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閑話10 困った特訓合宿

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課外実習に向けたラングの特訓はその後も続き、料理長やケンシンに稽古けいこをつけてもらう傍ら、企画生産部や魔道具製造部で魔物討伐に向かう際には同行させてもらい、実戦経験を積んでいった。


希が強くなれば自動的にラングも強くなるとは言え、能力値がそのまま戦闘での強さとはならない。

やはり実戦での経験こそ真の強さへの道であり、周囲との連携の大切さも学べるからだ。


そうしてハードな毎日を過ごすうちに、ついにその日がやって来た。


学園の連休を利用して、エマルシア達3人にラングや希、コッコを加えたパーティーで課外実習前の最初で最後の特訓合宿が行われたのだ。


参加者は上記パーティーメンバーに加え、発案者である料理長、会頭、そしてアリッサの父が引率者として同行することになった。

さらに今回は野営に必要な食材の判別も重要な学習要素であるため、食材判別のプロであるスーベ、そして以前バイオレンスチキを捕獲する際に護衛を引き受けてもらったAランク冒険者パーティーにも同行をお願いした。


……はっきり言って過剰戦力である。

だが、未成年者だけで遠方に特訓合宿を張るなんて事はできるはずもなく、引率者が同行する以上、相応の安全マージンをとるのは当然だ。


――問題は、親馬鹿が過ぎたという一点に尽きる。



まずはアリッサパパ。


娘と同様に斥候に向くスキルを持っているのだが……。


「アリッサ! この先に魔物の気配を察知したから、パパがぜーんぶ退治しておいたよ! もう安心だ!」

(どや顔+親指ぐっ!)


頼みもしないのに先走っては魔物を狩り尽くし、得意満面で報告してくる。

そのうちテンションが上がってしまったのか、もう「散歩感覚」で走り出し、藪に潜んでいた魔獣をぶっ飛ばしては「見て見てアリッサ~!」と戦利品を掲げる始末。


「パパいい加減にしてよ! これじゃ特訓にならないでしょ!」

「だって魔物は危険なんだぞ!? アリッサに万が一があったら……パパはとてもじっとなんて――」

「だから弱い魔物しかいないって言ってるでしょ! もう帰ってよぉ!」


娘にガチ説教され、アリッサパパはその場で体育座り。

「パパ……悲しい……」といじけて石ころを蹴っていた。



だが、真打はここからだ。


ポルテアでも屈指の親馬鹿、カイエイン商会の会頭――アルバートである。


普段からエマルシアに溺愛気味ではあったが、この合宿では暴走モード全開だった。


「さぁそろそろ50メートル進んだな。ここらで魔物除けの香を焚きなさい! それと魔物除けの鈴はまだ効いてるか? 二重チェックだぞ!」

「へい旦那、抜かりなく!」


「……お父さん達何やってるのよ!?」

声をかけられた瞬間、会頭は漫画みたいに「ギクッ!」と肩を震わせた。


「この辺りに魔物が全然出ないから変だと思ったら……やっぱりお父さんたちがコソコソ邪魔してたのね!? もう最低!」


「いやぁ……エマルシアが危ない目に遭ったらと思うと、つい……」

「ついじゃないの! もうお父さんなんて知らない!」


涙目で正座して謝る会頭。

(しかも「ひっく……エマルシアに嫌われた……」と泣き真似まで追加)

