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7話 食堂のおっちゃんが出した条件

挿絵(By みてみん)

「夏らしい先行公開」「本編に登場するヒロインの一場面」


「※AI生成」「AI generated」




食堂は、奴隷たちが暮らす社員寮に併設されており、商会で働く他の職員たちも利用している。


メニューや利用時間に違いはあるものの、使用人たちの胃袋をがっちり掴んでる、なくてはならない場所だ。


今回、俺はおっちゃんの”本気”を引き出せるのか試される事となる――。



俺たち奴隷は朝が早い。


仕事も早く始まり、その分だけ終業も早い。


そのため、自然と食堂の利用時間もずらされていて、朝は俺たちから先に朝食をとり、その入れ替わりで一般職員たちがやってくる。


夜も同様に、奴隷が先、一般職員が後という順番が守られている。


 


昼食だけは別だ。


俺たち奴隷は、朝食後に受け取った弁当を作業場に持参し、そこで済ませる。


つまり昼の時間帯に食堂を利用するのは、一般職員のみというわけだ。


お昼の時間が短いのはどの世界でも同じらしく、限られた時間で全員の腹を満たすため、こうした工夫がなされている。


 


食事の内容については――まあ、想像通りだろう。


一般職員に比べれば、質がかなり落ちる。


これをなんとかするのが今の目標となるわけだ。


 


食堂の職員は五人。


調理担当が二人、盛り付けや材料の出し入れをする補助が一人。


洗い場が一人。


そして、火を起こしたり水を準備したりする魔法担当が一人いる。


 


この世界には、ガスや水道といった文明の利器は存在しない。


代わりに魔法や魔道具が使われていて、調理場においてもそれは重要な役割を担っている。


火と水の両方を操れる魔導士は稀だが、火属性の魔道具を使えば、水魔法の使い手だけでもなんとかなる。


調理では水の生成が不可欠だから、水魔法担当の存在は特に大きい。


このように、属性の偏りを魔道具で補うのが、この世界では一般的な常識らしい。


 


さて、俺が言う「おっちゃん」とは、料理長のことだ。


実はこの人、なかなかの腕前を持っている。


品質の劣る食材でも工夫を凝らし、「食べられる」程度には仕上げてくれる。


……いや、あの食材で「ちゃんと食える」だけでも、すでに奇跡だ。


実際、俺たちよりも上質な食材を口にしている一般職員たちからは、高い評価を受けているらしい。


 


これだけの腕があれば、貴族のお抱え料理人にもなれそうなものだが……

(もしかして過去になにかあったのだろうか?)



()()()()()の名にかけて、いつかその秘密を解き明かしてやろう。


 


「おっちゃ~ん、今日もうまかったっよ~」


いつものように厨房の奥へ声をかける。


「おい坊主、おだてたって何も出んぞ」


「お世辞でもなんでもないから。感じたことを素直に口にしただけだよ!」


「ふん、あの程度で美味いなんぞ、聞いて呆れる。奴隷食じゃない、良質な食材でワシが腕を振るった”本気料理(マジメシ)”を食べようもんなら、腰抜かすぞ。かかかっ!」

(ムフフ……スキル【言霊】の効果マシマシの”よいしょ”が効いてる効いてる♪)

 

おっちゃんは、まっすぐで竹を割ったような性格をしているからスキル効果は抜群だ。


口調こそツンツンそっけないけど、顔はにやけてる。


このままおだてれば、木に登っちゃうんじゃなかろうか?


……よし、今だ!


 


「ねえ、もし俺が食材を持ち込んだら、おっちゃんの”本気料理(マジメシ)”、食べさせてくれる?」


ここぞとばかりに懐に飛び込んで聞いてみる。


「ふん、そこらへんのしょうもないもん拾ってきてもダメだぞ? ワシのやる気スイッチは、岩のように固いからの……ちょっとやそっとじゃ動かんぞ。それでもやるというならやってみろ」


そう言いつつも、手元では器用にフライパンを操っていた。


 


「ラングちゃん、いくら料理長の”本気料理(マジメシ)”が食べたいからって、無茶したらダメよ」


心配そうに声をかけてきたのは、魔法担当のおばちゃんだった。


水魔法が得意な魔導士で、俺たち奴隷にも分け隔てなく接してくれる、心優しい大人だ。


 


「大丈夫、おばちゃん。ちゃんと目星はついてるから」


「そうなの? でもいい食材となると、それなりにお値段もするのよ? 無理して魔物なんかに近づいたら自分が食材になっちゃうんだから」


そういうフラグっぽいセリフは、できれば言わないでほしい。


 


「本当に大丈夫だって。手に入れたら、おばちゃんにもご馳走するからね」


あざとさ全開のセリフは、”今の”オイラの得意分野だ。


そのまま食堂を出ようとしたところで、後ろから声がかかった。


 


「お~い、ラングく~ん。忘れ物だよ」


補助担当のお兄さんが小走りで近づいてきて、お弁当を手渡してくれる。


「あ、どうもありがとう。危うく飢え死にするところだったよ」


素直に感謝を伝え、俺は仕事の持ち場へと向かった。


 


これは――アレだな。


「良質な食材を手に入れて、料理長に本気料理を作らせろ!」


的なイベントの発生ってやつだ。


……よし、燃えてきたぞ。

※イラストは本文内容と直接の関係はありませんが、今後登場しますのでお楽しみに!

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