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それでもウチのヒロインが最強すぎる  作者: 天海 汰地
1章『Symphony:Blue in C minor』
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【5-4】 キャットファイト、開幕!

 

「そういうワケで、冬歌(ふゆか)(あまね)以外で唯一わたしの本性を知ってるんだけど。今さら取り繕う必要ないでしょ。まあ? 他言したところで誰も聞く耳持ったりしないでしょうけどね! わたしの人望はそれくらいで揺らいだりしないわ」

「誰彼構わず股を開いて得た人望なんてものを誇りらしく掲げるあたり、おまえという人間の矮小さが伺えるわね」

「開いてねーわ! こういうとこ! こういうのがムカつく!」


 えげつない発言を淡々と述べる花室(はなむろ)と、犬みたいにキャンキャン鳴いている桜川(さくらがわ)

 二人のこんな姿を見るのは初めてだ。見たくなかった。



「だいたいあんた、それを知ったとしてこの部屋に来ようとは思わないでしょ」

「無論よ。おまえのビッチ臭い空気が充満した空間に足を踏み入れようとは思わないわ」

「この女……!」


 桜川が凄まじい形相で花室を睨んでいた。

 大きなくりんとした目は見開かれ、小さな手のひらを力いっぱい握りしめ奥歯を噛み締めている。


 いつ飛び掛かってもおかしくないようなその様子は、まるで獲物を見つけて狩りの瞬間を探っている野生動物そのものだ。この獣を止めなければ。この古びた部屋で流血事件など起こそうものなら、いよいよ立ち入る勇気が削がれてしまう。由緒ある我が高校にいわくが付いてしまっては後味が悪い。



「あー、桜川。例の飯田の件だが、ちょっと不安要素が現れてな。それをお前に知らせておこうと思ったんだ。協力を仰ぐってわけじゃないが、周知しておいた方が、今後のためになるだろ」

 俺としては何の気なしに説明したつもりだが、桜川は納得しない様子だ。


「そのためにわざわざ来たってわけ?」

「そうだ」

「バカバカしい。なんでわたしがあんたたちと協力しなきゃなんないの」

「だからそれは、同じ目的を持つ者として、共通の敵に対処しようって」


「あんたらと協力する理由もメリットもないんだけど? ……っていうかなんで冬歌もいんだし」

 相変わらず変な所で小声になるから最後まで聴き取れなかったけれど、前半についてはなにも言えない。

 桜川ならば他人の力を借りずとも、自分一人で解決してしまうだろう。

 問題は、当の本人からやる気が感じられないことだが。あれだけ口走っておいて、今のところ桜川が行動した痕跡は見受けられない。水面下で動いているって風でもないしな。



「どうでもいいけど、わたしの邪魔だけはしないでね」

「邪魔って、ゲームのことか」

「そっちもそうね。VIPまであと少しなの。少しでも集中を乱すようなことをしたらそのたびに指を一本へし折るから」

「脅しが怖すぎんだろ……」


 そんな拷問を受けるほどの重罪なのか。

 確かにオンラインゲーム――いやオンラインに限らず、この手の対戦ゲームで直接妨害されるとムカつくけど。


 じゃあこんなとこでやるなよ、なんて抗議しても桜川の怒りを逆撫でするだけだろう。


「ならこんな所でゲームなんてしなければいいのではないかしら」

 そういうことを惜しげもなく言っちゃうんですよ、この子は。

 なに、道徳心ゼロなの? 平和的に収めようって心はないのか?


 いや、そうだ。彼女は花室冬歌。冬の女王だ。

 これを言ったらこの人怒るなーとか、悲しませちゃうなーとか考える機構は花室の中に存在しない。もう脊髄でしゃべってんじゃねえのかなこいつ。


「はー? どこでどうしようがわたしの勝手よ」

「邪魔されて嫌なら人のいない場所へ移動したらいいでしょう。前提として学校内の回線を使ってネットゲームをしようなど見過ごせることではないわ」

「そんなの校則にも生徒会規約にも書いてありませーん! 法の下で自由にしたところで何も問題はないですー!」

「お前の態度が問題ありだろ」


 ヒロインっつーか、完全に悪役じゃねえかこいつ。

 もうホント、マジで誰だよコイツのことヒロインとか言い出したやつ。

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