初めての”魔物との戦い”になんとか勝つことができた。
だがその喜びにひたりつつ、あまりにもあっけない幕切れに少し違和感も感じていた。
何故ならこの世界の魔物は決して弱くはないはずだ。
それなのに何故こんなにも危なげなく撃退する事ができたのか。
実はそこには、予想もしなかった俺のスキル【言霊】の――驚くべき効果が、隠されていたのだ。
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