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5話 同部屋の人達

ジョナサンと共に戦ったあの日から、もう二日が経つ。

俺はまだベッドの上で身動きが取れずにいた。


痛みの原因は言わずもがな――あの乱闘のダメージだ。

骨に異常はなかったらしいが、体じゅうに青痣と擦り傷が散らばり、

服が触れるだけで悲鳴を上げそうになる。


幸い昨日は休日だったので、一日中寝たきりでやり過ごせた。

心配したジョナサンが食事を運んでくれたのは嬉しかったな。


不思議と、気分は悪くない。

ジョナサンも以前よりずっと打ち解けてくれている。

今日もこのあと一緒に朝食を摂る約束だ――

傷だらけの身体にムチを入れて、どうにか起き上がらねば。


俺たちが暮らすのは、窓の少ない薄暗い社員寮。

ほのかにカビ臭い四人部屋に、二段ベッドが壁沿いに二つ。

人ひとりが横になれるこのベッドの上だけが、かろうじて“プライベート”と呼べる空間だ。


まだ子供だから何とかなっているが、成長して思春期を迎えたら……

――生理的なムラムラをどう処理すればいい?

トイレにこもるしかないのか? 

前世は立派な成人男性だっただけに、そこは切実に気になる問題だ。


同室の三人は皆大人だ。

仲良くなれたら、そのへんの事情をぜひ聞いてみたい――


ところで、部屋の面々との距離は、あの一件で一気に縮まった。

戦いの前までは挨拶すら上の空、話しかけても反応は薄かった。

スキル【言霊】を使おうが、聞く耳を持たれなければ“馬の耳に念仏”だ。


だが、俺とジョナサンの奮闘を目撃した彼らは、態度を一変させた。

顛末を語って聞かせると、皆そろって感心しきり。


中でも”コモドン”という人から大いに気に入られたのだった。


「人のために体を張れる。それが大事なんだ」

そんな熱い言葉を語る、彼もまた熱い男のようだ。



ここで同部屋のお三方を簡単に紹介しよう。


手長猿系獣人ダールさん。同部屋で最年長だ。


オオトカゲ系獣人のコモドンさん。なんか弟みたく接してくれる。今度兄貴……思い切って”兄ぃ”って呼んでみようかな。


牛系獣人のホルスさん。物腰が柔らかく良識のある人みたいだ。



この人達とは長い時間共に過ごす事となるから、

確かな絆を築けるよう努力しようと思う。



話は変わるが俺が働く職場は色々と終わってる。


”何が”と言えば


まず第一に社員同士のコミュニケーションが全くない。

ここで言う社員とはつまり”労働奴隷”の事であり、その奴隷同士がほとんど話をしないのだ。


これは俺達が労働奴隷と言う立場にあるのが大きな原因でもある。


何せ最下層という立場だから”賃金が低い”。


加えてそれぞれ自分が売られた金額分稼ぐ義務がある。

要は借金を背負っているのと同じだ。


元の世界風に言えば


「安月給の上に借金まみれ、働いたって美味い物一つ口にできない。趣味もなければ趣味に使う金だってないんだから、生きる気力だって失われる。心に余裕はなく、周りに気を取られてる場合じゃないんだ」


ってな雰囲気が蔓延してるんだよね。



そうかと言って奴隷が不当に虐げられているという訳でもないんだ。


貴重な労働力としてある程度の権利は守られている。

他の大陸ではどうなのかわからないが、少なくとも俺が住むこの国のある大陸では奴隷が非人道的な扱いを受ける事はない。


その点に関しては俺も大いに安心したんだよね。


逆に言えば、俺達労働奴隷は”労働力”というただ一点が求められる存在であり、

課せられたノルマを日々こなす事こそすべてと言う風潮あるんだ。


だから、言われた事を機械的にこなせばいいわけで、効率云々を考えるような発想を持ちうるはずがないんだよね。


つまり、第二に物凄く生産性が低いっていう現実に行き着くのさ。



コミュニケーション不足は思わぬ事故の元だし、重苦しい空気の中働いたって楽しくもなんともない。


効率は上がらず、モチベーションも低いまま。


そうなるといつまで経ったって奴隷から抜け出せっこないわけだ。


こうして負のスパイラルが生まれ、先が見えない不安に苛まれ、ますます暗くなり、無気力になる。



だが、俺はそんなのまっぴらごめんだ。


”モチベマシマシ”、”和気あいあいの楽しい職場”、”一日も早い奴隷からの脱出”をしたいわけだ。


その為の”策は我にあり”ってね。


という訳で次のターゲットは決まった。


食堂のおっちゃん達だ!

ご覧いただきありがとうございます。

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