6話 モチベーションは胃袋から──食の改革始めます
「夏らしい先行公開」「本編に登場するヒロインの一場面」
「※AI生成」「AI generated」
一日も早く奴隷から解放されるため、
ひどい職場環境を変えようと考えた俺は、まず“食堂のおっちゃん達と仲良くなる”ことを次の目標とした。
前にも触れたが、俺たち奴隷労働者のモチベーションが低いのは、怠けているからではない。
原因は明確──借金返済中という立場にあるからだ。
奴隷落ちの際に支払われた金額を完済しない限り、俺たちは自由を得られない。
それぞれ事情は違えど、皆が同じ“枷”を背負っている。
衣食住は最低限保障されているが、どれだけ汗水を流しても給金は全額返済に回され、手元には一銭も残らない。
こんな生活に、誰が希望を見出せる?
「たまには美味いもんが食いたい」
「欲しかったあれを買いたい」
「溜まってるから、ちょっと“抜き”に行きたい……(何を?)」──
そんなささやかな願いすら叶わない現実。
そりゃあ無気力にもなる。普通なら、心が折れる。
……だが、俺には前世の記憶がある。
この世界とはまるで違う、もう一つの世界の記憶。
文明、文化、暮らし、そして──何よりも“食”。
特に衝撃的だったのが、主食の違いだ。
この世界では、肉や魚──動物や魔物、港町ポルテアでは魚介類が“主食”として扱われている。
逆に、野菜や穀物など植物系の食材はほとんど無視され、調味料や甘味料も貧弱。味付けも単調だ。
甘味なんて、果物をそのまま齧るくらい。
唯一の例外は「トレルの実」。とにかく成長が早くてよく採れる、栄養価も高い。
だが味は絶望的で、腹の足しにする以外の用途がない。
──けれど、俺は気づいてしまったんだ。
社員寮から倉庫へ向かう途中、カイエイン商会の敷地内にぽっかりと空いた、草木が生い茂る空き地。
そこには、この世界の人々が「雑草」としか見なしていない、見慣れぬ植物たちが群生していた。
でも、俺にはそれが“宝の山”に見えた。
前世の知識があれば、食材としての可能性がある──いや、確信している。
あの空き地の草木を、きちんと調理すれば、奴隷たちの胃袋と心を満たす“希望”になり得る。
もちろん、ただ願っているだけでは何も変わらない。
「生きぬよう、死なぬように働かせるのが支配者の常」と、前世の偉人も言っていた。
だからこそ、まずは“食堂”に接点を作る。
交渉の余地を生み出すためにも、信頼関係を築く必要がある。
──というわけで、俺はスキル【言霊】を最大限に活用し、食堂のおっちゃん達と仲良くなることにした。
ちなみに、ジョナサンと共闘したときに発現したスキル効果は以下の通り。
≪発≫──何かが生まれ、始まり、飛び出す効果
≪真≫──想いの強さが、影響力を変化させる効果
この力を使って、まずは俺の“ごくささやかな野望”──
雑草から始まる革命の、第一歩を踏み出す。
※イラストは本文内容と直接の関係はありませんが、今後登場しますのでお楽しみに!