その姿にラングも思わず心の中で突っ込んだ。


――子どもに怒られて泣くくらいなら、最初から余計なことすんな。



その後はようやく親馬鹿妨害も収まり、訓練は順調に進んだ。

少女たちは伸び盛りだけあって、ぎこちなかった動きもすぐに改善され、連携も目に見えて成長していった。


不意打ちの魔獣襲撃にも希が即座に対応し、難なく撃破。

ラングの能力補正もあり、もし攻撃を受けていたとしても無傷で済んでいただろう。


なにより大切なのは、彼女たちが「自分でもやれる」という自信を掴めたこと。

課外実習に向け、不安を吹き飛ばすには十分な成果だった。



アリッサは偵察系スキルを活かして斥候役を務め、奇襲による攻撃で敵を翻弄する。

エマルシアはボスチキと息を合わせ、迫り来る魔物を撃退するメインアタッカー。

ウルマは回復系アイテムで仲間を守り、状況次第では現地でアイテムを製造する――まさに安全管理の要だ。


ラングと希は側面から彼女たちをサポートする役割を担う。


課外実習では恐らく採集系の課題が出されるだろう。

そうなれば、鍵を握るのはウルマ。

だからこそ今回の合宿で、ぜひ自信をつけて帰ってほしいとラングは願っていた。



「ラング、次は課外実習当日ね! 絶対あの連中を見返してやるんだから!」

「そうだよ! アリッサなら絶対大丈夫!」


「私だってスキル【友愛の証】で活躍してみせるんだから!」

「エマなら心配いらないわ! ボスチキだってずっと頑張ってたし!」

「オゥエ、ウェェエエエ!」

「ふふっ、頼りにしてるわよ♡ ボスチキ♪」


……そして何故かアリッサまでボスチキと意思疎通できるようになっていた。

エマルシアのようにスキルの力を借りず、なぜ言葉を理解できるのかは謎のままである。


「エマちゃん、アリッサちゃん。私も頑張るよ。薬草図鑑、あともう少しで全部覚えられそうなんだ」

「さすがウルマ! ラングが言ってた通り、あんたが要になるんだから期待してるわ!」

「ウルマちゃん、暗記は大変だけど応援してるネ!」


少女たちの準備も着々と進んでいるようだった。



「皆さん、合宿にお付き合いいただき本当にありがとうございました!」

「気にするな嬢ちゃん。小僧には料理の方もみっちり仕込んでおいたから、きっと美味しいもんを作ってくれるはずじゃ!」

「はい! 今度はぜひ食堂でご飯を食べさせてください!」

「もちろん大歓迎じゃよ!」


「みんなすっかり仲良しになったね。でもアリッサちゃんとウルマちゃんは私のお友達なんだから……ラング君、私がいないところで仲良くしすぎちゃダメだからね?」

「あ、はい」

「エマの旦那を横取りなんてしないっての!」

「も、もうアリッサちゃんったら、すぐからかうんだから!」


「……私は認めんぞ。やはり課外実習にも同行すべきではないか」

「お父さん! またそんなこと言って……! 絶対ついてきちゃダメだからね! トルマさんも、アリッサちゃんのパパも!」


「「「ギクッ!」」」


「「もうホントやめてよね!!」」



(いやマジで本当に同行しそうで怖い……。

でも大丈夫、俺と希がついてるし、今回はボスチキだってものすごく頑張ってくれた。

――だから課外実習は、みんなの力を合わせて見事にクリアしてみせる!


さぁ、Let’s challenge!)



☆ ☆



後日、課外授業出発の日の朝。


出発を前に、カイエイン商会の玄関口では妙に怪しい人影が三つ。


「よし……完璧な変装じゃ。これなら誰にも気づかれまい」

「ふふん、私の御者姿もなかなかだろう? まさか娘たちも、父が御者台に座っているとは思うまい……」

「私は学園事務員の制服を拝借しましてね。 これなら堂々と実習に潜り込めますよ!」


得意げに変装を披露し合う親父ども。


三人揃ってこそこそ潜入を試みる――が。


「……お父さん!(パパ!)」

「「「ひっ!?」」」


腕を組んで待ち構えていた娘たちに、あっさり見破られてしまった。


「何度言ったらわかるの! ついて来ちゃダメだってば!!」

「そこをなんとか……エマに悪い虫がつかないか心配で……」

「そうですとも! うちのアリッサも超絶かわいいのですから、私が目を光らせなければ……!」


「だ~か~ら~! もういい加減にしないと口きいてあげないんだから!」


「お、お許しを~~!」


こうして見事につまみ出される懲りない親馬鹿どもなのであった……。








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