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4話 ジョナサン無双する!

挿絵(By みてみん)


「僕、やるよ。怖がってばかりいた自分から卒業したい」


これまでとはまるで別人のように、はっきりとした口調でジョナサンが言い切った。


「うん、やろう! 一緒に! ちなみに言うとこう見えて俺ってば、てんで弱いんだけどね」


目は腫れ上がり、唇からは血が滲んでいる。そんな顔で、ラングは笑ってみせた。


「あ、うん……なんとなく、そうかなって……」


「やっぱりotz……」


そうして顔を見合わせた二人は——


「「アハハハハハ!」」


肩を揺らして笑い合った。


「おいおい、随分と余裕があるみてぇじゃねぇか? 自分の立場、わかってねぇんじゃねえの?」


そのとき、野次馬の輪に加わっていた狸の仲間たちが、前へと進み出てきた。


さらに、別の取り巻きが口を開く。


「一対一の喧嘩に加勢するってんなら、こっちも混ぜてもらおうじゃねぇか。言っとくが最初にタイマン勝負を汚したのは、てめぇらだからな?」


「うわっ、わざとらしい~。どうせ最初から、俺を袋叩きにするつもりだったんだろ? 本当、しらじらしいったらありゃしない」


ラングは呆れたようにため息をつき、きっぱりと断じた。


「てめぇ、調子に乗りやがって……おい、みんな! やっちまおうぜ!」


「「「「お~!」」」」


こうして、二対五の圧倒的不利な戦いが始まった。


(……いや、そもそも一対一ですらボコボコにやられてる俺が、二対五なんて無理ゲーもいいとこ。せいぜい一・五対五ってとこかな……)


ラングは引き続き狸の相手を引き受ける。


そして、飛び入り参加した四人の狙いはやはり——ジョナサンだった。


歯向かった“格下”に、制裁を加えるつもりなのだろう。


だけどな、今のジョナサンを甘く見てると、痛い目見るぞ?


「ジョナサン君、大丈夫! 君は絶対、強いはずだ!

恵まれた体格、それに今——全身が光って、何かが変わった!

だから、頑張れジョナサン君! そんな奴ら、ぶちのめしちゃえ!」


ラングは全霊を込めて、スキル【言霊】を発動した。



戦闘中でステータスウィンドウは確認できないが、

さっきジョナサンが光に包まれたとき——ラング自身にも新たな“効果”が発現していた。


その効果が何かは後で確認するとして、≪奮≫の効果と合わせれば、

今の彼の能力はかなり強化されているはずだ。


それに、あの大きな体に秘められた身体能力がどれほどのものか。正直、楽しみで仕方ない——!


ジョナサンは、体の奥からみなぎる力を感じていた。


光に包まれたときとは違う。

今、彼を駆り立てているのは——ラングという少年の言葉だ。

その一つひとつが、強く脈打つ鼓動と重なり、眠っていた力を呼び覚ましていく。


彼を取り囲んだ四人が一斉に襲いかかった。


だが、ジョナサンはもう怯えなかった。


正面に立つ男へ、大きな腕を一閃。吹き飛ばす。


男の体は野次馬の輪を軽々と越え、視界の向こうへと消えていった。


三方から襲い掛かった残りの男たちも——散々な目に遭った。


蹴り込んだ足は砕け、骨が散り、

殴りかかった腕は逆方向に折れ、

勢いをつけた巨漢の突進すら、弾かれて脳天から地面に叩きつけられた。


あっけない決着だった。


その頃、ラングは——


「ほらほら、どうした? 少しはやり返してみろよ。威勢がいいのは口先だけか?」


狸はますます調子に乗り、悪態をつきながら攻撃を重ねてくる。


体の小さいラングは、必死に身を固め、耐えていた。

何度も吹き飛ばされ、血を流し、立つのもやっとの状態——それでも、足を止めなかった。


(せめて、こいつだけでも足止めしなきゃ……!)


地面にはラングの血が飛び散り、塊となってこびりついている。

足元はふらつき、視界は霞む。それでも、ラングは立っていた。


「お前も相当な馬鹿だな。あんなできそこないを庇うから、こんな目に遭うんだ。

これに懲りたら、二度と俺たちの前に姿見せんなよ!」


狸は腕を組み上げ、拳を振りかぶる。——トドメの一撃だ。


(……くる)


限界を超えたラングの体には、もう動く余力は残されていなかった。

拳が視界の上で振り下ろされる、その瞬間——


「その人に手を出すな!」


怒声とともに、鬼の形相のジョナサンが突っ込んできた。


そして——


放たれたのは、渾身の右ストレート……いや、まるでラリアットのような一撃だった。


狸は側面からもろに受け、半回転しながら地面に叩きつけられる。


凄まじい衝撃音。


狸は仰向けに倒れ、白目を剥いて泡を吹いていた。


(……飛んだな、あいつ)


朦朧とした意識の中、狸が空を舞う様子を見上げながら、ラングは意識を手放した。


それからしばらくして、ラングは目を覚ました。


どうやら、気力が尽きて少し眠っていただけのようだ。


まばたきを繰り返すラングの顔を、大きな男が覗き込んでいた。


「あっ、目を覚ました! 良かった、本当に……このまま、もう目を覚まさないんじゃないかって……」


そう呟いたジョナサンは、ぼろぼろと涙をこぼし始めた。

その体格だけに、一粒の涙もやけに大きい。


「泣くなよ、ジョンジョン君。俺たち勝ったんだからさ。……って言っても、あいつら叩きのめしたのは全部君だけどね。

それにしても、君、強かったなぁ。マジで格好良かったぜ!」


地面に横たわったまま、ラングは笑いながら声をかけた。


「ううん。僕なんて全然強くないよ。今だって、心臓がドキドキしてる。

さっきは……君が僕の味方をしてくれたから。大丈夫って言ってくれたから。だから、たまたま勝てただけだよ」


ジョナサンははにかみながら言う。


「そんなこと言ったら、俺だってドキドキのバクバクだったぜ?

今の俺の姿を見て、喧嘩に勝ったなんて誰も信じてくれないさ。

勝者に相応しいのは、間違いなく君だよ」


ラングは正直な胸の内を明かした。


「違う! 格好良かったのは君だよ。僕なんかよりずっと、ずっと格好良かった。だから、本当の勝者は君なんだ」


ジョナサンの真剣な眼差しに、ラングはふっと笑って言う。


「じゃあ、俺たち二人とも勝者ってことで!」


そう言って、ラングはそっと手を差し出した。


大きな手が、おずおずと伸びて——引っ込められかけた、その瞬間。


ラングはすかさず両腕を伸ばし、がっしりとその手を握りしめて告げる。


「俺の名はラング。ねぇ、俺と友達になってよ?」


「う、うん!」


涙を湛えたその瞳が、さらにきらりと光る。

泣き笑いの、素敵な笑顔の花が咲いた。



ご覧いただきありがとうございます。


添付した画像はラングとジョナサンが戦いの後握手する場面のイメージです。

「※AI生成」

「AI generated」

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