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91話 新人さ~んいらっしゃい!

ご覧いただきありがとうございます。

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よろしくお願いします。

エマルシアからいじめについての悩みを相談された日から数日経ったある日まで時はさかのぼる。

かねてより懸案となっていた人員補充のための面接が行われ、新たに四十名を超える奴隷労働者が加わることとなった。


もちろん、配置される部署はさまざまであり、全員がラングと直接関わるわけではない。

ここでは、企画生産部と魔道具製造部に配属された新人たちを紹介しておこう。


企画生産部には――鳥人族のファルコン、豹系獣人のレプリス、東方の島国出身ケンシン=タケダ、そして流浪の民である三つ目族のシャルラン、計四名が仲間入りすることとなった。


一方、ドグマ率いる魔道具製造課には、元冒険者のゴンゾーラと、元裁判官のダイスが配属された。


さらに、親子三人で面接を受けた犬系獣人のララ一家は、

子供二人がまだ幼いため、兄妹のトトとロロは企画生産部の見習いとして、母親のララは食堂で調理補助を務めることになった。


――というわけで「善は急げ」とばかりに、ラングは新人たちを連れあいさつ回りに出かけた。


まずは魔道具製造部へ、新人二人を伴って顔を出す。

もう間もなく内装工事が終わる予定の元物置き場には、ドグマとマニフェスがいるはずだ。


「おはようございま~す!」

ラングが元気よく声をかけると、中では二人が仲良く設備を運び込んでいる最中だった。


「お~ラング。朝からどうした? その見慣れぬ顔ぶれは……新入りか?」


「ドグマ師、大正解~! 新人さんをお連れしましたよ!」


「おお、面接のときに見た顔だな」


「ゴンゾーラさん、ダイスさん、どうぞ中へ」

ラングの合図で二人が入室する。


「元冒険者のゴンゾーラよ。ラングきゅんから魔石集めの護衛を頼まれてるの。みんな、よろしくネ♡」

身をくねらせながらお姉言葉を操るその姿は――筋肉ムキムキ、いわゆる“ガチムチオネェ”だった。


「元王国審査官のダイスだ。故あって犯罪奴隷に落とされたが、こうして拾ってもらった恩に報いたい。特許関連の申請業務もあると聞いた。そうした分野では力になれると思う。よろしく頼む」

元官吏らしい堅苦しい口調だが、ラングは既に情報を得ていた。彼が上司の策略で冤罪にめられ、犯罪奴隷にされた過去を持つことを――。


「私は魔道具製造部の責任者、ドグマだ。分からないことがあれば何でも聞いてくれ。共に力を合わせて頑張ろう」


「マニフェスです! 元は倉庫課にいましたが、部署消滅のときにドグマさんとラングさんに拾ってもらいました。僕もまだ新米なので、仲良くしてください!

……ところで、ゴンゾーラさんって、男の人で……いいんですよね?」


「あら、私のことが気になっちゃう系? ボーイズって積極的ネ♡

体は男よ。でも心は乙女だから、優しくしてくれないと泣いちゃうんだから~」


ドグマもマニフェスも顔を引きつらせていたが、ラングは有無を言わせず二人を置いてその場を後にした。

――ドグマの舌打ちも、マニフェスの怨嗟の声も聞こえない、聞こえない。



その後、新人たちを連れて農園へ向かう。

道のり自体は大したことはなかったが、幼いロロにとっては少し大変だったようだ。

歩みが遅れがちになる妹の手を、兄のトトがしっかり握って気遣う姿はなんとも健気である。

だが、それとて兄自身も慣れない環境に不安を覚え、強がっているだけなのかもしれなかった。


「ロロちゃん、今から行くところには大きな鳥さんがいるから気を付けてね。怖かったら無理して近寄らなくていいからね」


「うん、わかった」


「トト君もロロちゃんから離れないであげてね。二人とも徐々に慣れていけばいいんだからさ」


「わかった。そうする」


トトはラングと同い年だ。

だが成長の早い獣人だけあって背丈はラングより高い。

嗅覚で相手の体調や感情の変化を察するスキルを持っているので、きっと生き物の世話にうってつけだろう。


ロロはまだスキル発現前だから、兄のトトと一緒にできる範囲で手伝ってくれればいい。

今後、適性に合わせて再配置することも可能なのだ。


こうして歩いているうちに、農園エリアに到着した。


「ホル氏~イワンさ~ん、おはよ~っす!」


「お、重役のお出ましだね! 一緒にいるのは誰かな?」


「ラングさんおはようございます! 今日は大勢ですが、ひょっとして新人さんですか?」


「そうで~す。今日から配属されるみなさんで~す!」


ラングはそう言って新人たちに自己紹介を促した。


「では一人ずつお願いします。あっ、この女の子がロロちゃん、横にいるのがお兄さんのトト君です! 仲良くしてあげてくださいね!」


「あっしはファルコン。一つお見知りおきを」

「東方の島国出身、ケンシン=タケダにござる。よしなにお願い申す」

「あ、あの、レプリスです。みなさんの足を引っ張らないよう頑張ります」

「三つ目族のシャルランです。よろしくです」


堂々とした自己紹介の中で、恥ずかしそうに身をくねらせるレプリスの姿はひときわ目を引いた。


「レプリスさん、心配しないで大丈夫ですよ~! みんな優しい先輩ばかりですから!」


「は、はひ~、どうぞよろしくおねがいしましゅ」


(あっ、噛んだ! なんかクネクネして頼りないんだよな~。ほっとけないというか、守ってあげなきゃって思わされるというか……)


さて、今回の新人の中でラングが俄然注目する人物がいた。

三つ目族のシャルランである。

彼女の第三の目は細菌レベルまで視認できる――まさにラングが求めていた人材だった。

彼女の加入によって発酵食品、ひいては味噌や醤油といった調味料の開発は大きく進むことになる。


やはり人材とは宝そのものだ。

偶然にも「武田信玄」と「上杉謙信」を混ぜたような名前の人物が加わったからではないが――


「人は石垣、人は城」


前世で耳にした言葉を、ふと思い出すラングであった。





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